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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第6章 あのコの影を追いかけて

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64 絵日記帳の世界のあのコ[3]

いつも読んでいただき、感謝です。

 神さまはまず私たちに、「貴女たちは、今いるこの場所がどういう所だと認識しているのかしら?」 って尋ねてきたの。 

 「うーーん……私にしか見えないし、立ち入れない、現実離れした場所、かな。 普段生活してる世界とは違う、って事くらいは分かるけど……」

 私がそう答えると、神さまはその内容に満足できなかったのか、 「なるほど。 では、尋ね方を変えましょうか。 普段、貴女が生活している世界、そこは何次元だと認識しているのかしら?」 って、訊き直されちゃって。

 「何次元? えっと……三次元かな。 確か、縦・横・高さの三つの軸で出来てる空間、だったような……」

 「その通りよ、現世日向。 それじゃ、ここは何次元だと考えるかしら?」

 「えっ?! そんなの、分かりっこないよぉ。 それより上の次元なんて私、知らないもん」

 「ま、それもそうよね。 まず、三次元に時間軸の概念が加わり、時間を自由に行き来できる次元、それが四次元で……」

 「って事は、過去にも未来にも自由に行き来できちゃうのかな……」 

 でも、私の呟きは軽く流されちゃって……置いてきぼりにされちゃいそう。 

 「その上の五次元は並行世界……つまり、時間軸が無数にある世界。 パラレルワールド、と言った方が分かりやすいかもしれないわね。 ここは、その五次元の世界よ」

 「並行世界……世界線……時間軸……五次元……」

 小説の中ではありそうな設定だけど、実際に今、そこに足を踏み入れてるなんて……。

 でも初代さんは、神さまの話をしっかり理解してるみたいで、 「並行世界……私は数え切れないほどの世界線で、同じ数だけの日向と出会い、行動を見守ってきたわ。 ある世界線で日向が命を落とすと、別の世界線でまた新たに出会って……長い長い時間の旅を、私はただひたすら繰り返させられたのよ。 貴女の手紙にあった”長い旅を経て”って、その事を指してたの? あれは私に対する……」 って、怒りにも似た、高ぶった感情を神さまにぶつけたの。

 「そうよ、初代日向。 貴女には過酷な運命を与えてしまったわ。 ただ、その話は後に回してもいいかしら? 今は現世日向と話がしたいの」

 神さまには話す順序があるのかな? 初代さんは水を差されたみたいに、一旦身を引いちゃった。 

 「私と……分かった、頑張るよ。 さっきの話だけど、そんな現実離れした五次元のものが、私には見えるし触れる……そんな力を私に与えてくれたのって、神さまなの?」

 「ええ、ある目的をもって、貴女にその力を与えたのは私よ。 五次元の世界を見せる存在の力を借りながら、三次元に現存するものを全て手放した時、貴女の身体は一時的に五次元の世界へと踏み入る事が出来るようになるの」

 「五次元の世界を見せる存在……それってほつきって事?」

 「その通りよ。 貴女が星月と名付けたその存在は、私が生前に秘術で生み出し、貴女に巡り合う事を運命付けたものなのよ」

 「私に巡り合う運命をほつきに与えたのは神さまだって言うの? 五次元の世界と私を繋ぐ存在、だったよね……何で神さまは私をここに来るように仕向けたの?」

 「それを語るには、私が生前、何者だったのかを明かさなくちゃいけないわね。 月宮神社の宮司である父、禰宜である母の間に生まれ、物心つく前から”自宅が神社”という特殊な環境で育った私。 将来も神職に就く事を運命付けられていたようなものだったわ」

 神さまは淡々と生い立ちを語り始めたけど、いきなり衝撃的な事を聞いてしまって……。

 「えっ?! ちょ、ちょっと待って、神さま!! 月宮神社の宮司って言えば、あづちさん、だよね?」

 「その通りよ、現世日向。 私の父は安土よ」

 あまりにびっくりして、言葉を失ってると、 「門外不出のはずの秘文書をどうにか出来るんだから、月宮神社に深い関わりがあるはず、って予想はしてたけど、やっぱり貴女は……。 でも、彼は貴女の存在なんて、私が知る限り一度も口にした事が無いし、それどころか、記憶にすら無いみたいだけど」 って、初代さんが会話を繋いでくれたの。

 「どうして父の記憶から私がごっそり消え去ってるのか、その理由はもっと話を進めてから明かしていくわ、初代日向。 昔話に戻るわね。 幼い頃の私は、父と母のお勤めを見て、自分に出来る事を手伝ううちに、自然に心構えというか、将来に対する覚悟も芽生えてきたわ。 でも、私が小学校を卒業する頃、母は若くして病気で亡くなったの」

 「そんな早くにお母様を……まだまだ甘えたい年頃なのに……何て可哀想な神さま……」

 これは私の率直な気持ち……この年でも甘えたいくらいなんだもん。

 「でも、当時の私はくよくよしなかったの。 それを機に、私は母の跡を継ごうと決心したのよ。 神職の親が亡くなったという事で、特例で私はその年齢で巫女になり、普段から恥ずかしくない立ち振る舞いを心掛けようと決心したの。 その頃あたりからよ、父に門外不出の資料を色々と見せてもらうようになったのは」

 「そんな幼い頃から、将来について覚悟を決めただなんて、心の強さを感じるよ。 宮司さんも、自分の跡継ぎになるって見込んだから、そんな大切な資料を見せるようになったんじゃないかな」

 「そうね、きっと。 父の強い期待を感じて、私も様々な知識を身に付け、立派な神職者を目指さなければ、という気持ちで、夢中になってそれらを読み漁ったわ。 そんな生活を送っていたから、学校では少し浮いた存在になったけど……自分の境遇に不満は無かったのよ」

 「青春を、そこに全振りしたの? 確かに充実してたかもだけど、ちょっと寂しい気もするなぁ」

 「全く寂しくなかった、って言えば嘘になるわね。 あの頃は一心不乱だったから、鈍くなってたのかもしれないわ。 高校を卒業すると、神職の資格試験の勉強を頑張って、直階の階位に合格したの。 それで、父の計らいで、月宮神社の禰宜としてデビューしたのよ。 母の跡を継げた事を凄く嬉しく思ったのを今でも覚えてるわ。 そして、それから間もなく、お見合いで出会った神職経験者の男性を、婿養子として迎え入れたのよ」

 「神さまは根っからの努力家だったのね。 けど、全力で突き進み過ぎて人生を急いでる……そんな感じもするわ」

 「貴女の言う通りかもしれないわね。 勢いに任せてたところもあったから。 その後、順調に夫の子供を身籠った私は、全てが順風満帆だったわ……夫から毎日掛けられた”愛してるよ”の言葉、その日の出来事を一緒にご飯を食べながら語り合った時間、そして、子供を産んでますます明るくなっていきそうな、私たちの未来……そんな毎日を送ってたある日、事件が起こったのよ」

 「えっ?! 事件?!」

 「そう、事故じゃなく、事件よ。 その日、夫は奥宮がある長森島ヘ、お勤めを果たしに向かったの。 でも、夜更けになっても帰って来なくて。 翌日、父と私が島に渡って捜索したら……山の中腹で、両腕と両脚にツタが絡まり、熊に襲われたのか、全身を引っかかれ、噛みつかれて事切れた夫を見付けたの。 幼い頃から同じ参道を何百回と通った私も、何千回と通った父も、獣に出くわした事なんて一度も無かったのに……」

 「神さま……何て不幸なの……痛ましくて聴くのも辛いよ……」

 私が神さまの気持ちに同調して話を聴いてるのに、初代さんが間に入ってきたの。

 「貴女の生い立ち、不遇な事件……それには同情するところもあるわ。 けど、それと、私たちにこんな過酷な運命を与えたのと、一体何の関係があるって言うの? 全く見えてこないわ!!」 って、物凄くイライラを募らせてるみたいで……。

 「もう少し、私の話を黙って聴いててほしいの、初代日向。 順序立てて話をしてから、重要な事を告白しないといけないから」

 初代さんは、私と神さまの会話の合間に入る度に神さまにいなされて、不満そう。

 ふーーっ、って大きく息を吸って、もう一度聴く態勢に入ったみたい。

 「あまりにも衝撃的で、事実として受け入れられず、私は心を病み始めた……そんなある日の夜、妙にリアルな夢を見たのよ。 ――人間の独り善がりな生命活動によって、本来の自然の摂理、つまり弱肉強食に依らない理不尽な要因で、次々と存亡の危機に追い込まれていく動物や植物の思念……それが集まった怨念が、見せしめとして夫を死に至らしめたという……」

 そこでまた、引っ込んだはずの初代さんが、私たちの会話に割って入り、強い口調で、怒りを神さまにぶちまけたの。

 「何なの、それ!! 貴女の夢の中での空想でしかないじゃない!! そんな夢に惑わされる方がおかしいわよ!! それで、自然界からの復讐を受けて、旦那さんが亡くなったなんて考えたわけ? 何て短絡的で浅はかなの、貴女って!!」

 「その状況に置かれていない貴女は、冷静にそう考えるだろうけど、あの頃の私は、様々な要因が重なったのもあって、とても冷静にはいられなかったのよ、初代日向。 私は迷う事無く、あの事件をその怨念が惹き起こした復讐だと決めつけたわ。 そうする事で心の安定を図るかのように。 その日を境に、日に日に心の闇は深くなっていったの。 モヤッとしたどす黒いものが心の中に流れ込んでくるような感覚ね。 そしていつの日からか、夫を奪い去った怨念を恨んでいた気持ちから、怨念を生んだ人間を恨む気持ちへとすり替わっていったのよ!」

 「それって、人間側からの視点で怨念を恨んでた気持ちを、怨念側からの視点で人間を恨む気持ちにすり替えた、って事よね? 旦那さんが獣に殺されたのは、自然界の怨念が悪いんじゃなくて、自然界に害をなした人間が怨念を買ったせいだ、って!!」

 「その通りよ、初代日向。 巫女は本来、神の意志を受け取り、人に神託を告げる役割を持っていたと言われ、私もそれを信じていたの。 これは夢を介した神託なんだと。 そして臨月を迎えた頃、その心の中のモヤッとしたものと契約を交わしたのよ。 自然界の怨念はあくまで思念体で不安定な存在だから、私が身を捧げて思念体の核となって取り込まれ、安定した存在になるって」

 「まず代償として、自分の身を捧げた、って訳か」

 「そうよ。 その代償の見返りとして、私のお腹の中にいる夫の忘れ形見……この子が、数多くの経験を積んで成長できる環境を作り、何時の日か、私の目の前に、私を咎め得る存在になって現れる事を求めたの。 秘文書の中に記されていた”五芒転生の秘術”を我が子に施す事によって。 その後、自宅に産婆を呼び、娘を無事出産した次の日の早朝、私はこっそりとカヌーで長森島に渡り、奥宮に出向いて、そこで思念体と正式に契約を結んだのよ」

 「始めから自分の決断が誤ってるって認めてるじゃない、それ! そんな回りくどい事で我が子に止めてほしいって願うくらいだったら……何でそこで引き返さなかったのよ!」

 初代さんの凄い熱量を、神さまは冷やしていくかのように、何も答えずにただじっと様子を見てるだけで……。

 ここで、ずーーっと口を閉ざして様子を眺めてた前代さんが、ポロっと一言、 「ちょっとちょっと!! もの凄く重要な事、スルーしてるよ、初代も日向も!! 無名神が言う、お腹の中の子って、五芒転生の秘術を施された私たちの事を言ってるじゃない!!」

 「……五芒転生の秘術を……あっ!!」

 「……あっ!! そう言われると、ほつきって……」

 初代さんも、私も、前代さんにツッコまれるまで気付かなかった……じゃぁ今、目の前にいる神さまは……。

 「その通りよ、前代日向。 私の愛しい娘たち……」

 神さまは、私たち3人のひむかたちに、柔らかな微笑みを浮かべながら、そう優しく答えたの。

本編の第50話をベースに書き上げました。

☆今回気を付けた点☆

本編では地の文を三人称で書きましたが、このスピンオフでは日向視点の一人称に書き直しながら、会話文もより会話っぽく手を加えていく事にしました。

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