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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第5章 異なる世界線での、私と絵日記帳

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45/67

45 棗海岸で出会えなかった選手さん

いつも読んでいただき、感謝です。

 その夜、夢の中で、ゆらが嬉々とした声で、 「ねぇねぇ火雷、ゆら、ちょっと気付いた事があるんだけど」 って言うの。

 「へぇ~~、興味あるわね。 一体何に気付いたの?」

 「ゆらと出会ってから火雷、3回出掛けたよね。 棗海岸に、長森島に、月宮神社……それぞれの場所で神様に祈ってたよね?」

 思い返してみる……最初は画家さん、次とその次はねぎさん……。

 「ああ、そう言われればそうね。 でも、祈ったって言ったって、今日みたいにちゃんとお参りして手を合わせたのもあれば、会話の中で軽くってのもあったわ……共通点にするにはちょっと弱くない?」

 「うーーん……それはそうだけどぉ。 でも、今後は[祈るシチュエーション]を意識して行動してみたらどうかなって」

 「まぁ、攻略ポイントの一つとして意識してみるわ。 何か方針があった方が良いだろうしね」


 明くる朝、絵日記帳に新しく、3ページ目が浮かび上がってたの。

 [3)舟] っていうタイトル……そう言えば、カヌーと手紙って単語が前に出てきてたけど、それと関係ありそうね。

 【コメント】

  ・月宮神社の崖下、平らな岩の上に乗り上げてる。

  ・大きさは5mくらい? 船体は木目調。

  ・中に舟を漕ぐための棒がある。 片方の端だけ太い。

  ・服みたいなのも畳まれて置かれてる。

 【考察】

  ・この舟はカナディアンカヌーだって事が分かった。(棗海岸で、みづるさん談)

 今回も舞台は月宮神社かぁ……しかも、あの洞穴の近くっぽいわね。

 あの場所に近付くなんて、私とセンス、似てるんじゃない?

 それにしても、あんな所にカヌーなんて泊めておく意味、あるのかしら。

 神社の周りを見回るため? ま、考えてみたところで、推測になっちゃうだけか。 

 服に関しては情報無しね……今回のカヌーみたいに、後で他のページから何らかの情報をゲットできるかもしれないし、取り敢えずスルーするとして、一番気になるのは[みづる]っていう人物ね。

 この前、棗海岸に行った時、カッター訓練してる団体を見掛けたけど、あそこにいるのかしら。

 明日、アタックしてみますか。


 この日、学校で中間テストの結果発表があったの。

 成績が出揃った時、全科目の合計点と順位が発表されるんだけど、今回も私は72人中3位……もう指定席みたいなものね。

 智子と、隣のクラスの紀洋君……この二人にはどうしても勝てないの。

 智子はがっつり勉強して、質問もガシガシ先生にするタイプだから納得できるんだけど、紀洋君なんて授業は聴いてる風だけどノート取らないし、挙手もしないし……先生に質問なんてしてるとこ見た事ないし……もしかして、聴くだけで頭に入る天才タイプなのかしら。

 「試験勉強頑張るから、期末テストで彼に勝てますように」 って、神様に祈ってみるかな。

 こんなよこしまな祈りで新しいページが開示されちゃったら、逆に戸惑うけど、あはは。


 その夜、勉強部屋で、絵日記帳に描かれてる小道具の絵と、それを真似て私が描いた絵とを見比べてみたの。

 絵日記帳の左上枠に描かれてるイラスト、どうも私と同じ絵の感性を感じるんだよなぁ。

 ちかねさん? っていう絵日記帳の中の人物が同じ場所に存在してたんだから、他の人物だって……まさかね。

 そこは明日、みづるさん? って人も見付けてしまったら、考える事にするか。

 そんな事を考えてたら、部屋にママが入ってきたの。

 「火雷、ご飯の用意が出来たわよ。 あら、その絵は採物ね」

 えっ?! ママ、ズバッと当ててきたんだけど。

 「私はこんなの知らないんだけど、そうらしいの。 絵日記帳に描かれてるイラストを、誰かに見せるのに使おうって思って描き写してみたんだけど……ママ、よくそんな言葉、知ってるね」

 私がそう言うと、ママ、突然意味深な事を言い出したの。

 「他人には話さない秘めた過去、って事にしてるんだけど、ここだけの話にするって、約束してくれる?」

 「う、うん。 約束するよ」

 ごくり……秘密の過去なんて前置きされたら、聴くの、緊張する~~。

 「実はママ、結婚する前に月宮神社で巫女をしてた事があるのよ。 舞を舞った事もあるし」

 こりゃ、衝撃的な事実を聞いてしまったわ。

 「ママが巫女?! 全く初耳だわ。 その割には私が神社に行くって言い出しても、冷静に聞き流してたじゃない」

 「言ったでしょ? 秘めた過去にしてるって。 それは置いといて、その絵、ママは分かるわよ」

 「この前、月宮神社でねぎさんから簡単には聴いたんだけど、これって浦安舞っていうのを踊る時に使うんだってね」

 「へぇ~~、月美ちゃんに会ったのね~~。 ママの良く知った人よ。 もう随分と会ってないんだけどね」

 えっ、ちゃん付けするほどの仲なの?!

 人とのめぐり逢いって、どこでどう繋がるか分かんないもんね。

 「随分って、結婚前以来って事? だったら20年近くだよ?」

 「そうね。 月美ちゃん、あの当時はまだ小さくて……中学生だったの。 あの頃はお父様のお勤めを子供ながらに一所懸命に手伝って、忙しそうだったわ。 手が空いた合間を見計らって、お話したものよ」

 「そんな小さな頃から……そうだったんだ。 この前、長森島で偶然出会ってお話ししたのって、月美さんなの。 昨日は神社でもお会いしたし」

 「あら、親子揃って縁があるなんて……面白いわね、めぐり逢いって。 元気そうにしてるなら良かったわ。 あ、また話を脱線させちゃった……ホントにもう。 その特徴的な鈴あるでしょ? それは鉾先鈴っていって、他の舞には使わない、浦安舞専用のものなの」

 「あ、それ、絵日記帳に書いてあったわ。 あと、三種の神器が象られてて、神からそれらを借りて舞うっていう神聖な意味が込められているらしい、ってのも書いてたかな」

 私がそう言うと、ママの顔がマジになったの。

 「へぇ、それは自分で調べた訳じゃなさそうね。 絵日記帳にそう書いてあったのよね。 見ず知らずの世界の話なのに、そこまで詳しいなんて……絵日記帳があるって話、ママは信じる事にするわ」

 「ありがとう、ママ。 やっと本当に信じてもらえた!」

 「ええ。 ママに協力出来る事があれば手伝ってあげるわ。 巫女に関する事なら、一度は訊いてみて」

 「うん、頼りにするよ」

 これは大きな収穫だよ。

 「ママ、一つだけいい? 月美さんにだけは、ママの娘だって事、話してもいいよね?」

 「そうね、火雷が勝ち取った縁だし、天の声かもしれないわね。 いいわ、月美ちゃんに会ったら、よろしく言っておいてね」


 さすがにこの日は夢を見なかった……あんな取って付けたような祈りじゃダメだよね、あはは。


 翌日、土曜日で学校は半日。

 予定通り、もう一度棗海岸へ向かってみたの。

 今回は目的が決まってるからね。

 カッター訓練してるグループの方へ、真っ直ぐ向かっていったんだけど、さすがに何事かと思ったのか、一斉に作業の手を止めて私の動きを眺めてるの。

 「あのーーすいませーーん、ここにみづるさんって方、いらっしゃいますか?」

 私の問い掛けに答える者は誰もいなかった……完全に怪しまれてるよね。

 「高校で、カッターについての自由研究をしてるんですけど、ここで練習してるみづるさんって人に訊いたらどう、って先生に教えてもらって……」

 現実と噛み合わなかったら大変だぞ、って思いながら、口から出まかせでそんな事を言ってしまったの。

 当然、無視されてしまった……こりゃ、作戦失敗ね。

 退散しようと駅に向かって1分ほど歩いた頃、後ろから小走りに近付いてくる足音が聞こえてきたの。

 足を止めると、 「ちょっと待って!」 って、女性の声が背中から飛んできて。

 「はぁ、はぁ……貴女、水鶴(みづる)に何か用があるの? あんなでたらめな事言っちゃ、ただの怪しい子としか思われないわ」

 後ろを振り向くと、全身こんがり日焼けした、如何にもマリンスポーツやってますって感じの女性が立ってたの。

 長い髪は日焼けしてナチュラルな茶髪で、年は……海愛姉と同じくらい、5~6才くらい上かな、って感じのお姉さん。

 「すいません、大嘘ついちゃって。 訳あって探してるんです、みづるさんって人を。 ここにいるかも、って事しか分からなくて……」

 「そこまでして探してるんだ……訳は訊かない方が良さそうね。 ただ、私も見ず知らずの子にペラペラ喋る訳にもいかないもんだから」

 ここまでの話の流れだと、最後まで無視するのが普通なはずなのに、どうしてこの人は追いかけてきてくれたんだろう。

 「ホントにごめんなさい。 誰かの遺したノートにみづるさんとカヌーの事が書いてあって……それを調べようとしてたんです」

 「誰かの遺したノート? 意味は分からないけど、貴女の顔を見てると、こっちは口から出まかせって感じじゃ無さそうね。 じゃぁ、ちょっとだけ。 水鶴はカヌーじゃなくて、今は国体でカッター競技に臨んでるわ。 ま、私たちのエースね」

 「そうなんですか! 国体選手だなんて、ガチで凄いです! 私、憧れます!!」

 「あはは、見ず知らずの子に応援されるなんて、嬉しいじゃない。 気合いが入るっていうもんだわ」

 「きっかけはこんなだけど、知ったからには応援します。 優秀な戦績で、願わくば優勝できるよう、神様に祈ってます」

 私は女性の前で目を閉じ、手を組んで、心から祈ったの。

 「ありがとう、女子高生さん。 その祈り、凄く力になるわ。 いい結果を出すから、注目しててよ」

 「はい、遠い空の下での活躍、祈ってますから」

 私はそう言って頭を深く下げ、駅に向かって歩き出したの。

 背中をずっと見詰められてる……そう感じながら。

☆今回気を付けた点☆

敢えて正体を明かしてませんが、棗海岸で火雷を追って走ってきた人は誰なんでしょうね(笑)

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