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短編集  作者: らぶ
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観覧車

 一般的に、遊園地は初デートには向いていないとされている。


 実際にアトラクションを楽しむ時間よりも、待ち時間の方が圧倒的に長いからだ。

 まだ、お互いのことも探り探りで、関係を構築し始めた男女にとっては、少し荷が重い時間を共有することになる。

 だから、遊園地デートというものは、ある程度互いのことを知ってから、改めてお互いの気持ちや相性を再確認するために用いるものなのだ。


 ——そんなことも、露知らず。彼は私の手を引いて、この観覧車のゴンドラに私を乗せた。


 たった一つ。私に、この頂上からの景色を見せるためだけに。


「ほらな、来てよかっただろ?」と彼は笑うけど、私は小さく頷くことしかできなかった。

 頂上からの眺めは想像を絶するほどで、少し視線を下ろすとパーク一帯を埋め尽くすほどの人の姿が見えた。

 こんな大勢の人たちの一人ひとりにも、私と同じように人生があるのだと思うと、今この一瞬がいっそう輝いて見えた。


 馬鹿と煙は高いところを好む、というけれど、ならば私はどちらなのか。

 少なくとも彼は馬鹿だ。

 初デートで、遊園地を選ぶなんて。

 まるで、私たちの関係が終わることを危惧なんかしていない。


 ところで、心理学にはピーク・エンドの法則というものがある。

 人間は物事を記憶するとき、絶頂と終わりを強く認識するそうだ。


 思えば、私たちのピークはこの時だった。


 私は馬鹿にはなれない。

 ただの煙だ。

 流されやすく、すぐに消えてしまう。


 彼と見たこの景色もいつしか色褪せて、無数に敷き詰められた人の頭に、それぞれの人生があると思うと無性に腹立たしい。


「別れよう」


 どうして、彼はよりによってここで、そんな話を持ち出したのか。

 終わりがこなければ、絶頂のままであれたのに。


 強く記憶してしまった。


 もう、もどれない。


「……さようなら」


 私たちの物語は確かに、ここで終わったのだ。

 

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