44 神社で出会えなかった巫女さん
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その夜、夢にゆらは……現れてくれた。
「また会えたね~~。 火雷が張り切ってくれてるからこうして……ゆら、嬉しいよ~~」
そんな屈託のない嬉々とした声で喜ばれたら、私、続けていくしかないじゃない。
「張り切って、ってほどでもないんだけど……ま、私もゆらに会えて、ホッとするって言うか……嬉しいかな。 今回も謎解きに勝てた! って誇れるし」
「えーーっ、ゆらよりも謎解きなの~~?! なんて拗ねたいところだけど、課題クリアあっての再会だから、これからも応援するよ」
「課題クリア、かぁ……結局今回も、行き当たりばったりで行動しただけで、どこがチェックポイントだったのか分からずじまいなんだから。 運が良かっただけよ」
「何を目指せばいいか分からないまま……そうよね。 絵描きさんも、禰宜さんも、絵日記帳には登場してないし、逆に登場してる宮司さんには会ってないのにクリアできた……もしかすると、会う人は条件になってないんじゃないかなぁ」
「うーーん……確かに。 とすると、他に何を意識すれば良いって、ゆらは考える?」
「えっと、例えば……場所とか、時間とか、行動とか……他に条件になりそうな共通点を探す、ってところかな?」
「もっと視野を広く持ってみて、って言いたいのね? 分かったわ。 幾つか課題をこなしたら、それらに共通点があるかどうか、一緒に検討してみましょ」
「うん、ゆらも頑張って考えるよ。 じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」
翌日、目覚めてすぐに絵日記帳をチェックしてみると、開示されたのは……9ページ目?!
えーーっ!! 少なくみても、あと7問は悪戦苦闘しなきゃいけないって事?!
もうこれ以上、後ろにページ広げるの、止めて~~。
タイトルは、 [9)小道具] かぁ……って、あれっ?! 今回の2つのイラスト、今までのとパターンが違うわ。
今までは、2つの絵の間に差を感じなかったのに、今回のは、左の絵はかなり絵を描き慣れてるタッチだけど、右のはほぼ素人……同じようなものを描いてるのに、全然スケッチレベルが違う!!
これは一体、何を意味してるの?
もしかしてこの絵日記帳、二人の人物の共作って事かな? ……そんなの、聞いた事無いんだけど。
【コメント】には、
・奥宮の本殿の中にある。
・台座の上にかんざし、扇、鈴、冊子が置かれてる。
・かんざしは花が象られてて凄く豪華。
・鈴は剣みたいな形をしてて、五色の紐が付いてる。
・冊子は”おおはらえのことば”っていうタイトルが付いてる。 振り仮名付きだけど難しそう。
【考察】には、
☆今度、宮司さんに尋ねてみよう。ちかねさんにも。
・巫女舞で使う《とりもの》というものらしい。(宮司さん談)
・浦安舞という舞を舞うためのもの。
浦は”こころ”を、安は”安らぎ”を意味し、平和を願う為に作られた舞で、夏越の大祓でも舞う事が多いらしい。
・鈴は鉾先鈴。三種の神器が象られてて、神からそれらを借りて舞うという神聖な意味が込められているらしい。
・《おおはらえのことば》は、大祓で犯した罪や穢れを祓うために唱えられる祝詞らしい。
・大祓詞をお唱えするのは、参拝の時か、舞う前にひもろぎの前でかな。(ちかねさん談)
・とりものの扱い方はちかねさんに、おおはらえのことばの唱え方は宮司さんに教わった。
今回は情報量多いなぁ……この前観た長森島に実際に行ってみた、ってとこかな。
それにしても持ち主さん、年齢が全く掴めないわ……これだけ詳しく巫女さんの小道具っぽいものを挙げてるって事は、バイトで巫女をしてる人??
奥宮の本殿で見たものを、宮司さんやちかねさん? に訊いてレッスンを受けた、って感じだけど…… 巫女さんになる研修を受けた時のメモ書きなのかな。
となると、大学生かもしれないけど……大学生で絵日記、書く??
ちかねさんっていう人物、文面からすると、巫女さんっぽいよね。
絵日記帳の世界と、こっちの世界、同じ人がいるか分かんないけど、神社に行って確かめてみるしかないか。
今回は予め、策を練ってみたの。
今までの2つはただの風景画だったけど、今回、左上の絵画枠に描かれてるイラストは、私の知らない小道具……それをスケッチブックになるべく忠実に描き写して、言葉より視覚に訴えて聞き込んでみよう、って作戦。
その作業をしてる途中、何度も手が止まったの。
このイラスト、描くセンス、私に似てない? って……感性の似た人もいるもんだね。
それは置いといて、宮司さんやちかねさん? に教わったって言うんだから、その人たちを探してみますか。
木曜日の放課後、学校から直で、電車に乗って月宮神社へ向かったの。
スタートが遅いから、着くなり早速聞き込みに取り掛かってみる。
参道をすたすたと軽やかに歩いてる巫女さんを捕まえて、 「あの……突然すいません……ちかねさん? っていう人を探してるんですけど……」 って尋ねてみると、 「よ、ようこそお参りくださいました。 茅金の知り合いの方ですか? あいにく、今日はここにはいませんよ。 プライベートな事なのでこれ以上は……すいません、急いでますので、失礼しますっ」 って言って、そそくさと去って行っちゃったの。
「失礼しましたーー」
彼女の背中に向かって声を掛けつつ、内心はにっこり。
ここで働いてるって事、探れたからね。
さっきはどう見ても忙しそうにしてる人を捕まえちゃったのが失敗だったかな。
今度はゆったりした動きをしてる人を……って思いつつ見渡すと、紫色の袴を着た巫女さんの後ろ姿を発見!
早速、声を掛けてみるとしますか。
「あの……突然すいません……ちかねさん? っていう人を探してるんですけど……」
振り向いた人を見てびっくり……。
「えっ?! 今、後ろから呼び止めたのは貴女? ……って、ああ!! 先日、夫の墓の前でお会いした……」
「あ、驚かせてしまい、失礼しましたっ! はい、あの時にお話しさせていただいた火雷です。 ここで貴女に会うなんて思ってなくて……」
「そうそう、火雷さんね。 ようこそお参りくださいました。 あの時言った通り、私はこの神社の禰宜をしてるのですから、ここにいても不思議は無いでしょ?」
「あ、そうなんですけど、この広い境内で偶然に出会うとは思いもしませんでした」
「うふふ、私、お勤めで結構動き回るものですから。 ところで、茅金を探してる、って言いましたか?」
「あ、はい……ちかねさん? っていう人が、このイラストについて詳しいって聞いて……」
顔すら知らない人だから、どうしても訊き方が手探りになっちゃうんだよね。
「茅金の知り合いなのですか。 なら、ご存じかもしれませんが、今、学業が忙しいとの事で、長らく巫女をお休みしてるのです。 国家試験を受けるためとか」
あはは、何だか沢山、情報を引き出せたよ、ラッキー。
「あ、そうでしたか……それは残念です。 そこまで深い顔馴染みじゃないんですけど……」
「先ほど、イラストについて茅金に尋ねようとしてた、って言われましたけど、差し支えなければ、ちょっと私に見せてください。 神社に関わるものなら何か分かるかもしれません。 先日、貴女の自由研究に協力する、って約束したばかりですし」
「あ、そうですね! じゃぁ、お言葉に甘えて……。 このイラストが何で、どう取り扱うものなのか、ご存じでしょうか?」
「これらのものは浦安舞に用いる採物ね。 貴女は巫女が舞うところを観た事はありますか?」
「いえ、まだ一度も……」
「そう……。 イベントで舞う事もあるから。 取り扱い方は実際に観てみる方が早いと思うわ」
「はい、自由研究の参考にするため、是非見てみたいと思います。 それと、この大祓詞? って何ですか?」
「それは罪や穢れを祓うために唱えられる祝詞ね。 参拝者によってはご本殿を前にしてお唱えする方もいらっしゃいます」
大体、絵日記帳に書いてあった通りみたいね、今度は。
「ありがとうございます、参考になりました」
「いえいえ、また調べ物がある時は声を掛けてくださいね。 あ、それと……今度声を掛ける時は、正面からでお願いします」
「あはは……先ほどはすいませんでした。 その時はまたよろしくお願いします」
今日のところは時間も遅いし、ここで切り上げるとしますか。
折角、ここまで来た事だし、ご本殿をお参りしてから帰ろっかな。
作法はこの前やったのを思い出して……ま、細かいとこは神様に目を瞑ってもらおう。
お願いは、そうね……ちかねさんが無事、国家試験に合格しますように、って。
どんな人なのかも知らないのに……今頃、くしゃみしてるんじゃないかな、あはは。
☆今回気を付けた点☆
この世界線では火雷と茅金は出会わないって事にしました。
シナリオに変化を付ける意味で、その方が良いかなって。




