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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第5章 異なる世界線での、私と絵日記帳

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42/68

42 棗海岸で出会った絵描きさん

いつも読んでいただき、感謝です。

 明くる朝、目が覚めて起き上がると、夢の中での戯言(ざれごと)だとは思いつつ、絵日記帳をめくってみたの。

 すると……中途半端なページに、イラストと文字が浮かび上がってるじゃない!

 当たり前なんだけどこの絵日記帳、ページの上半分がイラスト用、下半分が日記用に仕切られてる。

 面白いのは、このノートの持ち主は見開きでこれを使ってるとこ。

 左上と右上のイラスト枠には、同じような海から見た島の絵が並べて描かれてる……意図が全く分かんない。

 タイトルは、 [4)島]。

 って事は……少なくとも、1)から3)っていうのもある、って事よね?

 右下の日記枠には 【コメント】 と題して、箇条書きがなされてる。

  ・棗海岸から1kmくらい向こうの海にある。

  ・島のほとんどは山になってる。 稜線はゆったりした三角形?

  ・深い森が山肌を覆ってる。 道とか建物とかは見えない。

  ・海に面してる所は、砂浜が広がってるように見える。

 棗海岸の沖に見える島って言えば当然、長森島よね。

 小学生が遠足に行って書き残した日記なのかしら。

 そして、左下の日記枠には 【考察】 と題して、一行だけ、

  ・桜島みたい?(お母さん談)⇒絵葉書を見せてもらったら、本当にそっくりだった。

 って書かれてる。

 持ち主さんはお母さんから、桜島もこんな感じなんだよって教えてもらった、って訳ね。

 でも、ちょっと引っかかったのは、小学生が[稜線]なんて言葉、使うかなぁ、ってとこ。

 持ち主はもっと大きな子なのかなぁ……これと同じアングルになる場所を今度、探しに行ってみるか。


 今日から11月……秋真っ盛り! って感じの、雲一つ無い空が広がってる木曜日。

 学校は半日だし、この天気だから、放課後、電車に乗って棗海岸に向かってみたの。

 絵日記帳のイラストと同じようなアングルを探してみると、波打ち際にまで来てたわ。

 3日前に神社からこの長森島をスケッチしたばっかだけど、角度が違えば、随分山の姿形も変わるもんだね……こっからの方が、より間近で迫力満点! ま、時間を割いてここまで来た甲斐はあったかな。

 改めて見渡すと、カッター訓練をしてる団体や、砂浜をウオーキングしてる老夫婦や親子、そして、ベンチに座ってスケッチに勤しんでる男性もいる。

 パパより年齢的には若そうなんだけど……何だろう、少しやつれて見えるような……折角だから、ちょっと挨拶でもしてみよっかな。

 「こんにちはーー。 あの~~、スケッチされてるんですね。 長森島の遠景を描いてるんですか?」

 「ええ、そうです。 ここからだと、砂浜の白、海の青、山の緑、それに夕陽が射し始めると、更に赤も入る……コントラストが入り混じって、複雑な表情の絵が描けそうだから」

 そう答えると、パーーッと表情が明るくなった……この人、こよなく絵を愛する人っぽいね。

 「それぞれの色がぶつかり合う境界をどう描くか……腕の見せ所ですね」

 「ほぉ、貴女も絵を描くのが好きなんですね? 話しぶりからそう感じられます」

 「ま、趣味程度なんですけど、学校ではそれなりの評価を受けてます。 ところで、ここに描かれてる女性は……」

 ラフ画を横から見せてもらって、気になったのがそこ。

 この辺りには、それに当てはまるような若い女性の姿が見えないもんだから。

 「あ、遠い昔の想い出のひとを、海岸に立たせてみたんです。 秋の夕暮れ時にこのベンチに来ると、ついつい思い出しちゃってね」

 「心の中に当時の姿のまま生き続けてるんですね、そのひと……素敵です。 センチメンタルなテイストも加わって、彩に深みが出そうです」

 「そうなると良いんですけど……こうして貴女と話してると、あの頃の情景が脳裏に蘇ってきそうで……あのひともそんな感じで、ベンチに座って、絵を描く私に色々と話し掛けてくれたものですから」

 「そうですか、今も色褪せない想い出なんですね。 今、そのひとはどうされてるんでしょうね」

 「もう十数年会ってません。 今も丘の上の一軒家に住んでるとは思いますが……今となってはもう、近付けないのです」

 この話の展開、間違いなくバッドエンドね……これ以上深入りしない方が無難だわ。

 「そうですか……色々と事情があるみたいですね。 じゃぁ、同じスケッチ仲間として、貴方が良い絵を仕上げられますよう、祈ってます」

 この場合の祈りって、やっぱ神様にしてるんだろうなぁ……意識してみると、結構神様を当てにしてたりするわ、私。

 「こちらこそ、楽しい時間をありがとう、お嬢さん。 また何処かで会えると良いですね、スケッチ仲間として」

 その人は確かに微笑んでるんだけど、どこか憂いを帯びてるような……心の底からじゃないな、って私は感じたの。


 その夜、夢にこの前と同じ青白い光を放つ人魂ちゃんが現れたの。

 「また夢で逢ったわね。 貴女って再現性があるの? 不思議と貴女の夢って、次の日になっても忘れてくれないの。 不思議だわ」

 夢なんて大体、朝起きたら内容なんて忘れるもんだけどなぁ。

 「私とまた逢ってくれて嬉しいよ。 って言っても、火雷が逢いたいって願ってる訳じゃないのが伝わってきて残念なんだけど」

 「ま、別に貴女を嫌ってはないし、夢の中でもこうして会話が成り立ってるんだから、歓迎はするわ。 前に貴女、言ってたよね、呼び方は私が決めていいって。 炎みたいにゆらゆらしてるから、[ゆら]って名前でどう?」

 「ゆら……うん、女の子っぽい名前でいい感じだよ。 分かった、私はゆらって名前になるよ」

 「女の子っぽいのを好むなんて、ゆらは女の子なの? 声もそれっぽいし」

 「うん。 って言っても、この姿じゃ分かりにくいと思うけど……」

 「まぁね。 じゃぁ、同性って意識でこれからは話すわね。 ところでゆら、この前の夢と連続性があるように思えるんだけど、記憶も積み重なってたりするの?」

 「うん、この前のもしっかり覚えてるよ。 ゆらは火雷の心の中に棲み付いて活動できる生命体みたいなものかな。 火雷に共存してるって感じなの」

 こりゃまた、突飛な設定だこと。

 「私の心の中に紛れ込んでるって言うの? って事は、普段の私の行動も観てるってわけ?」

 「うん。 でも、こうして話せるのは夢の中でだけなの。 しかも、火雷が何らかの条件を満たした時だけ……寂しいなぁ」

 「ゆらが好き勝手に私の夢に登場してる、って訳じゃないのかぁ……こうして現れるには、何らかの課題が私のアクションに設定されてて、今回はたまたまクリアできてた、って言うのね」

 「うん、そうみたい。 ゆらにはその条件が何かまでは分からないの。 絵日記帳からヒントを得て、行動を起こして、それを満たしたら逢える、って感じかな」

 「なるほど、今回で言うと、棗海岸に出向いて起こした言動の何らかが、何者かが設定した条件を満たしたって事ね。 何だかそれ、運ゲーじゃない? 完全ノーヒントじゃないの」

 「そうよね。 でも、何者か目線で考えると、火雷に課題をどんどんクリアしていって欲しいはず、ってゆらは思うの。 そうじゃ無かったら、こんなチャレンジなんて用意しないんじゃないかなって」

 「うーーん……それも一理あるわね。 って事は、私の言動が条件を満たしたって判定する存在がどこかにいるはずよね。 それってもしかして……」

 「うん、神様だと思う。 だから、ゆらにはどうすれば良いのかまでは分からないの」

 「神様、か……。 何で私なんて選んだんだろなぁ……ま、そんな事考えても、答えなんて絶対見付かんないか。 とにかく、絵日記帳から何らかのインスピレーションを得て、アクションを起こさないといけない、って事ね」

 「うん。 今回は上手く行ったみたいだから、きっとそうだと思う」

 「答え合わせも無しだなんて……攻略法すら立てられないじゃないの。 ま、でも、これも縁だから、これからもゆらに付き合うわ」

 「ホント? ありがとう、火雷。 前向きに取り組んでくれて、ゆら、嬉しいよ~~。 あ、こうして夢の中でゆらに逢うと、絵日記帳に変化が起こるっていうのは知ってるの」

 「そのシステムにも疑問があるんだけど、もうキリが無いからツッコまない事にするわ。 じゃぁ、明日の朝、チェックしてみる」

 「うん。 じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」

☆今回気を付けた点☆

この世界線での、火雷の行動ルールについて開示しました。

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