41 光輝く絵日記帳、発見
いつも読んでいただき、感謝です。
今エピソードから、新章に突入です。
今日は胸がすくほど清々しい秋空が広がってる……絶好の写生大会日和ね。
私たち2年A組は今、月宮神社に来てるの。
参拝客が大勢訪れてる中を、思い思いの場所を見付けてスケッチに取り掛かるクラスメイトたち。
本殿や神楽殿、大鳥居なんかに集まり気味だけど、皆、そんなありきたりな場所で勝負するの?
「神社の職員から許可が得られれば、何処で描いてもいい」 って、總先生からの申し送りがあったんだから……私は授与所にいた人にお願いして、裏口から崖を下りてみる事にしたの。
さすがにここまでは誰も付いて来ないわね、よしっ!
海が目の前だから、波が岩に当たって砕けるダイナミックな景色を描ける……今年も校内グランプリで金賞を獲るには、絶好の場所を見付けられたんじゃないかな。
少し背の高い岩に登って、ラフ画を描き始めたの。
手前には奇岩の暗色を、真ん中には海の青を、そして奥には長森島の緑をキャンバスに配置する……波はちょっと大げさに泡立てて、色の配置にも気を配ってみる。
色付けで更にグラデーションを大げさに……くっきりした印象の絵に仕上げていくの。
よしっ、これでばっちりね!!
画材を片付けて退散しようって思った時、向こうの方でキラッと輝くものが目に入ったの。
「ん? あの洞穴からかな?」
中に入ってみると……光を放ってるものの正体を見て驚いちゃって。
「ノートが光ってる? 光が反射して……って訳でもないのに??」
さすがに好奇心を抑えきる事なんて出来ず……私は手に取ってみたの。
「これって……絵日記帳? 懐かしいなぁ、小さい頃の夏休みの宿題を思い出すよ。 でも、何にも描かれてないわね。 誰かの忘れ物なのかな……折角だから回収しておくか」
私の独り言が洞穴の中で反響する……まるで、自分に反復して訊かせるかのように。
集合場所の、古い小径へと続く石段の前にある広場に着くと、總先生に、 「このノート、洞穴に忘れられてたから回収してきました」 って、手渡そうとしたの。
すると先生、凄く怪訝そうな顔して、 「おい、火雷! 先生をからかってるのか? 何も持ってないじゃないか!!」 って……あれっ?! 確かに今、手に持ってるよ?
「先生こそ、冗談は止めてよ! ほら、これ、絵日記帳!!」
私もぷんすかして、けんか腰に言い返しながら、差し出してみたの。
「いやいや、そんな、手錠をかけてくれ! みたいに両腕を突き出されても……。 からかうのも大概にしないと、次は本気で怒るぞ!!」
これはマジで様子がおかしい……状況を整理すると、私には見えてるのに、先生には見えてないって考えないと辻褄が合わないんだけど……そんな事って有り得る?
でもここは、一旦引っ込むしかないか……これ以上押し通すと、病院に連行されかねないし。
「じゃ、点呼取りまーーす! 番号! いちっ!」
私の声に続いて、 「に! さん! し! ……」 順調に進んで最後は、 「さんじゅうろく!」
「先生、全員揃ってる事を確認しました!」
「はい、ご苦労様、委員長。 作品の提出は来週の美術の時間だからな、きちんと仕上げてくるように。 忘れ物はないかーー? 絵日記帳を忘れたものはいないかーー?」
先生が唐突に変な事言った、って取ったのか、クラスメイトたちがざわつく。
「先生、もうそれはいいです!」 変に蒸し返すんだから、もう。
「あはは。 よし、じゃぁ、駅に向かうぞ。 皆、列を乱さないよう、委員長を先頭にシャキッと歩けよ」
先生の号令で神社を後にする……私はわざと、絵日記帳をこれ見よがしに手に持ち続けてたんだけど、誰一人としてツッコんでくる子がいなかった……ホントにこれ、私にしか見えてないんじゃないのかな……。
モヤモヤするから、その日の夜、パパとママに絵日記帳の事について相談したの。
「パパ、ママ、変な事訊くかもだけど、私が今、手に持ってるのって何だと思う?」
するとパパは、 「ん? それって、どっちの手にコインを握ってるでしょうか? みたいな事かい?」 って言うの。
続いてママも、 「いや、それにしては、手首の角度がおかしいわ。 何かを両手の親指で挟んでる感じだもん。 でも、何も持ってるようには見えないわね」 だって。
とすると、このノートは二人にも見えてない、って事になるよね。
「やっぱ、私だけみたいね……これが見えてるのって」
パパは馬鹿にされてるって思ったのか、 「いやいや、火雷、冗談も大概にしなさい」 って言いながら、ノートに手を伸ばしてきたの。
すると、見事に空振り!
「ほら、何もないじゃないか!」
「ううん、ちゃんとここにあるんだって。 でも、信じてもらいようが無いよね、これじゃ……」
私がマジな顔でそう答えたのを見て、ママも全くの出まかせじゃないって思ってくれたらしく、 「じゃぁ、何が書かれてるのか教えて」 って訊ねてくれたんだけど、 「それが……全く何も書かれてないの」 って返すと、 「それじゃ、ママも信じてあげられないわね」 って……困ったなぁ。
これじゃまるで、変な事言う人だよ、私。
全くのノーヒントなんだよなぁ、このノート。
取り敢えず、私の勉強机の上に置いとこっと。
その日、私、変な夢を見たの。
顔も姿形もはっきり分かんない、ぼんやりと青白く光る人魂みたいなのが、私に話し掛けてきて……。
夢なんて記憶の整理だっていうから、自分が知らない人なんて出てきっこないって思うんだけど…… 当然、こんな相手なんて見た事無い。
若い女性の声で、 「ごめんなさい……ごめんなさい……」 って必死に謝ってくるの。
「いきなり謝られても……貴女は誰? 何をそんなに謝ってるの?」
「私は……思い出せないの……ごめんなさい。 私が悪いの……私のせいで、貴女を巻き込む事に……」
夢の中でも私、訳分かんない状況に追いやられてる感じ?
「私が、一体何に巻き込まれてるって言うの?」
「私たち親子に神様が与えた試練に」
神様までお出まし? ヤバいわ、この話の展開……。
「神様?! 私、神頼みとかしない事も無いけど、そういったモノには縁が無いのよ? しかも試練って……何言ってるかさっぱりだわ」
「ある世界線で、私のお母様が大きな過ちを犯して……それをかばった私も、神様から罰を受ける事になったの。 自分が誰なのか、貴女が何者なのかを思い出せないのも、きっとその一つ……」
「世界線? 何が言いたいのか、さっぱり分かんない。 それに私、貴女なんて知らないし。 何で私が見ず知らずの貴方たちの試練に巻き込まれなくちゃいけないわけ?」
「貴女も試されてるの、この世界線で。 貴女の行動に、この世界線での私たちの運命が委ねられたの」
「私の行動に? もっと具体的に言って。 何がどうだって言うの?」
「今、貴女の手元に日記帳があるよね? あれは別の世界線のもので、ここにあってはいけないもの。 神様は貴女がそれを見付けるように、わざと配置したの」
「この世界線にあっちゃダメなもの……ところで、さっきから世界線世界線って……それって一体何なの?」
「世界線っていうのはパラレルワールドの事で、この世界とは違う時間軸の世界が無数にあるの。 その絵日記は、失われた世界線から回収されたものなの」
夢の中だからって、何でもアリ過ぎるわよ、設定が。
私、SFっぽい話、作る才能あったかなぁ……どちらかと言うと現実主義だって思ってるから、苦手なジャンルなんだけど。
だんだんこの話に付き合うのも疲れてきたわ……もう、打ち切っちゃおう。
「よく分かんないけど、あの絵日記帳が貴方と私の試練に関わってる、って事ね。 もう疲れたから寝かせて。 それに、私は火雷よ。 これからはそう呼んで」
ま、また会う事になるのか知らないけど。
「火雷……ね、そう呼ばせてもらうね。 私は名前が分からないから、呼び方は火雷にお任せするよ。 この夢を見た後、絵日記帳に何か変化が起こると思うの。 明日、起きたら確認してみて……。 じゃぁ、ぐっすり眠れますように。 おやすみなさい」
私、夢の中で催眠術かけられたのかな……マジで朝まで目が覚めなかったよ。
違う世界線に物語の舞台が移行したため、この章からガラッと環境設定が変わってます。




