47 廃墟の玄関前で、画家さんが……
いつも読んでいただき、感謝です。
その夜、ようやく夢を見れたの……こんなに見たいって願うなんて不思議だわ、自分でも。
「火雷、今回は凄く苦戦してたね……もう会えないんじゃないかってドキドキだったよ」
「私だって知恵を振り絞ってるのよ。 霧の中を手探りで歩くみたいな、先の見えない課題に立ち向かってるんだから、苦戦だってするわよ」
「ごめんなさい! 気に障る事を言っちゃったよね。 火雷は精一杯頑張ってるのに……。 ゆら、火雷が祈るってところがやっぱりポイントだ、って思うの。 失敗する時もあるって事は、相手とか、内容とか、何か別のポイントもあるんじゃないかな」
「私もそう考えてるんだけど……。 あ、この前ふと思って……ここまでで[ちかね]って人と[みづる]って人がこの世界にも存在してるって分かったんだけど、もしかすると私も……」
「絵日記帳はパラレルワールドの遺物だから、いるって考えるのが自然だと思う。 火雷と同じような人生を歩んでるとは限らないと思うけど」
「違う人生を歩んでるもう一人の私、って感じね。 絵日記帳に描かれてるイラストの美的感覚が、どうも私に似てる気がして……」
「そういう直感って大切だよ。 自分にしか分からない癖ってあると思うもん」
「だとすると、あの絵日記帳に、その世界線の私が噛んでる、って事になるのよね。 一体、何の目的で絵日記帳なんて書き始めたんだろう……しかも、誰かと共作で」
「その訳は、今のところ何も見えてこないよね。 もっと中身を解放できれば、もしかしたら新しい発見があるかも……って、希望的観測でしかないんだけど」
「ま、今は幾ら考えても分かりっこ無さそうね。 ねぇ、ゆら、何か他に思い出した事、無いの? 最初に言ってたよね、神様が与えた試練だとか、ゆらのママが過ちを犯したとか、かばったゆらも罰を受ける事になったとか、私を巻き込む事になったとか……あの時は訳分かんない変な夢だって、本気にしてなかったから聞き流したんだけど、そもそも過ちって何なの?」
「お母様は……人間を滅ぼした世界を、別次元へと切り離してしまおうとしたの」
「はーーっ?! それ、冗談で言ってない?! 信じられないわよ、そんな話!! ゆらのママって一体何者なの? 人間じゃないわ、そんな事が出来るなんて」
「えっと……神様……だったんだけど、元々は人間だったの。 でも、お母様がどんなだったっていう詳しい記憶はごっそり無くなってて思い出せないの」
「ママが神様って……ゆらの話、ぶっ飛び過ぎ! じゃぁ、ゆらも神様って事?」
「ううん、ゆらは人間、だったと思う……ごめん、ゆら自身の事も詳しく思い出せなくて……」
「はぁ……。 じゃぁ、ママをかばったってどういう事?」
「そんな過ちを犯したお母様を、罪や穢れを払う事で浄化して救おうとしたの。 悪行を無かった事にしようと……」
「はぁ……これ以上ゆらの話を聴いてると、余計頭が混乱しそうだわ。 ゆらとママにどんないきさつがあったのかを探れば道が開けるかも、って思ったんだけど……」
「ごめんなさい。 世界を無茶苦茶にしようとした罪を償わせる為に、お母様は神様から試練を与えられてるの。 ゆらも。 だから、それに関係する記憶だけは残されてるんだって思う」
「ま、それはそうとして、じゃぁ何で、私にゆらたちの運命が委ねられるわけ?」
「そこは分からないけど、ゆら自身の力ではどうにも出来ない、っていうのが試練なんだと思う」
「なるほど……もし私が途中で投げ出したり、ゆらを見捨てたりしても、それも裁きの結果、って訳ね」
「そうなの。 それでもゆらは、神様が慈悲深くチャンスを与えてくれたんだ、って思ってるの」
「ま、ここまで粘ったんだから、これからもゆらの為に突き進むわよ。 終わりが見えないけど、ちょっとずつでもゴールに近付いていってるっしょ……根気強さなら自信、あるんだから」
「ありがとう、火雷。 ゆらを見捨てないで! お願い!! ぐずん……」
「あ、あーーっ、泣かないでよ、もう……私もこの体験で何か得られる事があるかも、って前向きに取り組んでるんだから」
「ぐずん……うん……。 今夜は沢山お喋りしちゃった。 これ以上火雷を捕まえたら疲れちゃうよね……じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」
次の朝、いつもより随分早く目が覚めちゃった……どんなページが解放されたのかが気になっちゃって。
今回のタイトルは、[2)ウサギのぬいぐるみ]?! 突然ぬいぐるみって、一体どうしたの?
【コメント】
・お母さんの書斎の片隅に置かれてて、動かない。
・全体的に白くて、眼は赤くて、1メートルくらいある。
・後足で立ち、前足をひょいと前に突き出してる。
・手作り感があるような?
【考察】
・月宮神社にある撫でウサギにそっくり。(ひいか記)
・今は私の勉強部屋に運んでる。
・何かしらお母さんも月宮神社に関係してたんじゃないかな?
☆今度、島に行く時には持って行こう!
ちょ、ちょっと待って!! [ひいか記]ってマジ?!
確かにこの行だけ筆跡が違う……私のクセ字、そっくりじゃない!!
これで、この絵日記帳の世界線にも私が存在してるって事は確信したけど、何で平仮名で名前書いてるの?
私の記憶だと、小学校に入る頃には[火雷]って、漢字で名前書いてたはずよ。
でも、あのイラストのクオリティ……幼稚園の頃だと到底描けないし……この世界線の私って一体何歳なの?
それと、この絵日記帳の持ち主の[私]とは、一体どういう間柄なんだろう。
[私]は勉強部屋を与えられるくらいだから、大人じゃないって事は確定だろうけど、ぬいぐるみなんて動かなくて当たり前なのにわざわざ書いてる……こっちも全く年齢が掴めないわ。
あと、相当大きいよ、このぬいぐるみ……それを島に持って行くって、目的は何??
ツッコミどころが多過ぎて、まともに頭が働かないけど、キーワードは撫でウサギと見たわ。
次はそこを探りに行ってみますか。
そんな事を考えてると、外が凄く騒がしくなったの。
これって、パトカーのサイレンの音よね?
この周辺って私たちしか住んでないのに、一体何があったの?
ママが玄関を飛び出して行った後を私も追うと、ガゼボの辺りにパトカーが3台停まってて、廃墟のある方へ警官が小走りに向かっていくのが見えたの。
「あの……向こうで何かあったんですか?」 ってママが尋ねると、 「貴女は近所の方ですか? 向こうへの道は封鎖しますから、近付かないでください」 って警官が答えたの。
封鎖? 廃墟の辺で何か事件でもあったのかな?
「あの、警官さん……私、昨日、そっちに行ったばっかなんですけど……」
それを聞いた警官は厳しい表情になって、 「えっ?! お嬢さん、今、向こうに行ったって言いましたか? ちょっとそこで待っていてください」 って私に言うと、無線で誰かと連絡を取り始めたの。
「火雷、あそこに何しに行ったの?」
「そこのガゼボに、前に棗海岸で出会った画家さんが座ってて、気になって声掛けたら、その先の家に用事があるって言うから、一緒に付き添っていったの」
「そうだったの……もう十何年も廃墟のままなのに、一体何の用事で……」
ママとそんな話をしてると、警官が私たちの横に立って、 「昨日、その男性と一緒にいた、という事ですか。 お嬢さん、その話、もっと詳しく聞かせてもらえますか。 確認したい事もありますので、少しご同行願います」 って言いながら私の背中を軽く押して、廃墟へ一緒に行くよう促されたの。
ママが声を荒げて、 「え、えーーーーっ!! ちょ、ちょっと待ってください!! 一体この先で何があったって言うんですか?」 って尋ねると、 「この先にある廃屋の玄関近くで、首を吊って自ら命を絶った男性を、墓参りに来た女性が発見したのです。 お嬢さんが言う通り、亡くなったのは画家なのです」 って警官が冷静に説明を加えたの。
「え、えーーっ?! あの画家さんが! そんな、そんな……」
昨日、そんな素振りなんて全く見せてなかったのに……何で……何でなの!!
「すいません、お母様。 昨日の状況について、お嬢さんから詳しくお話を伺いたいのです。 いえ、ただの情報収集ですから、心配は無用です」
「あ……はい……」 ママは廃墟の方へと警官に連れていかれる私を、その場に立ち尽くして見守るのが精一杯……あーーあ、大変な事に巻き込まれちゃったなぁ。
☆今回気を付けた点☆
ゆらの記憶が残されてるところ、消されてるところの設定に苦慮しました。
警官の言葉遣いも、慣れてなくて苦戦しました。
追記:矛盾点を改善しました('26/9/3)




