40 あのコの一番そばで、私、輝けたと思う
いつも読んでいただき、感謝です。
これで本編の時系列は網羅し、この第4章は完結です。
よしよしっ! 今からひむちゃんを社務所に連れてくからね~~。
サプライズ、皆で上手く仕掛けられますように。
「ひむちゃんを連れてきたよ~~」
さて、ひむちゃんの反応は……って、えっ?!
パンパンパーーン!! クラッカーなんてどっから持って来たの??
それに紙吹雪まで……何気に私もサプライズに巻き込まれちゃってるじゃない、あはは。
「きゃっ! えっ?! あれっ?! 何でここにきゆりちゃんがいるの? みづるさんまで」
「やぁ、ひむか、おはよう! この前、ひいかに教室で誘われてな。 どうだ、ビックリしただろ?」
「私も、棗海岸まで出向いてお願いしに来たひいかの熱意に押されてね。 ひむか、ちょっと見ないうちに、存在感マシマシになったみたい……風格すら感じるわ」
「ひいかが二人をここに誘ったの。 これがひいかのサプライズ。 ひむちゃんを皆で励まして送り出したいな、って思って」
取り敢えずツカミが成功したのを確認してそう言うと、 「ちょっとひいかちゃん、私たちの紹介はしてくれないの?」 って、ちかねさんが私の横に歩み寄ってきたの。
「ま、有っても無くても、私も励ましの輪に混ぜてもらうつもりだけどね。 ひむかちゃん、いよいよね。 目の前で可憐に舞う姿を観れないのが、すっごく残念だわ」
「まぁまぁ、ちかね。 この前、立派に舞っている姿を観たのですから、良しとしなさい。 ついにこの日が来ましたね、ひむかさん。 もう、準備は万全なのですか?」
宮司さん、ちかねさんをたしなめつつ、ひむちゃんを落ち着かせるように話し掛けてる。
落ち着いた大人のなせる業だわ。
気持ちが高ぶって前のめりになりそうな時に、こういう軽くブレーキをかけてくれる人がいると助かるよ。
「ひいちゃん、皆……ありがとう。 これからの事を思うと、独りで心細いんだけど、背中を押してもらえて、一杯勇気をもらえて……凄く元気が出たよ」
私達は付き添う事が出来ないから、せめてひむちゃんが力強くここを出発していけるように……そう願う気持ちは一つだよ。
「私なりに準備は整えられたと思います。 宮司さんからは茅の輪のくぐり方と大祓詞の唱え方を、ちかねさんからは巫女衣装の着付け方と浦安舞の舞い方を、みづるさんからはカヌーの操縦の方法を、きゆりちゃんからは登山のコツと心得を、そして、ひいちゃんはいつも側にいて私を支えてくれた……皆から教えてもらったものを向こうで全部ぶつけて、もう一度ここに戻ってきます!」
皆と一人一人堅い握手を交わした後、最後にひむちゃんは私を抱き締めてくれたの。
「それじゃぁひいちゃん、行ってくるね。 いつもありがとう……感謝しかないよ」
「うん。 ひいかも、ひむちゃんと一緒に色んな事を体験するうちに、凄く変われたんじゃないかなって……ひむちゃんの一番そばで、ひいか、輝けたって思うの」
「私も、ひいちゃんの気持ちに応えなきゃ、って思い続けてきたから……私の一番そばには、いつもひいちゃんがいたから、ここまで頑張ってこれたって思ってるよ」
そんな事、目の前で言われたら私、涙腺が緩んじゃうじゃない。
そして、皆の方に向き直ると、 「皆の思いを背負って、使命を果たしてきます! では……行ってきます!!」 って宣言して、ひむちゃんは社務所を後にしたの。
「「行ってらっしゃい!!」」
「皆さん、ご協力ありがとうございました。 あとはひむちゃんの無事を信じて、ひいかは洞穴で待とうって思います」
「ああ。 果報は運動に打ち込みながら待て、って言葉もあるしな。 帰りも石段ダッシュで景気づけといくか」
「ひむか、いい笑顔だったわね。 大丈夫、きっとやり遂げて戻ってくるわ。 カッター訓練に戻るけど、無事を祈り続けるからね」
「きゆりちゃん、勝手に格言作ってるじゃない、もう。 みづるさんもありがとうございました。 ひむちゃんが戻ってきたら、また二人で会いに行きます」
まずは、私が呼んできた二人に感謝のおじぎ。
「あーーあ、行っちゃったね。 ま、ひむかちゃんならバッチリこなして戻ってくるわ……あれだけひたむきに頑張ったんだもん、きっと大丈夫よ」
「はい。 日頃の努力を神様もきっとお認めになる事でしょう。 戻ってきたら、日を改めてお祝いをしてあげましょう。 では、私達もそろそろお勤めに戻らなくてはいけませんので」
「宮司さんもちかねさんも、朝のお勤めの忙しいところを付き合ってくださって、ありがとうございました。 そのお祝いには、ひいかも絶対参加したいです。 じゃぁ、ひいかは洞穴に向かいますね」
私たち5人はここで解散し、それぞれの生活の場に戻っていったの。
社務所を出ると、私はひむちゃんの無事を願ってご本殿を参拝した後、崖の上の休憩所から海の向こうを眺めながら物思いにふけってみたの。
今頃ひむちゃん、海の上に見えるって言ってた波の立たない道を、遠くに見える長森島に向かって、カヌーでギーコギーコ進んでる頃なのかなぁ。
側にはウサギのぬいぐるみがデーーンと置かれてて、肩にはほつきさんが乗っかって……あっ、そう言えば忘れてたよ、ひむちゃんの側にほつきさんがいるって事を。
結局、何だか分かんないままなのよねぇ……あの存在。
この前、カヌーに残されてた手紙の内容を考えてみたけど……論破する[貴女]っていうのが何者なのか分からなかった……。
島に渡れるひむちゃん以外の存在、ってところはほつきにも当てはまるけど……論破しようにも、口も利けないって言うんだから論外よね。
ひむちゃんが[貴女]を誰って考えてたのか訊くの、忘れてたなぁ。
それにしても私、ひむちゃんと超常現象の謎を追っていくうちに、色々と想像する事が増えたなぁ、って。
この前、空海先生に言われたなぁ、「目に見えるものが全てじゃなく、そこへ感情なり想像なりを添える……ひいか君はもっと色んなものを感じ、考え、触れる機会が必要だと私は思う」 って。
そういう意味では、私もちょっと成長できたのかな。
授与所の裏口を開けてもらって洞穴まで来ると、テーブルの上にはさっきまでひむちゃんが着てた服が綺麗に折り畳まれて置かれてたの。
ひむちゃん目線で考えたら、脱ぐ服と着る服のコーデがほとんど同じになってた、って今更気付いたよ。
私がお披露目してほしいって言ったから、内心、変なんだけどなぁ~~なんて思いながら、お願いを叶えてくれたのかな。
外に視線を移すと、穏やかに波が打ち寄せてて、心地良い音が耳に届いてくる。
心が落ち着いたところでふと、私の手元に残された絵日記帳に何か書いてみたくなってきちゃった。
見開きで使えない、最後のページに何か書き残しておこうかな。
ひむちゃんが戻ってきたら、このノートも役目を終える事になるもんね。
そうだ、今日のサプライズのシーンを描いてみよう。
・・・・・・
うん、この枠に6人はさすがに手狭だったかな……ま、親密感が出るからいっか。
考察欄には、皆の名前を書いとこう。
ひむちゃん、宮司さん、ちかねさん、みづるさん、きゆりちゃん、そして、私……これで良し、っと。
今日は色鉛筆、持って来なかったなぁ……色は家で付けよっと。
・・・・・・
……あれっ?! 私、いつの間にかウトウトしちゃってたみたい。
朝が早かったし、波の音も心地良いんだもん、仕方ないよね。
テーブルの上はそのまま……まだひむちゃん、戻ってきてないんだね。
ちょっと外に出てみようかな。
何気に海の向こうを眺めた時、信じられない光景が目の前に広がり始めたの。
遠くの景色が、まるでそう、紙吹雪を下から上に巻き上げるみたいにして、消え始めてる!!
「ひむちゃん、何がどうなってるの?! 私も見えちゃいけないものに巻き込まれちゃったの??」
すかさずほっぺをつねってみるけど、本気で痛い。
「夢じゃないんだ、これ……ひむちゃんも島も、紙吹雪の巻き添えに……嫌だよぉーーっ!!」
そう叫んでるうちにも、どんどん紙吹雪が近付いてきて、遂にはすぐそこまで……。
「そ、そんなぁ……嘘だ、嘘だよーー! こんなのーーっ!!」
私の叫ぶ声も、そして私も、紙吹雪に巻き上げられたの。
本編の第49話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
ひいか視点では、ひむかの島でのエピソード(本編第49話後半~第53話)は不明のままです。
その部分は、物語終盤に上手く組み込む予定にしてます。




