帰路①
放課後。学校から駅への帰り道。
男三人で歩いていると、ふと高島が目の前のコンビニを指差した。
「なぁ、せっかくだから寄っていこうぜ」
特に断る理由もなく、僕は頷く。
隣の横山を見ると、財布を開いて中を確かめていた。
が、その返事も待たず、高島はさっさと走り出す。
「おいっ、待てよ」
追いかける横山。
僕もその後に続いた。
蛍光灯の白い明かりの下、自動ドアをくぐり抜ける。
耳馴染んだ音楽とともに、涼しい風が店内から吹き抜けた。
「ふぅいぃぃー、生きかえるぅー」
手を広げて、伸びを一つ。
全身でクーラーを堪能すると、高島は僕らに目もくれずにアイスコーナーへと吸い寄せられていった。
最初から目当ては決まっていたらしい。
横山はやれやれと首を振り、その背を追う。
僕はそんな二人をぼんやりと眺めながら、手前のコミックコーナーで足を止めた。
見知った顔があったからだ。
声を掛けるべきか躊躇っていると、先に相手に気づかれた。
彼女が一瞬、目を見開く。
しかし、すぐに表情を閉ざした。
「こんなところで会うなんて奇遇ですね?」
「そうですか?一応、通学路ですけどね」
「……相変わらず、会話の出来ない人です」
持っていた雑誌をパタンと閉じて、彼女は立ち上がった。
「買うんですか?それ」
「いけませんか?」
「いえ……そういうわけでは。ただ、気になったので」
「そうですか。では、あなたには関係がありませんね」
冷たく会話を終わらせると、レジへと向かっていった。
その背をなんとなしに見ていると背後から声が掛けられた。
「おいおい零~ 女の子を怒らせちゃダメじゃないかぁ~」
振り向くと、高島のにやけ顔が至近距離にあった。
「怒らせた、のでしょうか。彼女はいつもあのような態度なので」
「……マジで?」
「ええ、マジです」
「それは少し改善した方が良いんじゃないか、零」
隣で聞いていた横山が思わず案じる。
高島のにやけた口元も、いつの間にか真っ直ぐになっていた。
「そう思いますか?では、謝りにいってきます」
「待て。そうじゃない」
改善するとなれば、まずは問題を取り除くべきだと思ったのだが。
眉間を押さえる横山の様子を見る限り、そうでもないようだ。




