52 明美さんの記憶?[1]
いつも読んでいただき、感謝です。
今エピソードから、新章に突入です。
翌朝、目が覚めて真っ先に絵日記帳をチェックしたの。
表紙をめくった最初のページに、女の子のイラストがバーーンって増えたのには、思わず 「わわっ!!」 って、声を上げちゃったわ。
見開きで使えないページを有効利用したかったのか、絵画枠と日記枠をぶち抜いて描かれてるんだけど、この子、鼻筋が通ってるし、面長で、優しい目してる……顔立ちが整ってて、髪も手入れに時間掛けてるよね、って感じるほどの綺麗なセミロングのストレート……私が男子だったら、思わず二度見しちゃいそう。
衣装が少し大人びてるけど、バッチリ着こなしてる……大学生か、社会人デビューしたてくらいかしら。
タイトルは、[カヌーにあった衣装で身を包んだひむちゃん(ひいか画)]かぁ……この子、ひむちゃんってニックネームなんだ。
で、イラストは[向こうの世界の私]が描いてるのよね。
私と絵のセンスがほとんど一緒だから感じるんだけど、凄く感情がこもってるわ。
そうね……まるで、この子を心から慕ってるって感じの、真っ直ぐな気持ちが。
この子をニックネームで呼んでるみたいだし、共同作業もしてるんだから、実際、かなり親密な関係なのかもね。
そんな事を考えながらページを繰ってくと……あれっ?! 別のページも新しく開示されてて……二枚抜き? これは初めての展開ね。
タイトルは、[5)舟その2]……あぁ、3ページ目の追補版、ってとこかな。
【コメント】
・3ページ目に描いた舟を間近で観たもの。
・折り畳まれてる服は女性用で、上下の服の他、下着、靴まである。 汚れも無くて、凄く綺麗。
・白い封筒のようなものが置かれてる。
【考察】
・置かれてた衣装:下着とソックス、水色のボウタイブラウス、デニムのワイドパンツ、ローヒールのローファー、カーキー色のロングカーディガン。(絵は省略)
・手紙は私宛っぽい。 難題を乗り越えてよく辿り着いたね、とか、周りの人々に助けられてるのを忘れるな、とか、上から目線。 で、この衣装を身に付けて、カヌーで島へ渡れって。 然るべき時に、然るべき場所で、然るべき衣装で、然るべき所作をもって呼び出し、論破しなさい、だったかな。
☆然るべき、のところは、宮司さんに尋ねてみよう。
・手紙清書バージョン
この手紙を読んでいる、愛しい貴女へ
様々な難題を乗り越え、長い旅を経て、よくここまで辿り着きました
現世の貴女の立ち振る舞いを、心より褒め称えます
現世の貴女、決して、周りの人々の助力に支えられている事を忘れないでください
周りの人々の情の深さに背中を押され、今があるのです
貴女はその姿を、しっかりと目に焼き付けるのです
現世の貴女は、私が遺した衣装を身に付け、私が遺したカヌーを使って長森島へ渡り、
然るべき時に、然るべき場所で、然るべき衣装で、然るべき所作をもって、私を呼び出すのです
そして、今までに得た、貴女の数多の経験を武器に、私を論破するのです
私はそれを待ち望んでいるのです
・時は6月か12月の末日。 場所は奥宮の本殿内、衣装は千早を加えた衣装、所作は鉾先鈴を加えた採物を用いて浦安の舞を舞うのでは(ちかねさん談)
衣装の絵は省略、って書かれてるけど、一つ一つがさっきのイラストにきっちり一致してるわ。
って事は、さっきのページは後から付け加えられて、このページとセットみたいなもの、ってとこかな。
一通り手紙を読んではみたけど、全く意味が分かんない……これは一体何なの?
表面だけなぞって読んだら、町を舞台にした壮大なクイズラリーかなにかの一コマ、のように思えるけど……。
きっとゲームも終盤で、この手紙を見付けた[私]が、いよいよゲームマスターが待つ長森島に向かう……みたいな。
そして、最大の謎をちかねさんに解いてもらって、トークバトルに臨む……いやいや、自分でも分かってるわよ、そんな訳無いって、あはは。
ゲームにしては文章が重いし、単語のチョイスもちょくちょくおかしいもん。
そんな事より一つ、これを読んで私、気付いたの。
[私]宛っぽいこの手紙に、用意された衣装を着るよう指示があって、それを実際に[ひむちゃん]が身に付けてる……って事は、[私]イコール[ひむちゃん]で、しかも絵日記帳の持ち主でもあるんじゃないか、って。
これって、凄く大きな発見じゃない?
手紙の中身も気になるとこだけど、とりあえず今はそっとしといて、まずはひむちゃん探しからだわ。
あと、宮司さんにも当たってみないと……折角のゆらのアドバイスだもんね。
さっきのイラストを描き写して、持ち歩いてみる事にするわ。
早速翌日、学校で擦れ違う人たちの顔を片っ端から観察してみたの。
今までの傾向から見ても、この町に住んでる可能性が高いって踏んだから……年も近そうだしね。
でも、全然それっぽい人を見付けられなくて……人海戦術じゃ果てしないわ。
今日のところは、これ以上の捜索は断念ね。
その日の夜、今までのとは違った夢を見たの。
妙にリアルで……まるで、映画館のスクリーンで観てるような……。
・・・・・・
お日様と一緒に目を覚まし、顔を洗って目はパッチリ。
毛先までしっかり櫛で梳いて、軽くお化粧して、いつもの白色ワンピを着て、身支度もバッチリ。
玄関を飛び出し、緩い下り坂をタッタタッタと駆け降りていく……遠い東の空の向こうから、お日様がこの丘を明るく照らしていくこの時間が、私のお気に入りなの。
「ふぁ~~ぁ、この季節の朝の風って、爽やかで心地いいわ~~」
三叉路を左に曲がって、お日様が正面に来たら、今度はその光を追いかけるの。
桜並木に挟まれてるこの小径も、今はもう葉桜……ちょっと残念だなぁ。
小さな白い鳥居を抜けると、いよいよキツ~~い上りの石段地獄の始まり……最初は面食らったけど、もう慣れてへっちゃらよ……私も成長したなぁ。
ノンストップで上り切って、カッカと熱を持った両足を、靴を脱いでクールダウンさせながら、ベンチに座って水筒に入れてきた水を口に含むと、 「う~~ん、しっかり冷えてて美味しい~~」 これでリフレッシュもバッチリね。
今度は逆に下りの石段地獄なんだけど、ちょっと上りで張り切り過ぎちゃったかな……脚の筋肉に力が入りにくくて勝手に前へ前へ進んじゃう……こういうのが危ないのよね。
遥か向こうの水平線から耳に届いてくる潮騒を聞きながら、慌てないようにって心にセーブをかけるの。
下り切って大きな朱色の門をくぐり、二つの橋を超え、最後の下り石段を抜けると……岩窟の中にある御本殿に到着!!
これが、もう何年も続けてきた私の日課……暑い日も寒い日も、雨の降る日も風の吹く日も、一日も欠かさずこの神社をお参りしてきたの……それが、今の私の心の拠り所だから。
「今日もこうして無事にお参りができました。 心から感謝します。 平穏な一日が送れるよう、どうか見守っていてください」
いつものように、神様にありがとうって声に出して伝えて、御本殿を後にしようとしたら、 「おはようございます」 って、初老の男の人に声を掛けられたの。
今朝は誰とも擦れ違わなかったから、不意に話し掛けられてびっくりしちゃって、 「はいっ! おはようございます!」 なんて、声がついつい上擦っちゃったわ。
「あの……初めまして、ですよね」 って私が尋ねると、その人は、「私は幾度となくお姿を拝見していたのですが、お声掛けするのは初めてです。 私は当神社で宮司をしております、あづちと申します。 挨拶するのが唐突過ぎましたかね……失礼しました」 って、丁寧な口調で自己紹介されたの。
「いえ、私が油断してただけですから……宮司さんなんですね。 幾度となく、ですか? 私は全然……」
「ええ。 来る日も来る日も、貴女がここをお参りされる姿を、遠巻きながら拝見しておりました。 お百度参り、でしょうか?」
「うーーん……そんなようなものかな……って言っても、もう百度どころじゃなく通ってるんですけど」
しまった、こんな言い方しちゃったら、ちょっと意味深な感じに取られちゃうじゃない。
「何と熱心な……それは驚きです。 ここは子育てや子宝についてのご利益がある神社なのですが、その関係で願い続けている事がおありなのでしょうか?」
あはは……割と深入りしてくるなぁ、この人……でも彼の表情、誠実さが伝わってくるのよね。
柔らかいながらも、真剣な眼差し……神職に就いてるこの人になら、私の心の内を話してみるのもいいのかな……もしかしたら神様の思し召しかもしれないし。
「そうですねーー。それは当たらずも遠からず、ってところかな」
少し砕けた言葉になっちゃった……どうしてかな、この人、聞き上手なのかな。
相手が名乗ったんだから、私も自己紹介するのが礼儀よね。
「私は、ここから1時間ほど歩いた丘の上にある、一軒家に住んでる明美って言います」
本編の第1話をベースに書き上げました。
いよいよこの世界線で、火雷は日向を捉えていきます。




