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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第6章 あのコの影を追いかけて

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57 深緑の舞姫、再始動

いつも読んでいただき、感謝です。

 その日の夜、こんな夢を見たの。


・・・・・・


 シャワシャワ~~って、遠くから風に運ばれて聞こえてくる滝の音、心地良い柔らかい日差し……お弁当をつまみながら、ひむちゃんとのお喋りで盛り上がったランチタイム。

 お腹一杯~、幸せ一杯~~。

 アゲアゲ気分で集合場所に戻った途端、お腹がギュルギュル……う、急に催してきた……。

 「あ、トイレ行ってくるね」

 私はお腹を抱えて小走りに駆けていくけど、ひむちゃんは付いてこない……そういう体調じゃないのね。

 トイレを済ませ、ホッと一息ついて周りを見渡しても、ひむちゃん、見付かんない。

 あ、きっと集合場所に戻ったんだね?

 そう思って、私も集合場所に駆けてみたけど、あれっ?! いない。

 もしかして、忘れ物を思い出して、取りにでも行ったのかな?

 暫くぼーっと休んでると、きゆりちゃんが、 「1年生、集合~~!!」 って声を張り上げた。

 すると、向こうの方にあるログハウスから、ひむちゃんが飛び出してきて、こっちへ駆けてくる。

 「ひむちゃん、あの建物に行ってたんだ。 あそこって、何かあるの?」

 「あ、あ、あそこ、ね。 昨日、お母さんから、ウサギのオブジェがあるから観に行くといいよ、って言われて……でも、見付からなかった。 ただの休憩所だったよ~~」

 ん? 何かどもってない? 声がうわずってない?? 変なの。

 「あはは、そっかぁ。 そりゃ残念だったね」

 ひむちゃんのママまでウサギフェチなの?!

 なるほど、ひむちゃんのウサギ好きはママの影響大、って事ね、あはは。


・・・・・・


 また、ゆらが出てこない夢……前回は明美さんだったけど、今回、私がなりきってるのって……。

 声質はそっくりそのままな私なんだけど、何かが違う……生き生きしてる、って言うのかな。

 場面は今日話題になった神尾渓谷ね。

 木柚梨が1年生に集合の号令を掛けてるとこからして、新入生歓迎登山での一コマなのは間違いないわ。

 そして、ひむちゃんこと日向がログハウスから出てきて、[私]からの問いかけに歯切れの悪そうな感じで答えてる。

 現実の日向は、この直後から体調を崩して言葉が出なくなった、って木柚梨は言ってたわね。

 でもこの夢では、何か隠し事をしてるっぽいけど、普通に喋ってる……一体何を暗示してるんだろう。


 土曜日、学校が終わって真っ直ぐ家に帰ってくると、ママが玄関の前に出てきてたの。

 よく見ると、ママの両耳にはポータブルプレイヤーのイヤホンが刺さってる。

 「ママ、ただいま~~」

 耳が塞がってるみたいだから、ちょっと大げさに身振り手振りを加えて挨拶してみたの。

 「ああ、火雷、おかえりなさい。 ……ダメね、ちょっと動きが固いわ」

 「あ、もしかして舞を練習してるの?」

 イヤホンを取りながら、ママは、 「そうよ。 音楽に合わせて動きを思い出してるんだけど、思うように身体が付いてこないわ。 衰えるものね」 なんて溜め息を吐いちゃって。

 「久し振りなんだから、感覚を取り戻す時間も必要なんじゃない? 動くうちに身体も慣れてくるわよ、きっと。 ところでママ、音楽ってどんなのを聴いてるの?」

 「ああ、聴いてみたいの? じゃぁ」

 ママがイヤホンを私の耳に付けて、音楽を再生してくれたの。

 これは雅楽ってやつね……何てゆったりした、優雅な響きなの。

 「この音楽に合わせて舞う、って事かぁ。 どんな楽器が使われてるの? これ」

 「えっと……琴、笛、篳篥(ひちりき)、太鼓ね。 あと、歌方さん」

 「独特な音色だわ。 ところで歌方さんって、何か唄ってるのは分かるんだけど、どんな歌詞なの?」

 「よくそこに気付いたわね。 [天地の 神にぞいのる 朝なぎの 海のことくに 波たたぬ世を] っていう和歌をものすご~~くゆっくりとそらんじてるのよ。 2回繰り返されるんだけど、1回目で扇を、2回目で鈴を持って舞うの」

 「そうなのね。 あまりに一言一言が長いから、和歌だとは全然気付けなかったわ。 ごめんねママ、練習の邪魔しちゃって」

 「ううん、それより火雷、時間があったら、私の舞うところを眺めてもらってもいい? 他人の目があれば、もっと緊張感を持って練習できそうだから」

 「それもそうね……分かったわ、一通り見させてもらうわ」

 私がそう言うと、ママは踏み台の上に鈴を丁寧に置いて、手には扇を持って、耳にイヤホンを付けてから、心を落ち着かせるかのように立ち上がって静止したの。

 そして、プレイヤーの再生ボタンを押すと、さっき聴かせてもらった音楽に合わせてるんだろう、ゆったりと流れるように舞い始めて……舞を観るのは初めてだけど、すぐに引き込まれちゃった……ママ、凄いわ!!


 「どうだった? まだまだイケてるかな?」

 「うん。 私、感動しちゃったわ。 さすが、元[深緑の舞姫]ね」

 「これっ、その二つ名を出さないの! もう、名前負けしちゃってるんだから」

 「そんな事無い、って思うんだけどなぁ。 それで、この動きを巫女さんたちに教えていくのよね?」

 「そうなの。 自分が舞うのと、他人に教えるのとでは難しさが全然違うのよね。 どう教えたら上手く伝えられるのか……それを模索するのがママの今後の課題ね」

 「教え方って難しいよね。 学校でもこの先生のはちょっと……なんて感じる事もよくあるし」

 「まぁ、火雷は手厳しいのね。 学校の先生って、同時に何十人も相手しながら教えなきゃいけないから難しいと思うわ。 一人ひとりきめ細かく、っていうのはなかなか……皆に当てはまる教え方を、ってなっちゃうもんね」

 「そっかぁ……他人に教えた経験が無い私には、文句なんて言う資格無いわね。 ママが教える巫女さんたちがみんな、完璧に舞をマスターできますように」

 「あらあら、ありがとう、火雷。 祈ってもらって、勇気をもらえた気がするわ。 月美ちゃんの期待に応えられるように頑張るわね」


 その夜、今度はゆらが出てくる夢を見たの。

 「ごめんねゆら、少し間が空いちゃったわ。 その分、期末試験は私なりに力を出し切れたと思うから、ま、期待しててよ」

 「ううん、ゆらのために時間を割いてくれてるだけでも嬉しいの。 試験の結果には自信があるのね。 準備する時間は短かったのに、手堅く段階を追って復習してたもんね」

 「ええ、それが私の勉強スタイルだからね。 一夜漬けでドーピングできないタイプなの、私」

 「日頃から少しずつ積み上げていく、ってタイプの人って、実力テストに強いのよね」

 「ねぇ、ゆら、貴女って一体どの立場から言ってるの? そんなに学生の性分を詳しく語れるなんて、親なの? それとも生徒なの??」

 「うーーん……分かんないけど、気分は生徒だよ」

 「気分は、って……ま、いいわ。 ところで明日、いよいよ日向さんに会えそうよ。 向こうの世界では絵日記帳の持ち主だし、何かしら得られるものはある、って思うの」

 「うん。 絵日記帳の世界と、こちらの世界……対応するそれぞれの人の生活環境は全然異なってるけど、特に日向は別人のような変わりようよね。 話を聴いてる限り、会話を交わす事は無理そうだけど、どんな様子なのかだけでも見られればね」

 「ええ。 まずは、どれほどの差分があるのかを、この目で確かめてみたいわ。 気負い過ぎないように臨む事にするよ」

 「それがいいね。 頑張ってね、火雷」

 「だから、頑張ってって言われると、気負い過ぎちゃうじゃないの」

 「あはは、それもそうか。 じゃぁ、ゆらは遠巻きに応援してるよ。 じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」


 ゆらと会話する夢を見たから、次の日の朝、絵日記帳をチェックしたんだけど、今回新しく現れたページは……[1)ほつき]って付けられたタイトルからしても意味不明なんだけど、問題はその中身。


 【コメント】

  ・神尾渓谷の休憩所で発見した。

  ・形は星形で、色は薄だいだい色で、ホログラムのように透き通ってる。

  ・名前は”ほつき”。 私が名付けた。

  ・時々歩いたり、瞬いたりするけど、喋らない。

  ・腕を伸ばして、私から離れてって願うと、身体から離れる。

 【考察】

  ・おそらく意思を持ってると思うし、言葉を理解できるとも思う。

  ・超常現象を見せたり、それらに触れる力を与えたり、私を透明化したりする力を持ってると思う。


 まず、目に飛び込んできたのは左上のイラスト……コメントにある通り、星形で薄だいだい色の、透明感のあるものが描かれてる。

 それが意志を持ってて、言葉も理解でき、超常現象を見せたり、遂には日向を透明化させる力まで持ってるんじゃないか、って考察してるんだけど……こんなのが現実にいていい訳がない。

 日向の空想だわこんなの、って考えようとしたんだけど、それを全否定するくらい破壊力がある一文が……それは一行目、神尾渓谷の休憩所で発見した、ってとこ。

 ん? ちょっと待って! そこって、こっちの世界では日向が言葉を失うきっかけになった場所だし、この前見た夢では日向がウサギのオブジェを観に行ったって言って立ち寄ってた場所……何だか無関係には思えない、きな臭いわね。

 これは一度、神尾渓谷のログハウスもあたってみる価値はありそうね。

 それにしても登山かぁ……こりゃ大変だなぁ。

第6話をリフレインさせました。

☆今回気を付けた点☆

いよいよ[ほつき]をキーワードに挙げました。

物語の収束を見据えながら話を展開していく段階に来ました。

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