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決着、到着

「あいつら、いくら偽装が必要だからって、おれの肩を槍で突きやがって。くそ腹立つ」

『あいつ、縄でしばっていたはずなのに』

 陰から覗くと、冒険者と名乗っていた男が、アリシアさんを縛って歩かせていた。

 こんなところに誰かいるとは思っていないのだろう。片手は縄を握っていたが、もう一方の手に武器を持っていなかった。

『まだ、早い。もう少し近づかなければ、腰の剣を抜かれる』

 辛抱強く待つ。

「せっかくアジトから出たっていうのに、結局また下っ端扱いかよ。これじゃ何のために出てきたんだかわからねぇ」

 後、数メートル。いつでも飛び出せるよう、足に力を込める。

「それにしても、こいつ、上玉だよな」

 ふいに、男の足が止まった。

『おい、止まるな』

「こいつを攫ってずらかるか」

『ふざけんな!』

 顔を上げたアリシアさんも、顔が蒼い。

「おっと、声出すんじゃねえぞ」

 男がニヤつく。彼女を引っ張り、こちらに背を向け…たまらず、俺は飛び出した。

「誰だ!」

 さすがは盗賊。気配を感じたのかこちらを振り向く。腰の剣を抜こうとしたが、アリシアさんの立ち位置が邪魔で抜け無いようだ。一瞬の躊躇の後、こちらに彼女を突き飛ばしてきた。

 アリシアさんを受け止めると同時に、その場を飛び退き、剣を抜いた盗賊との間を広げる。縄を解いてる暇は無いようだ。彼女を下ろし、《短棒ショートスティック》を構える。

「ケ、ンヤ、さん」

 突然現れて驚いたようだ。こちらも、声をかけたいところだが、そんな余裕はなさそうだ。

 お互い無言で対峙する。相手が動く気配は感じられなかった。

『そういえば、こいつ自分で『下っ端』って言っていたな。あまり強くないってことか。考えてみれば、人質をあっさり手放したり、頭もよくないのか?』

 そう考えると、少し落ち着いてきた。

 俺は、対人戦の経験がない。せいぜい、体育の授業で剣道をしたぐらい、お遊び程度。ついでに、背後にアリシアさんを庇いながら、戦わなければならない。弱点はこのぐらいか。

 逆に、強みの方は。まず、武器の形を変えられることを相手は知らない。それから、身体強化中。それと時間が経てば、仲間が来ること。そう時間が経てばこちらが有利…

 盗賊がニヤニヤ笑っている。何でそんなに余裕そうなんだ。盗賊たちが勝つと思っているのか?

 その時、自分を包む淡い光が弱まる。しまった、身体強化の効果切れを狙って、

「【ガ…」

「遅い」

 魔法を唱えさせまいと、まっすぐ突っ込んでくる。後ろにアリシアさんがいるから避けられない。俺は《短棒ショートスティック》に力を込めて横殴りにする。

「その長さで当た、ぐぁ!?」

 盗賊が吹っ飛ぶ。本来届かない長さだったが、《短棒ショートスティック》を振りぬきながら、長さを伸ばしたおかげで届いた。さらに身体強化は、先に唱えた【防御】が切れただけ。【攻撃】【俊足】はまだ活きている。

 無理に振りぬいたため、体勢を多少崩したが、すぐに立て直し追撃をかける。盗賊も、不意を突かれていたものの、あのぐらいなら問題ないのだろう。迎撃態勢を整えている。

「なんで当たった?」

 こちらの突きを交わしながら、睨みつけてくる。構わず《短棒ショートスティック》を叩きつける。

「なんだ、偶然か?動きが素人じゃねぇか」

 俺の攻撃をかわし、動きを見てニヤりとする。そして、剣を振り下ろしてきた。

「くっ」

 左後方に飛び退り交わすが、さらに踏み込んでくる。とりあえず、アリシアさんから引き離すことはできたようだ。

「どうした、どうした」

 嬲るように振るってくる剣をかわし切れず、浅い傷が増える。魔法を唱えるタイミングが無い。一旦距離をとるため、思い切って後ろに跳躍したが、

「あっ」

 運悪く、道の窪みに足が躓き、片膝をついてしまう。

「終わりだな」

 舐めきった感じで、無造作に歩いてくる。その隙に素早く立ち上がり、《短棒ショートスティック》を伸ばしながら、今度は頭へ横殴りの一撃を放つ。

「2度は食わねえよ」

 盗賊は、その攻撃を無造作に剣で防ぎ、《短棒ショートスティック》を止める…が

『曲がれ』

 剣に当たった所を支点として、《短棒ショートスティック》が

(ぐにゃり)

と、垂直に曲がった。

(ガンッ)

 横殴りの勢いが上乗せされた《短棒ショートスティック》の一撃が、盗賊の側頭部を直撃する。

「ぐあっ!」

 よろめく盗賊の横をすり抜けながら、とどめの一撃を腹にお見舞いする。

「がぁ…」

 白目をむき、その場に崩れ落ちる盗賊。実力は向こうに分があっただろうが、こちらを舐めていたおかげで、なんとか勝つことができた。

 とりあえず、どうやって縄を解いたかわからないので、《黒蜜》で腕と胴体をがっちり固定し、地面へ転がす。そして、今だ動けずに座り込んでいる、アリシアさんのもとへ向かった。

「怪我はない?」

 後ろに回り、手を縛る縄を切り捨てながら、声をかける。体が自由になると、こちらを向き、何も言わないまま胸に顔を押し付けてきた。体が震えている。

「怖かった?」

 胸に押し付けたまま頷いてくる。そんな彼女を、そのまま抱きしめた。

「もっと早く来れれば良かったたんだけど、ごめん。でも、もう大丈夫だから。何も心配ないから」

 頭をなでながら話しかけた。

 いまだに、声を発していないアリシアさん。相当怖かったのだろう。このままもう少し、そっとしておいてあげたいと思った。けれど、俺は彼女を抱きかかえて立ち上がった。

「本当は、もう少しこのままでいてあげたいんだけど…」

 他の人達も心配だ。

「馬車のみんなは大丈夫?」

 と、確認する。

「縛られているけど、多分大丈夫だと思う」

 頭を胸に預けながら、小さな返事があった。

「そっか」

 移動しようと思ったが、こちらに急いで向かってくる、2人分の点を【索敵】で確認したので待つことにする。

 まず現れたのはトレヴァーさんだった。俺達と倒れている男を見て大体察したようだ。

「大丈夫か?」

「はい。これから馬車の方を確認に行こうかと思って」

 そう答えていると、ティルダさんも姿を現す。状況が分からなかったので、いざという時のために、こちらは隠れて接近したようだ。

「アリシアちゃん怪我しているの?」

 抱きかかえているのを見て、そう思ったのだろう。

 けれど、アリシアさんは顔を上げると、首を振って否定した。

「良かった」

 安堵のため息をする。

「とりあえず3人は馬車に。そのまま馬車で街道の方へ向かってきてくれ」

 トレヴァーさんは俺たちに指示を出すと、転がっている男を引きずりながら、捕まえた盗賊たちのいる方へ戻っていった。


 盗賊たちを捕えた後も、色々大変だった。とりあえず盗賊の馬を確保し、それに盗賊を乗せて連行、街道まで出た。街から近いこともあり、運よく巡回の警備兵と遭遇し、賊の引き渡し、冒険者の人質についての説明などをその場で済ませた。

 その後は、トレヴァーさんが詳しい説明やら手続きを行うため別行動になったが、それ以外のメンバーはそのまま街へ向かう。事情が事情なので、警備兵の護衛を受けながら向かっている。

 だんだんと見えてくる、街の壁。くすんだ赤茶色の壁が、木々の間から覗いている。魔物がいるから、壁に囲まれているのか、なんて軽い気持ちで見ていたが、

「街とは聞いていましたけど、随分立派な城壁ですね」

 到着してみると、それは立派な城壁に囲まれた城塞都市だった。

 見上げるような壁、頑丈な造りの門、円柱状の大きな櫓と、さながらテレビで見た世界遺産のようだ。圧倒的な威容に、ただただ呆然としていた。

「どの街も、このぐらいですよ」

 アリシアさんが笑ってる。元気を取り戻したようだ。

 ふと、以前読んだ本の中に書いてあった事を思い出す。

 王が治めている王都。王に任命された領主が治める市。領主の名代が治める街。どれも、魔物の侵攻を抑える拠点だと。人々が生活の場として過ごすだけでなく、有事の際に、立てこもって戦う重要な施設。

 なんとなく、本の内容を思い出していると、街への入場手続きの順番が回ってきた。

「父が手続きをするので、私たちはカードを提示するだけで大丈夫です」

 胸元からカードを取り出し教えてくれる。自分もカードを取り出し、兵士に渡す準備をする。

 アルヴァさんが兵士と会話する声が聞こえてくる。

「エドウッズ村?南から来たのか。よく無事だったな」

「何かあったんですか?」

「エッジヒル高原で、ウルフが大量発生しているって話だ。冒険者の一部が、向こうへ稼ぎに行ってる」

 ウルフの大量発生、俺らも巻き込まれた奴だな。

 カードを見せ、手続きを無事に終え、馬車で門をくぐる。

 閉ざされていた視界が開かれ、活気あふれる街並みが目に飛び込んできた。

 ベージュ色の壁に、赤茶の屋根。ほとんどが2、3階建てで、石造り、レンガ造りの家が多い。見える範囲では、木の家屋などはなく、日本よりヨーロッパに近い風景だ。道は綺麗に整地され幅も広く、人であふれている。馬車も走っているし、道端で露店も開かれている。

 歩いているのは人が多いが、その合間にいるのは獣人だろう。獣の耳やしっぽを付けた…いや生やしたと言うべきか。ファンタジー感あふれる世界だった。

 ふと視線を感じ、横を見るとアリシアさんがこちらを見ていた。

「街は初めてなんで、すっかり目を奪われてしまいました」

「そうみたいですね。私は何回か来たことがあります。ここの住人ではないですけど…」

 1回区切ると、笑顔でこちらを向き

「ようこそ、エクレストンへ」

 と、茶目っ気たっぷりに、迎えてくれた。

 ここまで読んでいただきありがとうございました。

 1章はここでまでになります。

 次は、番外編をはさみ、2章に入ります。

 これを書いている時点では、構想のみで文章化されてはいませんが…


 もし、よろしければ簡単な感想をお願いします。

「面白かった」「つまらなかった」などの簡単な物でかまいませんので。

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