宿の一室(設定 お金編)
サイドストーリー風に設定を文章化してみました。
ストーリーに直接影響は出ないので、読み飛ばしても大丈夫です。
宿の一室、俺の借りている部屋。この世界のお金について、アリシアさんに教えてもらっている。
「ブランドン大陸では、お金の単位に《G:ゴルド》が使われています。」
「ゴルド?」
「はい」
『どう見ても、ゴールドをもじっただけだな』
心の中でつぶやく。
「何か言いましたか?」
「いや、何も」
表情に出ていたようだ。
「1G=銅貨1枚、10G=大銅貨1枚。このように貨幣の価値は10倍単位になります」
そういいながら、表を見せてくれる。
銅貨 1G
大銅貨 10G
銀貨 100G
大銀貨 1,000G
金貨 10,000G
大金貨 100,000G
白金貨 1,000,000G
大白金貨 10,000,000G
『日本円にすると、¥10から¥1億か。1億円コインって実用的でなさそうだな』
などと思っていると、
「もっとも、大白金貨は流通してないですし、白金貨もあまり見る機会はありません。貴族や大商人くらいですね」
「ですよね」
やっぱり使用されてないようだった。
「1ヶ月の稼ぎは、どのくらいなんですか」
「身分・職種によって違いますけど、一般的にはこんな感じですね」
冒険者(駆け出し)2,500G
冒険者(初級) 4,000G
冒険者(中級) 8,000G
平民(一般) 3,500G
平民(下級) 2,000G
貴族(下級) 6,000G
「上級貴族が、どのぐらいなのかはわかりません」
「1ヶ月の生活費は?」
「成人1人で、3,000Gあれば、晩酌も可能ですね」
「なるほど。今度一緒にどうですか?」
「お酒は成人してからですよ。私、そんなに老けていますか?」
「も、もちろん冗談ですよ」
ニッコリ笑っているのに、目がとても怖い…。
「次は衣食住の《衣》、服の値段です」
「新品とか古着とかあるんですよね」
「もちろんあります。一般的な平民の場合、仕事着等の汚れやすい物は古着、おしゃれ用は新品ですね。普段着は微妙なところ、所持金次第でしょうか」
「貴族だと、特注とかありそうですね」
「特注だと、最低でも1,000G。材質次第でいくらでも高くなるそうです」
古着 20G
新品 100G
特注 1,000G
「アリシアさんって、いつも素敵な服を着てますよね」
「多少、裁縫の心得があるので。自分で簡単に手直しをしています」
「とても似合っていますよ」
「そ、そうですか…」
赤くなっている。
「えっと、次は《食》にいきますね」
「食と言えば、平民は朝晩の2食が基本だったよね?」
「はい。街の外に出る人は、体力を保つために軽く昼も食べますが」
「そういえば、旅をしている時に、クッキーとかつまんでたな」
「はい。貴族などの富裕層では、豪華なお昼を食べたり、お茶なんかもしたりするようですよ」
野菜(1個) 2G
果物(1個) 10G
肉 (1切) 5G
パン(1個) 5G
酒(100ml) 10G
屋台(3品) 10G
「この金額は最低価格です。鮮度や質、種類、大きさなどによって高くなります」
「たしか、1回の食費の目安はだいたい20Gって言ってたかな」
「はい。お店で食べたりするとそのぐらいですね。数種の野菜と小さなお肉にパン1個。バランスは良いですよ」
「できれば、1日3食にしたいなぁ」
「贅沢ですね」
「やっぱ、そう見られるんだよね、この大陸では」
「?」
『日本じゃ当たり前だったからなぁ』
「次、最後の《住》について教えてくれる?」
「は、はい。《住》ですね。」
宿(1日・食無) 50G
賃貸(1ヶ月) 1,200G
家 (ボロ) 50,000G
家 (普通) 100,000G
家 (庭付) 500,000G
『土地代が安いのか、日本と比べてかなり安いんだよなぁ』
「これも、最低限の価格ですね。立地等の条件で、いくらでも高くなります。あ、でも例外もあります」
「例外?」
「事件があったとか、幽霊がでるとか」
「アリシアさんは幽霊とか大丈夫な人?」
「はい、光魔法使えますから。【清浄】を唱えるだけです」
自信満々に答えてくる。
「そっか、怖がるとこ見てみたかったのに、ちょっと残念だったかな」
『あぁ、失言でした…』
「武器やアイテムは、種類が豊富なうえ、実際にお店で見た方が分かりやすいからな」
「そうですね」
「そうすると、ここで教えてもらえるのはこのくらいかな?」
特にもう無いよな、と聞いてみる。
『えぇっと、他に何か…何か忘れているものないかな。このままだと、終わってしまう…』
少し考え込んでいたアリシアさんが、思い出したように言う。
「冒険者をされるなら、パーティーに奴隷を買われる方もいますね」
「そういえば、奴隷制度あるんですよね」
特に、話し方に変わった様子は見れない。嫌悪感とかないということは、やっぱり当たり前の制度なのだろう。こちらの世界では。
「はい。だいたい用途として3種類に分けられています」
「3種類?」
「はい。戦闘能力などが低くて雑務を行う一般。ただし、生活系のスキル持ちもいるので、雑務の範囲も色々です」
「当然、スキルや能力が良ければ、高くなる?」
「そうですね。生活に役立つ希少なスキルもありますし。次は、戦闘能力の高い冒険者」
「そのうち、仲間にする可能性もあるかな」
「スキルや魔法はもちろん、技量や種族的な特徴などでピンからキリまでいますね」
「種族か。獣人とか?」
「はい。人族より高めの方が多いと聞きます」
「なるほど。それで3つ目は?」
「3つ目は…えっと、その…」
「?…あぁ、なるほど」
アリシアさんが言いにくそうにしている。なんとなく見当がつく。
「その、性奴隷です…」
冒険者の時みたいに、そのうち…何て言ったら、冷たい目で見られそうだ。
「そうだね。とりあえずどのくらいになるの」
「基本的な値段になりますけど、これくらいになりますね。条件が良いと、これにどんどん加算されます」
一般 10,000G
冒険 50,000G
性 100,000G
「100,000Gかぁ」
「!」
『しまった。思わずつぶやいてしまった』
『やっぱり、興味あるんですね』
一瞬の沈黙。
「いや、ほら冒険者でも強い人なら2倍するかなとか」
「そ、そうですね。強い人だったらそのぐらいは…」
「ケンヤには、性奴隷なんていらないと思うけどなぁ」
「「いつのまに入ってきたんですか、ティルダさん」」
思わず、アリシアさんとハモってしまった。
「一応、声はかけたけど、返事が無かったから。まぁケンヤの部屋なら大丈夫かなって」
笑って答えるティルダさん。
「まぁ、別にかまいませんが」
「で、必要ないと思うよケンヤには」
「えっと、何のことです?」
「だから、せ…」
「戦闘力の高い冒険者ですよ、仲間にするなら」
思わず、遮ってしまった。
「本当に?」
「はい」
じっと見るティルダさん。
「まぁ、いっか」
多分、からかってるだけなんだよなぁ。
「それで、俺に何か用事があったのでは?」
「いつでも良いと言っていたけど、タイタスさんが暇なときに来いって言っていたわ」
「わかりました。ちょっといってきます」
2人をおいて、タイタスさんの部屋に行くことにした。
**********
「裁縫ができるのをアピールしたのは良かったけど、『【清浄】を唱える』はちょっと失敗だったわね」
「聞いていたんですか!?」
「あそこは、苦手ですって答えなきゃ」
「うぅ」
『赤くなって可愛いわね。もう一押ししてみようかしら』
「さっきの続きなんだけれど」
「さっきの?何です?」
何の話か本当にわからないみたいなので、少しタメを作ってから伝える。
「2人で200,000Gもらって、お仕えする?」
「!!」
『あらら、フリーズしちゃった』
**********
タイタスさんが部屋にいなかったため、すぐに戻ってきた俺は、部屋の扉に手をかけようとして聞いてしまう。
「2人で200,000Gもらって、お仕えする?」
手をかけたまま、しばらく固まってしまう。そして、何をすれば手っ取り早く200,000G手に入るだろうと、思わず真剣に考え込んでしまった。
そのまま、5分ほどそこに立ち尽くしていただろうか。目の前の扉が開き我に返る。
「帰ってきたんだ。早かったわね」
「タイタスさん、部屋にいませんでした」
「まぁ、急いでないって言ってたから、いつでも大丈夫よ」
「わかりました。ところで、アリシアさんは?」
「なんか部屋の中で固まっているわよ」
いたずらっぽく笑って言う。
「なんか、じゃなくて、またからかったんでしょ?」
笑い返す。そこで、ちょっとしたいたずらを思いつく。
「そうだ、ティルダさん」
「なに?」
彼女の耳に口を近づけてささやく。
「頑張って、200,000G貯めますね」
「!!」
赤くなって固まるティルダさん。予想以上の反応だった。
「いつもみたいに軽くかわしてくると思っていたんですが。想定外の攻めには、案外弱いようですね」
赤い顔のままにらんでくる。可愛いのでそのまま見ていたら、扉が開いてアリシアさんも出てきてしまった。
ティルダさんの表情を見て、アリシアさんの表情が変化する。なんとなく、これはやばいような気がする。
無表情のアリシアさんが口を開く。
「何をしたんですか?」
嘘ついてもすぐばれそうだし、何と言ったらいいものか。
しょうがないので、一か八かの賭けに出る。アリシアさんの耳元で
「200,000G頑張って貯めるから」
一気に真っ赤になって動かなくなる。
それを見て、とりあえずこの場をしのげたことに安堵する。
ただし、この先の事を考えると、何の解決にもなってないんだよなぁ、と部屋に入りながら思うのだった。




