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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第6章 あのコの影を追いかけて

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60 ゆらとの最後の対話

いつも読んでいただき、感謝です。

 その日の夜、疲れてたからかな、ベッドに横になって2~3分のうちに、深い眠りに落ちてたの。

 夢の中でゆらと会ったんだけど、いつもとは様子が違うんじゃない? って直感的に気付いて……。

 「火雷、今日は色々と話しておかないといけない事があるの。 おそらくこれが夢の中で会える最後の機会になると思うから」

 「最後って、どうして? 何か予感みたいなのを感じたの?」

 「いいえ、予感ではなくて、失ってた記憶の一部を取り戻したの。 いや、神様に返してもらえた、って言う方が合ってるのかもしれない」

 「ゆらの言った事をそのまま解釈すると、記憶は神様に消されてた、って事になるんだけど」

 「その通りよ。 神様が、大きな罪を犯してしまったお母様と私に、自力ではどうにも出来ない試練を与えるために、それに関係するほとんどの記憶を消してしまったの」

 「大きな罪を贖う試練……そう言えば、ゆらと最初に会った時、言ってたわね。 敢えて踏み込んで訊くのは避けてたんだけど」

 「今、ここで話してしまいたいんだけど、神様から止められてるの。 私の主観が入って、内容を改ざんされるおそれがあるから、って事みたい」

 「なるほど、客観性が損なわれないように、って事ね。 でも、それだったら、私には事の成り行きを知る事は出来ない、って事になるわね」

 「ううん、神様が残した記録を火雷に夢で見せる事になるみたい。 過去に火雷が見た、私が出てこない夢と同じように」

 「ああ、疑似体験的な夢の事ね。 あれって、神様が見せてたって言うの? 随分と壮大な話ね」

 「そう。 私もさっき知ったばかりなんだけど、火雷の行動が神様の考える条件を満たした時に」

 「条件を満たした時って……フラグが立てられた時、って事かぁ。 私も神様にもてあそばれてるみたいね。 あ、そう言えば、今日で会えるの最後になるって言ってたけど、どうしてなの?」

 「ごめんなさい、ついつい記憶を返してもらえた話に飛んでしまって。 火雷が持ってる絵日記帳、新しいページが明日開放されると、それで完成なの」

 「そうなの?! やっと絵日記帳の全開放達成、って事ね」

 「そう。 返してもらった記憶の中に、絵日記帳に関するのもあったから。 あれは私にとっての最後の世界線で、火雷が日向と一緒に作り上げたものなの」

 「最後の世界線? パラレルワールドの話、やっぱ信じない訳にはいかないのね。 無数にもしもの世界があるのは分かるとしても、あの絵日記帳のって、あまりにもぶっ飛び過ぎてて……」

 「火雷の言う通りなんだけど、逆に絵日記帳の世界線から見ると、今のこの世界線も現実離れしてる、とも言えるのよ」

 「ああ、見方変われば、ってやつね。 ところで、さっきから一つ気になってる事があるんだけど…… ゆら、さっきから自分の事を私って言ってて、ゆらって言わなくなったよね? あと、喋り方がちょっと大人っぽくなったような気が……」

 「そこに気付くなんて、どの世界線の火雷も直感が鋭いのね。 そう、今回は意識して自分の事を私って言ってるの。 私が何者だったのか、返してもらった記憶で分かったから」

 「ゆら……そうなのね。 今の絵日記帳の成り立ちの話を聴いて薄々は気付いたけど、貴女は……」

 「ええ。 私は[初代の日向]よ、火雷」

 「初代の日向……そう言われると、この前見た夢の中で青白く輝いてたけど、貴女も青白く……」

 「そこに共通点があったのね。 神様が火雷に見せた夢に出てきた星月にまつわる話、あれは絵日記帳の書かれた世界線での真実なのよ」

 「あんな無茶苦茶な世界観が真実だなんて……星月って結局、誰が何の為に作り上げたシステムだったの?」

 「それも今度、神様が夢で火雷に見せてくれる事になってるみたい。 もう一度、絵日記帳を読み返してみて。 多分それが今回の条件になってると思うの。 一つ言えるのは、火雷が今までに夢で見た話も、これから見る事になる話も、私にとっては全て真実だって事」

 「絵日記帳を読み返す事でフラグが立てられる……分かったわ。 私にとって非常識とか、そういう固定観念は捨てて、世界観をなるべくそのまま理解するよう努めるわ」

 「ええ、火雷が走り回って、絵日記帳の全開放を成し遂げてくれたお陰で、私は記憶の一部を神様に返してもらえた……言葉で言い尽くせないほどの感謝の気持ちで一杯なの」

 「私にとってもこの試練、凄く意味のあるものになったのも事実よ。 自分でも感じるんだもん、この一件で心が成長していってるなって」

 「いつも物事を前向きに捉えて行動を起こす火雷を傍から見てて、私、感心してるのよ」

 「ま、お互いにウインウイン、って事ね。 私からも貴女に有難う、ってお礼を言っとくわ」

 「最後にそう言ってもらえて、私、安心したわ。 ずっと巻き込んでしまって申し訳ない、って引け目を感じてたから。 ところで、火雷に一番伝えておかなくちゃいけない話があるの」

 「最重要かぁ……分かった、心して聴くわ。 どんな話なの?」

 「実はこの前、病院で日向が火雷に掴みかかりそうになった時、私の身体に大きな異変があったの。 あの瞬間、私、物凄い力で日向に引っ張られるような感覚がして……」

 「物理的に日向に吸い寄せられた、って事?」

 「ま、私の身体ってこんなだから、物理的にって言うのも変なんだけど……そうだなぁ……掃除機で吸われるような感覚? かな」

 「うーーん……見方によってはあの時、日向も私に吸い寄せられた、って考えられないかな? 貴女が引っ張られたみたいに」

 「お互いに引き合ったんじゃ? って火雷は言いたいのね。 確かに私も日向だから、惹きつけ合うっていうのもアリかもしれないけど……」

 「今の話、何か臭うわね。 日向を元気な姿に戻す為の、何らかの手掛かりになるかもしれないし、覚えとくわ」

 「参考になるか分からないけど、最後に伝えられて良かったよ」

 「最後、ね……そう言われると寂しさを感じるかも……不思議なものね」

 「私も名残惜しいけど……あ、もう一つ、火雷に伝えたい事があった!」

 「おっとっと。 ぎりセーフね。 もう落ちそうになってたわ」

 「ごめんなさい。 えっと、神尾渓谷には行かなくてもいいから。 寒い中登っても、そこで得られるものは特に無いと思う。 火雷が見た夢の中で星月がいた場所には、月宮神社が寄贈したウサギのオブジェが鎮座してるだけなの。 星月はこの世界線には存在しないから」

 「何それ、攻略法、教えてくれてるの? それって、記憶を返してもらった成果なの?」

 「もう絵日記帳は完成するの。 祈る相手を探す必要は無いし、私とこうして話すのも最後だから。 その分、開放された全てのページをじっくり読んでほしいの。 じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」


 最後のページかぁ……そう言われると、もっと続いててもいいのに、なーーんて思っちゃうの、何故だろう。

 タイトルは[7)輪っか]……草で編んだくぐり輪みたいね。


 【コメント】

  ・境内の真ん中で見付けた、深緑の草で編まれた輪っか。

  ・人がくぐれそうな大きさ。

 【考察】

  ☆今度、宮司さんに尋ねてみよう。

  ・茅の輪というもの。ちがやで編まれた輪。

  ・一年に二回、6月末の夏越の大祓と、12月末の年越の大祓の時に、神社に組まれる。

  ・くぐり方:茅の輪の前で礼をし、左足でまたいでくぐり、左回りに回って元の位置に戻る。 また礼をし、右足でまたいでくぐり、右回りに回って元の位置に戻る。 更に礼をし、左足でまたいでくぐり、左回りに回って元の位置に戻る。 最後に礼をし、左足でまたいでくぐり、ご神前に進む。 その時、祓え給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸(さきわ)え給へ、と唱える。


 これ、正式には茅の輪って言うのね、見た事無いなぁ。

 深緑のって聞くと、ママの二つ名を思い出すけど、さすがに関係無いわよね、あはは。

 でもこれ、ママに訊くと早そうじゃない?

 制服に着替えて階段を降りると、いつものようにママは朝の食事の準備中。

 「おはよー、ママ。 いきなりだけど、一つ訊いてもいい?」

 「火雷、おはよう。 ママに訊きたい事ってなあに?」

 「うん。 茅の輪ってどんなのか知ってる?」

 「もちろん知ってるわ。 月宮神社だと、年に2回ある大祓の時になると、鳥居の所に組まれるのよ。 溜まった穢れを払う、って言われてるわね」

 「穢れを、ねぇ。 例の絵日記帳にこれが載ってて、くぐり方も書いてたの。 ミツバチの八の字ダンスみたいで面白いなぁって」

 「ああ、そう言われれば動きが似てるわ。 お唱えする詞もあるのよ」

 「あ、それも書いてたわ。 はらえたまい……何とかみたいな」

 「はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ、ね。 詞の通り、穢れを払って、身を清め、自分を見守ってください、って神様にお願いするの」

 「そんな謂れがあるのね、茅の輪くぐりには。 ありがとう、ママ。 参考になったわ」

 さて、ママ特製の洋風モーニングでお腹を満たして、今日も一日、頑張るとしますか!

☆今回気を付けた点☆

ゆらの正体を開示しました。

クライマックスの展開を見据えて話を盛り上げられるよう、構成を考えます。

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