38 ママの遠い過去の秘密
いつも読んでいただき、感謝です。
神楽殿の前には既に沢山の参拝客が集まってて、私たちはちょっと後ろから観る事になっちゃったの。
ま、さすがにこれだけ大勢の人たちに紛れ込んでたら、ひむちゃん、気付かないよね……ママの目論見通り。
いよいよ巫女さんたちが登場。 4人で舞うのね。
ひむちゃんは、右端かぁ……センターって訳にはいかないよね、あはは。
「ひむかちゃん、凄く似合ってるじゃない、巫女舞衣装。 こんな事言っちゃダメだけど、他の巫女には無いオーラを感じるわ。 まるで主役みたいな」
右隣で鑑賞中のママが、こそこそっと私に話し掛けてくる。
「ね! 似合ってるでしょ? 前に着付けしてるとこを観た時、ひむちゃんって巫女さんになるために生まれてきたんじゃないの? ってひいか、ドキドキしちゃったもん」
ママのハートも、私のハートも、舞い始める前から鷲掴み。
古風な演奏をバックに、そのリズムに合わせてゆったり舞う……厳かなんだけど、幻想的な光景だよ。
「うん、動きがぎくしゃくしてない……スムーズで、凄く自然だわ。 背筋もスラっと伸びてるし、腕の動きも大きくて肘の使い方もバッチリ。 手首も反ってないし、脚運びも滑らか……ゆったりしたリズムに、焦らされる事無く動けてるところも……まるで、もう何度も舞った経験があるみたいな安定感ね」
えっ?! ママ、何かスイッチ入っちゃった??
「ち、ちょっと、ママ! 評論家みたいな事言ってる。 もしかしてママって……」
「あ、あはは、ついつい……あんまり分かんな~~い」
「何よ、それ……。 もう、とぼけても遅いんだからね」
それ以降、逆にママは一言も喋らなくなって……ひむちゃんの動きに釘付けになっちゃった。
ママにそれだけの事を言わせるほどの振り付けを、たった2週間で完成させたんだね……凄いよ、ひむちゃん。
舞い終わると、参拝客から一斉に拍手が……勿論、私たちも。
巫女さんたちが退場するのを見届けてから、私たちはその場を後にしたの。
その時、背中越しに 「あの……もしや、貴女はひいかさんでは? ようこそお参りくださいました」 って声を掛けてきたのは、宮司さん。
あちゃ~~、折角変装してきたのに、バレちゃったか。 あはは。
「あ、はい、ひいかです。 あの……ひむちゃんからイベントの事を聞いて、舞を観に来たんです。 あ、あの……ひむちゃんには内緒で」
あーーあ、白状しちゃった。
「そうでしたか。 お越しいただいて嬉しく思います。 ところで、内緒で、って申されましたが、本人は貴女がここにいる事を知らないのですね?」
「はい。 ひいかが観てるって知って、ひむちゃんが集中できなくなっちゃったらダメだって思って、こっそり」
「なるほど、貴女は友達想いな方ですね。 それなら本人には貴女の事、内緒にしておきましょう。 ところで……」
宮司さんの視線が、私の右隣で変にそわそわしてるママをロックオンしたの。
「貴女は、もしかして……」
「ひいかの母です。 由美子って言い……」
「由美子さん! やっぱり!! いや~~、あれから随分と年月が経ちましたが、面影はそのままですね、[深緑の舞姫]、由美子さん」
しんりょくの、まいひめっ?! 神力の舞姫?? 何々? ママ、二つ名持ってたの??
「名前を出したら思い出してくれるかなーー? って、ちょっと試してみたの。 お久しぶりです、宮司。 その通り、私はその由美子よ」
「いやはや、私を試すなんて、相変わらずいたずらが過ぎますね。 名前を伺う以前に、その髪型にその服装……気付かせる気満々ではないですか」
あらら、あの宮司さんがタジタジ? ママって小悪魔だったわ、あはは。
「あ、これは名前を言っても思い出してもらえなかった時の、次のヒントとして用意してきたの」
「では、私は第一ヒントで正解できた、という事ですね。 ホッとしました。 それにしても、かなり特徴的でしたからね、貴女の姿は。 それに、舞……この界隈では評判でしたからね。 何せ、参拝客の……」
「だーーーーーーーーっ!! 娘の前で、その話はダメ!! もう、宮司は口が軽いんだから!!」
あはは、ママの過去の秘密、ここにあり! だね。
これは隣で聴いてて面白いわ。
ママのセピア色の想い出、宮司さんから色々探れそうね……何時か探偵ごっこ、しちゃおっと。
「あ、恐ろしや、恐ろしや。 分かりました、その話には触れない事にしましょう。 それで、そんな舞姫にも娘さんが……それがひいかさんだったとは驚きです。 縁とは不思議なものですね」
「娘が何度もお世話になったみたいで……その節はありがとうございました。 親子共々お世話になるなんて……ホント、縁って不思議だわ」
「今日、こうして久々に顔を合わせられたのは、縁そのものでしょう。 また是非、お参りにいらしてください。 何時でも歓迎しますよ」
「気が向いたら、ね。 でも……あの二つ名、誰が付けてくれたんだっけ……。 それがどうしても思い出せなくて……」
「それは確か……ふむ、どうも私も思い出せないようです。 当時の巫女だったか……私ではないとは言い切れますが」
最後に疑問が残っっちゃってスッキリしないみたいだけど、私たちはそこで宮司さんとお別れして、神社を後にしたの。
翌朝、ガゼボでママのアドバイス通り、先制攻撃。
「おはよーーひむちゃん。 ご、ごめんなさいっ!!」
当然、私が頭を下げたもんだから、ひむちゃんは…… 「え? えっ?? 何で謝るの??」 面食らっちゃってる。
「ひむちゃんに誘われなかったのに、昨日、こっそり神社に舞を観に行っちゃったの。 ひむちゃんの晴れ姿をどうしても目に焼き付けたくて……」
するとひむちゃん、そっと私の肩に手を乗せて、 「観に来てくれたんだね! そっかぁ~~。 私、ずっと心に引っ掛かってたの……ひいちゃんを遠ざけてしまった事。 私こそ、ごめんね」 って、優しく話し掛けてくれたの。
「ひむちゃん、ひいかを相手する余裕が無いって思ったから、そうしたんだよね。 独りぼっちにさせちゃうからって。 でもひいか、気が散って邪魔になるから断られたって思っちゃって……。 ママが、ひむちゃんは集中できて、ひいかは側で見守れるアイデアを閃いてくれて……」
「おばさまがひいちゃんの思いを叶えてくれたんだね。 それで私も救われて……おばさまに感謝しなきゃね」
ママと一緒に行った事はこの際、内緒にしておこうかな。
その方が話が綺麗にまとまりそうだしね。
「うん、そうだね! 凄く感動したもん、ひむちゃんの舞が観れて」
「後からそんな事言われると、恥ずかしくなってきたよぉ~~」
ひむちゃんが両手をうちわみたいにして、自分の顔を扇いでる。
「実は、一緒に舞った巫女さんたちにも凄く褒めてもらえて。 私、頑張った甲斐があったなぁって」
「本物の巫女さんからも認めてもらえたんなら、もう完成したって思ってもいいんじゃない? こんな短い時間でやり遂げちゃうなんて、凄いよ、ひむちゃん」
「ちかねさんからも、お墨付きを戴けたの。 あと、宮司さんからも、祝詞を堂々と読み上げられてたね、って褒めてもらえたの。 必死に頑張れば、無理だと思ってた事でも出来るんだなって」
その日の昼休憩に、ひむちゃんが声を掛けてきたの。
「昨日、ふと、お母さんの部屋にあったウサギのぬいぐるみ、長森島に持って行きたいって思ったの」
「あ、あの超常現象のだね。 でも、何でそんな事思い付いたの?」
「うん。 どの超常現象も島に関係してるんじゃないかな、って。 使い道は全く分かんないんだけどね。 あの崖の下の洞穴に持って行きたいって、宮司さんに相談したの」
「でも、アレをひむちゃんちから神社まで運ぶんだったら、透明化しないといけないんじゃない? しかも、凄い距離があるよ?」
「そこは何とか頑張れるんだけど、もう一つ問題があって……。 そこはひいちゃんに協力してもらったらどう? って宮司さんにアドバイスされたの」
「もう一つの問題? ひいかに出来る事だったら、何だって協力するよ。 それで、何をどうすればいいの?」
「ホントに?! ありがとう! えっと、当日、宮司さんが授与所の裏口の鍵を開けておいてくれるの。 予め、私が当日着る服をひいちゃんに渡しておくから、私があの洞穴に辿り着くより前に持って行っててほしいの。 その服を着れば実体化できるから」
「なるほどね。 それだったら楽勝だよ。 どーーんとひいかに任せてよ!」
「ありがとう、ひいちゃん。 いつも私、頼りにしちゃって……。 で、いつ、どこで渡したらいいかな?」
「うーーん……じゃぁ、金曜日の学校帰りに、ひむちゃんちに寄るから、準備をお願いするよ」
「前日って事ね。 うん、分かったよ! ひいちゃん、お願いします!!」
本編の第48話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
終盤のキーパーソン:由美子のキャラ固めを進めました。
本編ではちょい役だったから、肉付けが大変です。




