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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第6章 あのコの影を追いかけて

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54 夢で見た景色を追って

いつも読んでいただき、感謝です。

 とにかく不思議な夢だったわ……見える景色、喋った事だけじゃなく、心の中の声まで、まるで私が明美さんになりきってたみたいで。

 明美さん視点、って言うのかな……だから、本人の顔が全く見れなかったのが残念だけど。

 家から三叉路へと向かう時の景色なんて、この前、明美さんの家に行く途中で見たのとほぼ同じだったし。

 その後、私の知らない道を抜けて神社に向かってたよね……あの景色通りなのか、今度歩いて確かめてみなくちゃ。 

 子供は授かれなかったけど、謎に包まれた幼子を宮司さんから託される……こんな突拍子もないストーリー、私の頭が現実を基に派生させて作った話なのか、それとも……。

 それと、幼子を[ひむか]って呼んでたけど……絵日記帳の主人公の[ひむちゃん]ってあだ名……もしかしてこの名前から来てるんじゃない?

 ひむか、かぁ……どっかで聞いたような……うーーん……思い出せないなぁ。

 それより一つ、重要な事に気付いたの。

 絵日記帳の世界を考えた時、明美さんがお母さん、ひむちゃんを持ち主、って推理したんだけど、この夢の話とまるっきり一致してるじゃない!!

 ひょっとしたらさっきの夢、絵日記帳の世界での出来事を見せられたんじゃ……って、そう考えるのはさすがにロマンあり過ぎよね。

 あと、宮司さんが[あづち]って名前なのも、重要な手掛かりになりそうだわ。

 夢で見た顔もしっかり記憶してるし、こっちの世界の宮司さんをそろそろ探ってみますか。


 今日は金曜日なんだけど、祝日だから学校は休み。

 一日フリーだし、この前、夢で見た参道が実際にあるのか、確かめるのには絶好のタイミングよね。

 昨日、パパにもママにも、三叉路は知ってるけど、その向こうがどうなってるのかは知らない、って言われちゃったし。

 ガゼボからちょっと明美さんの家寄りに歩いたところにある三叉路、ここから夢で見た映像通りに歩いてみたの。

 桜並木の小径を抜け、白い鳥居をくぐった先に果てしなく伸びる石段……信じられないくらい、ホントにそのまんまだったわ。

 石段を上りながら数えてみると、438段も……もう、何度も何度も息が切れそうになって。

 これをノンストップだなんて、夢の中の明美さん、超人だよ……。

 休憩所を挟んで377段の石段を下りきると、ようやく月宮神社に辿り着いたの。

 こんな所に繋がってたんだ、この参道……そりゃ皆、電車に乗ってくるわよ。 ふう~~。


 早速、宮司さんを探しながら境内を歩き回ってみたんだけど、全然擦れ違えなかったの。

 ここまで夢で見たのと同じ景色だと、宮司さんもきっとあの風貌だと思うんだけど……会った事すら無い人なのに、顔と名前は知ってるかも? なんて、変な感じ。


 この建物は社務所だよね、夢で見てるんだから。

 確信しつつ、ノックして中に入ると、そこに月美さんがいて、事務仕事をしてたの。

 「あ、月美さん、こんにちは。 あ、お仕事中に突然お邪魔してしまってすいませんっ!」

 タイミングが悪かったな、って感じて出ていこうとする私を、 「あら、貴女は火雷さん。 ようこそお参りくださいました。 いいのよ、わざわざここまで来られたんですから。 何か用事がおありなのかしら?」 って、月美さんは呼び止めたの。

 「あ、はい。 実は宮司さんを探してて……」

 「あら。 残念だけど、宮司はここにはいないのよ。 代わりに私がご用件を伺いましょうか?」

 「いえ。 変な話なんですけど、ちょっと前に変な夢を見て……。 明美さんが生きてて、あづちさんっていう宮司さんから、ひむかっていう幼子を引き取る、みたいな……私、宮司さんにお会いした事も無いのに夢に登場したのが気になって、実際にお会いしてみたいなって……」

 あれっ?! 月美さん、カッチカチに固まっちゃった?

 確かに私、変な話しちゃったけど……。

 「あ、あの……火雷さん、その夢の話、変は変なんだけど、びっくりしてるの。 確かに宮司は私の父で安土(あづち)っていう名前だわ。 でも、日向(ひむか)は……私の娘よ。 貴女に名前を出した事が無いのに言い当てるなんて……」 

 「不思議な夢だったんです。 まるで明美さんが観た事、話した事、感じた事を私に体験させてるような……明美さん視点だった、って言えばいいのかな」

 「明美視点、ねぇ……それこそ、彼女が亡くなったのは、貴女が生まれて間もない頃辺りだと思うんだけど……」

 「そうですよね……。 顔は見れなかったんですけど、夢の中の明美さん、声が若かったんです」

 「そう……面識も無い人が夢の中に出てくるなんて事、あるんですね……。 私が日向を身籠ってた頃に夫を不慮の事故で亡くしたんだけど、あの後、明美は何度も何度も私を励ましてくれて……それで悲しみのどん底から救われたの。 お産の後も自分の事のように喜んでくれてね」

 「ホントに強い絆で結ばれてたんですね、月美さんと明美さん。 そんな思いやりのある人がどうして……」

 「私にも明美を救う機会を与えて欲しかった……あの後、神様を恨んだりもしたわ、神職に就いてる身なのにね」

 月美さん、自分を責めながら過ごしてきたんだろうなぁ……何て辛い過去なの……。

 「あ、私、いつの間にか話を脱線させてしまってたわ。 宮司ですけど、先日、脳梗塞で倒れてしまったの。 手術を無事に終えて、今は病院に入院してるわ。 あまりに突然の事で……」

 「えっ! そうだったんですか、そんな大変な事が……脳梗塞って手術の後のリハビリが大変だって聞いた事があります。 どうか一日も早く、元の生活に戻れるくらいに元気になりますように」

 私、宮司さんの回復を心から祈ったの。

 「ありがとう、火雷さん。 遠くにいる父も励みになる事でしょう」

 宮司さんには会えなかったけど、あの夢で見た事の中にも、こちらの世界との共通点がある、って分かっただけでも収穫だわ。


 「すいません、さっきの話の続きなんですけど、娘さんは……」

 「ああ……日向は……」

 あれっ?! 月美さん、口ごもっちゃったよ。

 「あ、すいませんっ! 私、変な事訊いてしまいましたか?」

 「いえいえ、ちょっと貴女に尋ねたいんだけど、確か以前、古河高校の生徒さんって言ってましたね? 日向も3ヶ月間だけだったけど、去年まで同じ高校に通ってたのよ」

 「はい、って、あれっ?! 去年まで、3ヶ月間? ……もしかして、私と同じ学年だったって事ですか?! 失礼ですけど、小学校も中学校も古河町の、ですか?」

 「ええ、そうよ。 だって、古河町の人間ですもの」

 「信じられないわ……小、中、高……9年以上同じ学年なのに知らないって事、あるかしら……」

 「お喋りした事も無かったのかしら。 まぁ、日向は引っ込み思案な子だから……」

 「いえ、思い出せない私が悪いんです。 家に帰って卒業アルバム、開いてみます」

 「卒業アルバムならここにあるわ。 確かめてみる?」

 そう言うと、月美さんは奥の部屋に消えていったの。

 あまりにも衝撃的な事実を聞いてしまって、私、動揺してるわ。

 さっき、月美さんは最初の3ヶ月間だけって言ってたけど……どこか引っかかるのよね。

 新入生歓迎登山に参加したのを境に、喋れなくなってしまった子が隣のクラスにいた、って話を聞いたような……そんな事を考えてると、月美さんが2冊の卒業アルバムを抱えて戻ってきたの。

 「はい、どうぞ。 貴女のと同じものよね、このアルバム」

 「あ、はい、私のと同じです。 少しお借りします」

 まず、中学校の卒業アルバムをめくってみると、確かに日向って名前の子が載ってて、その顔は……。

 「わわわっ!!」

 「ど、どうしたの?! 急に素っ頓狂な声を上げて!」

 「あ、す、すいません!!」

 そりゃ、驚くわよ。 だって、髪型は随分違うけど、面長な整った顔を見ると、絵日記帳の最初のページに描かれてたイラストの女の子と瓜二つなんだもん。

 その後、両方のアルバムの、彼女が映ってる写真を見たんだけど、どれも笑顔で……こんなに身近にいたのに知らなかったなんて……。 

 「あ、そうだ! 同じクラスになった事があるか調べられるんだった」

 私たちのアルバムって、在学中のクラスの推移が表になって載せられてるんだけど、 「私と……日向さん……うーーん……う、嘘! 信じられないっ!!」 何と小中の9年間、一度も同じクラスになった事が無い……そんな偶然、あり得る?

 だって、2分の1が9回連続だよ? 単純計算したら512分の1の確率だよ?? 高校も入れたら……。

 「月美さん、9年間、日向さんとずーーっと違うクラスだったみたいで、それで……」

 「そうだったの……何て不運な巡り合わせ……そんな貴女を日向じゃなく私に引き合わせてくれた……これも何かの縁なのかしらね」

 そう言うと、月美さんは日向の事を話し始めたの。

 「あの日、登山から帰ってきたら、突然口が利けなくなってしまってたの。 それまでは不自由なく学校生活を送ってたし、一所懸命に家の事も手伝ってくれてたのに……一体日向の身に何が起こったのか、訊く事すらできなくて……」

 「私もその行事に参加しましたけど、特に気になる事は無かった……そういう子がいたって、後からうっすら聞いただけで……」

 「そうなの……。 そのうち元に戻るよね、って軽い気持ちでいたんだけど、2ヶ月ほどした頃には魂が抜けたように、あてもなく辺りを徘徊するようになって、学校に通わせるのも難しくなったの。 今は特別な病室で面倒を看てもらってるわ」

 「そんな辛い話をさせてしまうなんて……私、思ってもいませんでした……ごめんなさいっ!」

 「いえいえ、私が自分の意志で話した事ですから。 でも、さすがに疲れたわ。 少し休ませてもらうわね」

 「ホントにごめんなさいっ! お邪魔してしまいましたっ!!」

 慌ててしまって、おかしな言葉遣いになっちゃった。

 深々と頭を下げて謝って、社務所を後にしたの。

☆今回気を付けた点☆

安土と日向のこちらの世界での状況を開示しました。

火雷が日向を知らない理由付けがちょっと強引かもしれませんが(笑)

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