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街の西・アール平原(訓練〔タイタス〕)

2016.2.18

2章1話目(1つ前の話)サブタイトル変更しました

戦闘訓練《棒》(トレヴァー)

街南東・エッジヒルの森(訓練〔トレヴァー〕)


「よぉ、久しぶり」

 ギルドに着くと、受付に向かって、気軽に話し始めるタイタスさん。

「やっと来たわね。おとといにはこの街に着いていたんでしょ」

「よく知ってるな」

「盗賊騒ぎに関わっていたでしょ。盗賊側に冒険者がいたとかで、ギルドにも情報が入ってきたのよ」

「そっかそっか」

「なんで、もっと早く来なかったのよ?」

「焦らなくても、今日来ることはわかっていたし、他にも用事があってな」

「そう」

 なんかタイタスさんが、やけに親しげに話している。受付の獣人さん、知り合いなのだろうか?

「ところで、そちらは?」

 俺の方を見ながらタイタスさんに聞いている。

「護衛の途中で知り合ってな。ギルドに来たことないんで、連れてきた」

「ケンヤ・モリと言います。よろしくお願いします」

「ディアナです。ここで、受付などの事務を担当しているわ。よろしくね」

 犬人族だろうか。耳の感じが、ダックスフンドのように垂れている。とても柔らかそうだ。カウンターの向こうにいるため、しっぽが見えないのが残念だ。

「初めてということは、今から説明すればいいの?」

 タイタスさんに確認する、ディアナさん。

「いや、今日は登録だけでいい。今度1人で来た時に、説明してやってくれ」

「どういうこと?」

「戦闘訓練のために、魔物の情報を聞きに来ただけでな。時間がもったいないから、説明の方は、俺が居ない時にでも頼む」

「護衛ですぐ街を出るってこと?」

「いや、素材集めで一旦街を離れる」

「珍しく、護衛じゃないのね。で、その時に彼はここに残ると」

「そうだ。まだレベルが低いから、ここで修業する」

「わかった。ところで、カードは持ってる?」

 こちらに視線を向けてきたので、カードを手渡す。

「今レベルはどれくらい?」

 手続きをしながら聞いてくる。タイタスさんへ渡す情報の、参考にでもするのだろう。

 ステータスを確認する。魔物とはそれなりに遭遇したが、サポート中心で、あまり戦ってなかったので、思ったよりも上がっていない。

ケンヤ・モリ  Lv11 HP:73 MP:94

 物攻:20 魔攻:26 防御:20 魔防:26

 必殺:20 素早:21 技能:21 幸運:21

「Lv11です」

「と、すると魔物は…」

「とりあえず、マンティスの情報をくれ」

 注文をするタイタスさん。

「ランク高くない?」

「問題ない。動きが良いから避けられる」

「前衛職なんだ」

「いえ、魔法使いです」

「へっ?」

 2人の話に割り込んで返答する俺に、目が点になるディアナさん。

「彼の訓練をするのよね?」

「そうだが」

 当然、という感じで答えるタイタスさん。

「いや、無理でしょ」

「問題ない。補助魔法でステータス底上げできるし、まぁ俺もついているし」

「タイタスが倒したら、訓練の意味ないでしょ」

「いざという時の話だ。大丈夫、トレヴァーさんからOKでている」

「へぇー。それなら大丈夫ね」

「なんか、あっさり納得したな。俺はそんなに信用できないか」

「トレヴァーさんが言うなら別。それにしても…」

 俺の方を見てくる。

「ふーん。期待できると思っていいの?」

「あぁ。ケンヤが居なければ、俺はここ居なかっただろうからな」

「どういう意味?」

「そのまんまだな。まぁ、それより情報は?」

「あ、特に危険な情報は出てないけど。ただ、南の方へウルフ狩りに向かった冒険者が多いから、最近この周辺の討伐数が減っているの。魔物が増えてる可能性があるわ」

 タイタスさんに答えながら、こっちにカードを返してくるディアナさん。

「了解。おっと、ケンヤ、そのカードを受け取る前に、昨日の魔石をここに出して換金しようか」

 カードを受け取ろうとする俺を止めて、魔石を出すように言ってくる。俺は【格納庫】から、昨日のゴブリンの魔石を取り出すと、カウンターに並べた。

「空間魔法使えるのね…って随分あるわね。これって昨日1日だけで?」

「はい。トレヴァーさんが言うには、遭遇率がかなり高いと言ってました」

「これも、冒険者が減った影響かしら?」

 魔石の確認をしながら考えている。

「これは全部ゴブリンね。このうち自分で倒したのはどのくらい?」

「全部ですが。訓練だったので、トレヴァーさんは見てただけです」

「ふーん。そういえば、補助魔法使えるって言ってたわね」

「使えますけど、ゴブリン相手にはさすがに使いませんよ」

 こちらを不思議そうに見た後、タイタスさんへ視線を向けている。

「言っただろ、動きが良いって」

「そうみたいね」

 微笑みながら、カードと貨幣を渡してくるディアナさんだった。


 エクレストン街の、西から北にかけて広がるアール平原。そのうちの、西側にある旧穀倉地帯に来ている。以前は、実り豊かな大地であったが、魔物の増加で放棄された。今は荒れ果てており、冒険者の狩場として定着している。

 ちなみに、現在の耕作地は北側に移され、そちらは魔物の侵入を防ぐために、色々と整備されている。エクレストン街のみならず、エクランド王国内の食糧供給の一端を担っている。

(カンッ)

ソード》と鎌のぶつかり合う、固い金属音が響く。

《剣》は、柄を別に用意し、《黒蜜》の刃を合わせている。《黒蜜》単体の《短剣ショートソード》より長く、使い勝手も良い。

 対する鎌は、Cランクの魔物ホワイトマンティス。体は白、目は血のように赤い。おそらくアルビノだろう。鎌を構えたその大きさは、1.8メートルに及ぶ大型カマキリ。通常のマンティスより、一回り大きい。頭がぐりぐり動いて、何とも気味悪い魔物である。首が細いので一刀両断できそうだが、その前には2振りの鎌がある。そう簡単に、首を落とさせてはくれない。

 二刀流、いや二鎌流?相手をするのは、なかなか大変だ。片方を受け止めても、もう片方が襲ってくる。立ち位置を、常に側面に向かうように移動しながら、1つの鎌だけを相手取るように攻撃を加えていく。

(ブンッ)

 斜め切りに来る鎌。受け止めず、いなすように剣を払い、地面に向かった鎌の付け根部分を切りつける。

(ギッ、ギチッ)

 口をかみ合わせ、不快そうにするマンティス。痛そうなそぶりは見せないが、片腕がぶらさがったようになる。動かないところを見ると、腱を切ることに成功したようだ。通常のマンティスなら、切り落としているところなのだが。

 そのまま、動かせない鎌の側から攻撃をする。左回りにまわりながら、隙を見て足を切り飛ばした。もともと、横移動は苦手なのだろう。動きがほとんど止まったところで、剣を振り上げ、首を刎ね切った。黒い霧となって、消えるホワイトマンティス。その後には魔石とアイテム《白鋼鎌》が残った。

「アイテムも残ったようだな。いい素材になるぞ」

《白鋼鎌》を見ながら言ってくる。さっきも別のマンティスから、アイテム《虫鉄鎌》が出たが、今回のはレアっぽい。

「それにしても、身体強化をしたとはいえ、ホワイトマンティスを倒せるとはなぁ」

「タイタスさんが、1対1に専念させてくれたからですよ」

 戦っている最中、通常のマンティスが寄ってきたが、タイタスさんが排除してくれていた。

「それにしても、そう簡単にできるものじゃない。補助魔法の効果が高いんだろうな」

 そういえばティルダさんが、魔力の質で補助魔法の効果が上がる、と以前言っていたっけ。

「とりあえず、近くに安全地帯があるから、そこで休憩にするか」

「はい」

 安全地帯に並んで向かうと、タイタスさんが話し始める。

「まず、マンティスとの戦い方だが、今のような感じで問題ないだろう。戦ってみて、マンティスの特徴は何だと思った?」

「移動は早くないけど、攻撃力が強い」

「そうだな、さらに両手で攻撃してくるから、手数も多い。さっきのように回り込みながら、常に片方の鎌を相手にする。そして動きが鈍いので、回り込みにうまく対応できない隙を突く。良い戦法だ。では、2匹相手にする場合はどうする?」

「並ばれないように移動して、1体ずつ相手にする。具体的には、敵と自分の間に、もう1匹が来るように位置取りをするかな」

「そうだな。4本の鎌を相手にするのはしんどいからな。敵が複数いるなら、その敵を壁として利用する。ちなみに、3匹いたらどんな戦法をとる?」

「思い浮かびませんね…今の俺なら、迷わず逃げますが」

「それで正解だな。マンティスは攻撃の手数が多いから、通常の魔物3匹と同じような考えでいると痛い目を見る」

「タイタスさんならどうしますか?」

「俺は腕力があるから、斧で殴って吹き飛ばし、囲まれるのを防げる…が、面倒だから逃げるだろうな」

 笑って言うタイタスさんだった。

「ちょっと、その剣貸してくれるか?」

 安全地帯で、タイタスさんが言ってくる。

「はい」

 手渡すと、ぶんぶん振り始める。

「バランスは良いようだな。少し軽い気もするが」

「今の自分は、まだ慣れていないので、そのぐらいが扱い易いんですが」

「そうか。まぁ、これはこれで短く扱い易いかもな。今は、武器を振ることに慣れるのが優先か」

「はい。慣れてきたら、重さや長さをもう少し考えてみます」

返された《剣》を受け取りながら答えた。

「昨日は、棒で戦っていたんだよな?」

「はい」

「それじゃ、剣の扱いについては特に聞いてない?」

「そうですね」

「俺は斧が専門で、剣はあくまで補助でしかない。詳しくは説明できないが」

 と前置きが入り、話し始める。

「ケンヤの剣の場合は、引いて切ることに意識した方が良いだろうな」

「引いて切るですか?」

「ああ。重たく頑丈な剣なら、その重量を活かし叩き切る。重たい分、コントロールや速さに難はあるが、衝撃があるので、それを利用して叩きつける。反してお前の剣は軽いので、叩きつけても威力が無い。その代わり刃が鋭いので、それを活かして早く引きながら切る。軽いのでコントロールもしやすいし、正確に扱い易い」

「なるほど」

「まぁ、普段斧も剣も叩きつけている俺には、コツがわからんので、自分で考えてもらうしかないがな」

 引きながら切る…振りぬけばいいのか?色々試してみるしかないだろう。また、ゴブリンでも練習相手にするか。

「それじゃ、休憩終わり。また狩りに行くぞ」

「はい」

 安全地帯を出て、2人で平原へ狩りに向かった。

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