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街南東・エッジヒルの森(訓練〔トレヴァー〕)

2016.2.18

サブタイトル変更しました

戦闘訓練《棒》(トレヴァー)

街南東・エッジヒルの森(訓練〔トレヴァー〕)

 周囲を見渡す。今は訓練のために【索敵】は使っていない。視覚、聴覚等の五感を使いながら周囲の敵を探る。

 現代人の感覚で、そんなことはできないと思っていたのだが、実際にやってみると、それなりに感じることができるので驚く。ただし、五感とは少し違うようだ。魔力だろうか?ちりちりとした感覚を肌で感じる事ができる。もっとも、近くまで接近してきた魔物だけで、遠くの相手はさすがに無理だが。

『左1。右は2か?』

 敵意のような物を感じて、ほどなくして緑色の小鬼、ゴブリンが3体現れる。Fランク、ブランドン大陸では最下層のランクである魔物。余裕をもって対峙できるので、練習台にはちょうどいい。

 俺が構えるのは、80センチほどの《スティック》。もちろん、《黒蜜》を変形させた武器だ。今は、この形状をメインに戦闘している。

 まずは左の1匹へ、挟撃を防ぐために向かう。本来ゴブリンぐらい、今の自分のレベルなら、心臓一突きで終わりであるのだが、これは訓練。まずは、武器を持つ右肩へ狙いを定め突く。こちらの突きを避けようと、横に移動するゴブリンに向かって、そのまま横薙ぎに振る。《棒》は右腕に当たり、狙い通り武器を落とす。あわてて、武器を拾いにかかるところに、《棒》を上から振り下ろし、地面へ叩きつける。まずは1匹。

 背後に迫る気配を感じ、振り向きざまに横薙ぎに一閃。当てるより、牽制が目的のそれは、近づいてきた2匹の足を竦ませる。急に止まってたたらを踏むその隙に、側面へと回り込み、2匹を直線上にとらえ一突きした。絡み合うようにして、転がる2匹の首を、二連突きにしてとどめを刺す。

「よし、一旦休憩にするか」

 声がかかる。今、俺はエクレストン街南東の森に、トレヴァーさんと2人でいる。マンツーマンで、指導を受けている最中だ。


 昨日、エクレストンに着いて宿に入ると、今後の予定を皆で話した。

「トレヴァー達は、装備の新調で良かったよな?」

 アルヴァさんが、確認する。

「あぁ。とりあえず、今日を含め4日間はここに滞在し、5日目にエヴァレット村に向かう。そこで素材集めをした後、またここに戻ってきて、装備品の制作依頼をする」

「そうか。こっちは8日目にイーリィ村へ出発する。向こうでしばらく滞在したあと、アイゼン街へ向かう。ちょうど1か月後に着く予定だ」

「こちらも、装備品ができ次第、アイゼンに向かう。そうだな、そっちの1週間後ぐらいに到着だな」

「了解。仕入れの都合を考えると、ちょうど良さそうなタイミングだな」

 ここから一旦別行動を取り、またアイゼンで合流するらしい。細かな日程は、

  トレヴァーさん達3人が、

   3/26-30エクレストン街

   4/6-15エヴァレット村

   4/21-27エクレストン街

   5/3アイゼン街着

  アルヴァさん達が

   3/26-4/3エクレストン街

   4/9-19イーリィ村

   4/25アイゼン街着

 になる。

 アルヴァさんの奥さんの実家が、イーリィ村との事で長めに滞在するらしい。それに加えて、ブルーム商会の仕事は、金の貸し借りを月単位で行うとの事。月末と月初めは取引の為に、街に居るのが望ましいらしい。その為、このような日程になったようだ。

 トレヴァーさん達は、そのスケジュールに合わせて、一旦別行動をして装備の新調をする。アイゼンで合流してからは、元のように護衛に戻る。もちろん、トレヴァーさんたちがいない間、アルヴァさんは別の護衛を雇うとの事。エクレストンには、冒険者の知り合いが居るらしく、その点も大丈夫なようだ。

 ちなみに、ブランドン大陸の暦は1ヶ月30日なので、3/31は存在しない。それと、各季節の変わり目に1日(計4日)追加されるので、1年間364日と地球より1日少ない。ただし4年に1度、年の初めに5日足され、その年は369日。4年の合計数では、地球と同じになる。

 1週間は6日で、地球の曜日にあたるものは、火・水・土・風・雷・花になる。花は休日、日曜のような感じだ。

 お互いの予定を確認し合った後、アルヴァさんが聞いてくる。

「ケンヤはどうするんだ」

「とりあえずは、この街で少し暮らしてみます。魔物退治の仕事とかってありますよね?」

 今日出会った冒険者、盗賊側にいた不憫な彼を思い出しながら聞く。

「あぁ、冒険者ギルドがあるから、そこで登録するといい」

「それなら、俺が案内しよう」

 トレヴァーさんの言葉に、タイタスさんが返事をする。

「それじゃ、手続きの方はお前に任せる。ケンヤは、特に決まった用事は無いよな?」

「ないです」

「それなら、明日は俺が戦闘訓練に付き合おう。明後日はタイタス、明々後日はティルダに教えてもらえ」

「いいんですか?」

「この前、約束したしな」

「ありがとうございます」

 こうして、トレヴァーさん達はこの街に滞在する間、交代で俺の戦闘訓練に付き合ってくれることになった。


「どうだ、【索敵】を使わないで気配を探ると、直に何か感じなかったか?」

「魔力の波動ですか?肌にピリピリきました」

「まずは、その感覚を覚えて戦闘をしてみろ。そうすれば、戦いの時に視覚頼みにならず、体が反応してくれるようになる。お前なら、3日もすればなんとなくわかるだろ。そうしたら、また【索敵】を使えばいい。一度覚えてしまえば、戦闘の時の魔力感知と、【索敵】の感覚を使い分けられるようになる」

 確かに、敵を目で追ってばかりいたからな。探す時もそうだが、戦う時も目で見てから反応する。魔力を感じて体が動いてくれるなら、戦闘に余裕が生まれ、選択の幅も広がり、楽になるだろう。

「それから、今回ゴブリンを選んだ理由はいくつかある。まず、素早さがそこそこあるのに加え的が小さいから、正確で速い攻撃の練習にはちょうどいい。技術の習得に向いていると思ってな。だから、おおざっぱに攻撃をして、倒すようなことはするなよ。もともと、初心者でも倒せる弱い相手だからな」

「はい」

「次に、あえて一撃で倒させなかったのは、基本的に一撃で倒せる魔物は少ないから、継続してダメージを与える練習だ。何回も攻撃を当てるといっても、ただ当てるだけでは効率が悪い」

 そこで、一旦区切る。

「まずは、相手の攻撃手段を封じるというのがある。さっきの、利き手の武器を落とさせたのも、そのうちの1つだ。あのときは、敵が武器を拾おうとしたおかげで、攻撃もしやすくなっていたな」

「そうですね」

「それから、1回の攻撃で複数の敵にダメージを与える。直線上に敵を誘ったり、自分で移動したりしてな。さっきのように巻き添えを狙ったり、槍のような鋭利な獲物なら、一気に突き刺したりできる」

「はい」

「そんなわけで、レベルアップとしての効率は悪いんだが、技術力を上げるために、今日はこのままゴブリン相手だ」


「ハッ」

 掛け声とともに、渾身の突きを放つが…当たらない。こちらの体勢が崩れたのを見て、ゴブリンが棍棒を打ちつけてくる。突きを放った《棒》を引き戻し、棍棒を受け止める。体勢は悪かったが、ゴブリンの腕力が低かった為、受けきる事ができそのまま押し返す。しりもちをついたゴブリンの頭を、《棒》で叩いてとどめをさした。

「どんなに威力があろうとも、当たらなければ意味が無い」

 トレヴァーさんが、俺の《棒》の使い方について注意をしてくる。

「突きというのは、威力が強いが攻撃範囲は点となり狭い。相手に避けられやすくなるので、体勢を崩させる等の事前の一手が必要だな。もちろん、動きの鈍い相手なら当たるが、そういった敵の場合は、防御力が高いことが多い。狙いどころが限られてくるので、正確性を求められる」

 攻撃範囲が、点になるか。考えたことなかったな。

「横薙ぎは、威力こそ突きには劣るが、攻撃範囲が線になるので広くなり当てやすい。相手の体勢や陣形によって、考えながら使いわけるといい」

 トレヴァーさんは槍使い。棒の使い方についても、教え方がうまくて助かる。

「おっと、次が来たようだぞ」

 俺自身も、近づいてくる気配を感じる。トレヴァーさんに頷くと、戦闘準備に入るのだった。


 ゴブリンとの戦闘訓練が終了し街に戻る。門のところでカードを見せていると、トレヴァーさんに声をかける人がいた。

「昨日は、ご協力ありがとうございました」

 笑顔を向けてくる警備兵。名前をガルトというらしい。

「明日には、アジトの方の情報も入ってくるでしょうから、ご足労ですがこちらか詰所の方へお願いします」

「わかりました。お伺いします」

「それにしても、性質たちの悪い相手でしたね。冒険者を人質にして、使ってくるとは」

「そうですね。あの冒険者の処遇はどうなりますか?」

「彼も被害者ですが、貴方達に魔法を向けてますからね。微妙な扱いになっています」

「同じ冒険者としては、処分が軽くなることをお願いしたいですね。自分が同じ立場になったとき、仲間の為を思えば、同じことをしていたかもしれません。それに、今回こちらには、被害ありませんでしたしね」

「一応伝えておきましょう。そういえば怪我人を装って、事前に馬車に乗り込んできた奴もいたとか。人質も取られたらしいし、よく勝てましたね」

「うちには、優秀な魔法使いがいましたから」

 と、こちらを向く。

「ほぉー、彼ですか?まだ若そうですが」

「いや、残念ですが、戦闘力はまだまだです」

 俺は口をはさむ。

「まぁ、確かに戦い方はまだまだこれから。けれど彼が居なければ、私達は少なくとも3回は全滅していたでしょうな」

「それはすごいですね」

 おれは、過大評価にむず痒くなる。そんな俺を見て、トレヴァーさんは話を切り上げることにしたようだ。

「それでは、明日またこちらに伺いますので」

「はい、よろしくお願いします」


「おっと、忘れるところだった」

 街中を宿に戻る途中、突然トレヴァーさんが言い出す。

「どうしたんですか?」

「礼を言うの忘れていたな」

 何か改めて礼を言われるようなことしただろうか?街に無事に着けた時点で、礼は言われていたと思うのだが。不思議そうな俺に、

「ティルダの件だ」

 と言ってきた。はて、何かあったか?

「対人戦が初めてだってこと忘れていてな。昨日聞いたら、お前のおかげだって言っていたぞ」

「あぁ、そういえば、かなり緊張していましたね」

「そうらしいな。詳しいことは聞いてないが、ケンヤが居なければ、あそこまでうまく出来なかった、と言っていた」

「そうですか」

 支えになれたのならうれしい。

「で、何をした?」

 ニヤリとしながら聞いてくる。

「え、いや、たいしたことはしてませんよ」

 あらためて口にするのも恥ずかしいので誤魔化す。

「そうか?あいつはうれしそうな顔していたぞ」

「そ、そうですか。ただ声をかけたぐらいです、本当に」

 内心、冷や汗をかきながら答える。

「わかった。とりあえず、ティルダを支えてくれて、ありがとう」

 そんな俺を見て、楽しそうにするトレヴァーさんだった。

暦の部分の補足。4年の合計日数

 364+364+364+369=1461日(ブランドン大陸)

 365+365+365+366=1461日(地球)

(正確には、100で割り切れて400で割り切れない年は、閏年でないので少しずれますが、そこまでは面倒なので省きました)


季節の変わり目

 2月と3月の間

 5月と6月の間

 8月と9月の間

 11月と12月の間

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