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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第6章 あのコの影を追いかけて

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66 絵日記帳の世界のあのコ[5]

いつも読んでいただき、感謝です。

 「貴女への謝罪はこのくらいにして、本題に移るわね、日向」

 このまま初代さんの勢いに押されっぱなしで終わってしまうのかな、って思ってたけど……神さま、本気モードに切り替えてきたみたい。

 「自然界の怨念を受け入れて、そのコアとなった私は神となり、怨念の集まりは思考を得る事になったの。 この五次元の世界から、御業で様々な世界線の地球の姿を眺めてみると、そう遠くない未来では、自然界の節度を超えた人間の生命活動が環境を破壊し、気候を狂わせ、空、陸、海……あらゆる場所に息づく他の生命体の悲鳴が耳に届いてくるほどの、心を痛める光景が展開されていたわ。 それを見た時、人間を恨む気持ちへの迷いを断ち切れずにいた私は背中を押され、強く決心したのよ。 人間を滅ぼし、傷めつけられた地球と、他の生きとし生けるものを解放しようと」

 「それが貴女の神としての願い……確かに、その通りかもしれない。 私もそれは強く否定できないわ。 人間は、知恵という他の生命体が遠く及ばない優れた武器を使って、自分たちに都合の良い世界を作り上げていってるもの。 でも!!」

 初代さんは神さまに向かって一歩踏み出すと、言葉に力を込めて続けたの。

 「鳥が人間が持ち得ない空を飛ぶ能力を使って生きてるように、人間は知恵を使って、生きていくのにより最適な環境を追い求めようとしてるだけだと思う。 節度を超えてる、なんて物差しで測る事そのものが、人間にしか出来ない事なのよ!! さっき貴女が語った、人間を恨むきっかけになった話、思い出してみてよ。 夢の中での話だったよね? 貴女の一方的な思い込みが、環境破壊の知識を持たない他の生命体が人間の生命活動によって存在を脅かされてる、っていうストーリーを生み出してるだけじゃない!」

 「貴女が言いたい事は分かったわ……気候を狂わせているとか、環境を破壊しているとかという判断自体、人間にしかできないものだと。 他の生命体がそんな事を主張するなんてあり得ないと」

 「そうよ! 貴女は、最愛の人の予期せぬ死を目の当たりにした心の痛みを和らげようと解釈を捻じ曲げ、強引に自分にそう思い込ませようとしたんじゃないの?」

 初代さん、ちょっと言葉のとげとげしさが和らいだような……けんか腰だったのが、神さまを諭すような感じに変わってきてる気がする。

 「うむ……あの日、私が見た夢は、自分の心が破綻しないように防衛反応を取った結果の産物だって、貴女は言いたいのね?」

 「ええ、そうよ。 ま、夢に従って行動を起こした時点で、既に貴女の心は破綻してたとも取れそうだけど。 幸せだった頃の貴女なら、そんな妄想なんてきっと浮かびもしなかったと思うの。 でも、貴女は自分の心を守る拠りどころが欲しかった……それで……」 

 「違う!! 私は確かにこの目で見たのよ!! 数々の未来の行く末を!! 心を痛めつけられる光景を!!」

 初代さんが正論で攻めるものだから、神さま、声を荒げて、慌てて振り切ったように見えるわ。

 「確かに貴女の言う行く末は、実際に起こり得る光景なのかもしれないけど、全ての世界線がその結末だったの? さっき貴女は様々な世界線を眺めた、って言ってたけど、違う未来、明るい未来はホントに無かったの?」

 「そ、それは……」

 神さまはだいぶ勢いをそがれてしまったみたい……初代さん、強いわ。

 隣では前代さんが拳を握りしめて成り行きを見守ってる……初代さんを応援してるのかな、あはは。

 「貴女は自分にとって都合の良い部分だけを切り取って、物事を見てしまったに過ぎないのよ。 そこを、自然界の怨念だと思い込んだ思念体に付けこまれ、心を蝕まれる事になった……凄く、悲しいわ」

 「ふっ、全ては私の妄想だって貴女は言うのね……冷静さを失ったところを突かれ、私は自我を失ったと」

 「ええ、そう思うわ。 結局、貴女は強い喪失感を上手く散らす事が出来ず、打ちのめされた。 そして、そのまま思念体に……」

 「でも、それでも!! 私は自分の意志で、人間を滅ぼす事を決心したの!! 数々の悲しい未来の光景を実現させない為に。 どうやったら彼らにふさわしい最期を与えられるだろう……ただ、間髪を入れずに殲滅するのではなく、時間の猶予を与えて、じわじわと追いつめていくのがいい、と私は考えたのよ。 無名神を形作っている思念体は、その方針を大いに喜んだわ」

 「ん? 自然界にとって害になるって考え、滅ぼすって決めたんだったら、一刻も早く実行に移した方がより最適な選択なんじゃない? だって、早けりゃ早いほど、被害の拡大を食い止められるんだから。 でも貴女は随分と時間の掛かる手段を選んだ……それって!」

 ここで初代さん、凄く溜めたの。

 何か決定的な事を突き付けそうな雰囲気がするよ。

 「貴女の決意に迷いがあったんじゃないの? そこに時間の猶予を作る事で、その間に貴女の娘がここに来て、自分を止めに来てくれるって期待して」

 「うむむ……貴女はどこまで鋭いの……。 覚悟は揺るぎないはずなのに、深層心理ではまだどこかに迷いがあったのよ。 それでうっすらと逃げ道を用意したの。 そうなればそうなった時よ、と思ってね」

 「そうよ。 そもそも生前に、私宛の手紙を書き遺した時点で既に迷ってたんだもん。 私に論破される事を願ってたんだもん。 心を鬼に出来なかった……本当は苦しかったんだよね?」

 「ああ……日向……やはり貴女は私の望み通りに強くなって……。 でも、もう遅いのよ。 結局、人間が子孫を残せなくなる呪詛は、力が及ぶ範囲にかかったままなのだから。 人間に認知されてないからこそ、神性を制限される事無く、人間に裁きを与えられる……私の心は自然界の怨念と今も一心同体なのよ」

 「子孫を残せなくなる呪い!! それで、子供が生まれなくなった、って訳か……。 私が生まれた16年前の5月31日より後には誰も……東子と朝子の誕生日会での違和感、元はそこにあったのね。 何て非道な所業なの! そんなの、神とはいえ許される事じゃないわ!!」

 「即座に殲滅するよりは、よほど良い選択だと思うんだけど? ただ、その呪詛をかける直前、私は誤算に気付いたのよ。 それは、貴女にとって最も重要なパートナーになるはずの火雷の誕生が、貴女よりも後だった事。 そのまま呪詛をかけてしまうと火雷は生まれなくなってしまい、世界は私の思惑から大きく外れたものになってしまう……そこで私は、夢を通じて火雷の母親に神託を与え、出産予定日を貴女より前に繰り上げさせたのよ。 彼女は元々月宮神社の巫女、神託を信じる素因は持ち合わせてるもの」

 「火雷の運命まで捻じ曲げたって……私の大切な親友なのよ!! 貴女のエゴの為に、生まれる前の彼女の因果律まで改ざんしてお膳立てするなんて、許せないわ、そんな力の濫用!!」

 初代さん、本気で怒りの感情をぶちまけてる……ひいちゃんを思う気持ちは私と同じくらい強いのね、同じ日向として嬉しいよ。

 「力の濫用、ね……確かに、貴女の大切な親友にも過酷な定めを与えてしまった事は謝るわ。 でも、考えてもみなさい、日向。 もしそうしなければ、貴女と彼女がここまで深い絆で結ばれる事なんて無かったのよ。 火雷の母親から聞いて知っているでしょ? 神託の話は」

 「まさか、それを自分の手柄だなんて勘違いしてないでしょうね! 火雷との出会いは貴女がお膳立てしたものかもしれないけど、絆の深さはそうじゃないわ。 因果律の書き換え……貴女はさっき、人間の生命活動を自然界の節度を超えたもの、って批判してたけど、貴女自身はどうなのよ! 貴女がやった事はそんなレベルじゃないのよ! それを遥かに超える、自然の摂理にすら反した、到底許されないものよ!!  私、決めたわ! ここに辿り着くまでに支えてもらい、背中を押してくれたみんなの為にも、貴女を必ず論破してみせる!!」

本編の第52話をベースに書き上げました。

☆今回気を付けた点☆

この物語の設定の数々を開示し、伏線を回収する重要なエピソードを示しました。

その点に着目して読み返した時、見えなかったものが見えるようになった、と感じてもらえると嬉しいのですが。

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