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あのコの一番そばで、私、輝くっ!  作者: そるみ
第4章 もうあのコには追い付けない……

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35 舞と登山の特訓

いつも読んでいただき、感謝です。

 水曜日、授業の合間の休憩時間に、ひむちゃんから話し掛けられたの。

 「昨日、ちかねさんが家に来て、夕方まで舞を教えてくれたの。 突然来るんだもん、私、びっくりしちゃって」

 「ちかねさんの方から訪ねてくれたの?! 何気に凄い熱意だね。 でも、ちかねさんって、ひむちゃんち、どうやって知ったの?」

 「あ、電話番号を宮司さんから訊いたんだって。 で、お母さんが場所を詳しく教えたの」

 「そっかぁ、おばさま繋がりかぁ。 でも、舞って、何処で教えてもらったの? ひむちゃんちで、それなりに広い場所って……」

 「それなんだけど、庭で練習したの。 ちかねさんが言うには、神社の舞台も屋外のようなものだから、ってね」

 「ひむちゃんちの庭なら広いもんね、なるほど~~。 それで、実際に舞ってみたのよね?」

 「うん。 最初は扇を持って舞って、途中で鈴に持ち替えて舞って……通しで4回、練習したの」

 「確かちかねさん、一回舞うのに10分くらいかかる、ってこの前言ってたよね? 結構ハードだったんじゃない? 出来はどうだったの?」

 私は、苦戦したのよぉ! って答えが返ってくる心積もりで尋ねたのに……ひむちゃんは、

「それが不思議なの。 ちかねさんのお手本を一回観ただけで、スッと頭が理解して、身体を動かせる、っていうのかな」 なんて言うの。

 そう言えば、舞と音楽、何処かで観たり聴いたりしたような……みたいな事、前にボソッと言ってたよね……あの時は、また変な事言ってる、くらいにしか思わなかったんだけど。

 「ひむちゃんにそんな凄い隠れ才能があったなんて……なら、楽勝じゃない?」

 でも、これにも予想外な答えが返ってきたの。

 「うーーん……確かに、動きを観て、その通りに身体を動かす事は出来るんだけど、舞の順番を覚えるってなると……」

 「ああ、順番は別問題かぁ……確かに難しそうだもんね。 何度も繰り返し練習して、覚え込むしかなさそうかな」

 「って、私も思ったんだけど、ちかねさんがヒントをくれたの。 舞の動きに合わせたストーリーを自分で作って、順番を覚えてみたらどうかな? って」

 舞の動きに、自作ストーリーを結び付ける……なるほど、頭と身体のコラボね。

 ちかねさん、まさかひむちゃんが自作小説を書いた経験がある、って事まで知ってるの? いや、そんなはずないか……さすがにそこは偶然だろうけど……。

 「なるほど! ひむちゃんにピッタリなアドバイスだね」

 「うん。 早速今日からやってみようかなって。 あっ、次は土曜日に来てくれるって。 それと……再来週の日曜日、神社でイベントがあるらしくて、一日巫女体験してみない? って誘ってくれて……。 そこが練習の成果を発表する場になるんだって」

 「予定ギッチギチだね、あはは。 でもそれって……あと10日くらいで仕上げなきゃダメ、って事になるんだよ? ひむちゃん、幾ら何でも無茶じゃない?」

 「10日くらい、かぁ……正直言うと私、不安なの。 でも……ちかねさんが時間を割いてまで付き合ってくれてるんだもん、弱音なんて吐けないよ」

 私、分かるんだ……こうなるとひむちゃん、絶対、自分の事を二の次にして頑張り過ぎちゃう、って。


 翌日……今日は学校の都合で、午後からお休みになったの。 ラッキー!!

 授業が全部終わって、一緒に帰ろうかな~~って思ってたら、ひむちゃんが職員室に呼び出しを喰らっちゃって。

 風紀委員のお仕事か何かで、打ち合わせる事でも出来たのかな? なんて思ってたら、教室に戻ってきたひむちゃんが開口一番、 「ひいちゃん、私、この前の中間テストで順位が4つも下がっちゃった」 って。

 12人しかいない学年で4人に抜かれる……そりゃ、冴先生も心配するよ。

 ひむちゃんは3位が定位置だから……今回は私よりも下って事なの?!

 私がこんな事考えるの、変かもだけど……ちょっとした事故だよ。

 「ひむちゃん……ちょっと勉強に身が入らな過ぎだよ。 ひいかには事情は分かるけど、周りから見たら……」

 「う、うん……さすがに、ちょっとショック、かな」

 超常現象に巻き込まれ始めた頃から、ひむちゃんの心も身体もごっそりそっちに持って行かれちゃってて、普段通りの生活から遠ざかってるんだよね。

 頑張らなきゃいけない事がどんだけ増えても、全部に張り切っちゃう性格だから、頑張れ! なんて励ませない……。

 私は落ち込むひむちゃんの肩に両手を置いて、黙って寄り添う事しか出来なかったの。

 でも、そんな私の心配をよそに、ひむちゃん、 「今日はこれからきゆりちゃんと約束があるの。 今から学食でお昼御飯を食べるから、ごめん、先に帰ってて」 なんて言うんだから。

 ホントに気掛かりなんだからね! でも…… 「あ、これから約束があったんだね……そっかぁ。 あんまり張り切り過ぎちゃダメだよ。 ほどほどに頑張ってね、ひむちゃん」 なんて言ってしまったの。

 さっき、励まさないって決めたばっかなのに。

 ひむちゃんの立ち去る背中から、疲れが滲み出てるように見えたのが、どうか気のせいでありますように。


 次の日、登校しながら、ひむちゃんにあの後の事を訊いたの。

 「きゆりちゃんと待ち合わせて、どっかに行ったんだよね?」

 「うん。 ハイキングに行ったの。 神尾渓谷に」

 「きゆりちゃんとハイキング?! って、ガチじゃない、それ!! 登山の特訓、って事?」

 「そうなの。 この前、アドバイスさせて欲しいって頼まれて。 逆に私の方こそ、お願いしますって感じなんだけどね、あはは」

 そう言えば、教室でひむちゃんと喋ってる時に割り込んできて……思い出したよ。

 「確かに言ってたね。 で、きゆりちゃんの事だから、何か目標を立ててたんでしょ?」

 「ひいちゃん、鋭い! それ、最初に言われたよ。 歓迎登山の時は2時間掛けて登ったけど、今回は1時間半で、ってね」

 「あはは……容赦ない縮めようだね。 で、そんな高いハードル、クリアできたの?」

 さすがにあれから1ヶ月しか経ってないんだから、そんなの出来っこないっしょ。

 「うん! それが1時間25分で登れたの!!」

 あはは、出来っこなくなかった……。 それにしても、いくら毎日早歩きし続けてるって言っても、そんな急成長するもんなの?

 「きゆりちゃんが、後ろからずーーっと私の歩き方を見ててくれてたんだけど、下半身がだいぶ安定してきてるな、って言ってくれたの」

 もしかしたら、今ならおばさまと並んで、あのそそり立つ石段を登れるんじゃないの?

 「ホント、凄いスピードで進化してるよ、ひむちゃん。 運動ガチ勢のきゆりちゃんを認めさせるなんて……」

 「うん! どんくさい私でも頑張れば出来るようになるんだな、って自信が持てたのが凄く嬉しくて。 渓谷の広場に着いた時、きゆりちゃんが一緒にボートに乗ろう、って誘ってくれて……今度は私が、みづるさんから受けた特訓の成果を披露したの」

 ボートとカヌーって、ちょっと違うような気がするけど、身体の使い方みたいなのは一緒なのかな。

 「そっかぁ。 ひむちゃんの訓練に時間を割いてくれたきゆりちゃんに、しっかりお礼返しが出来たんだね」

 「そうなの。 私にも出来る事があってホッとしたよ。 帰り際にまた地震に遭ったのが余計だったんだけどね」

 地震? 昨日の昼だよね?? その頃だと私、家に帰って一息着いてた頃だと思うんだけど、全然気付かなかったよ。

 ま、そこはツッコまずに、話の流れを切らないようにしよっと。

 「帰りは逆に、きゆりちゃんが下山する姿を、後ろから見ながら歩いたの。 凄く安定した歩き方で、凄さを思い知らされたよ」

 普通、行きに手本を見せて、帰りにテストしそうなもんだけど……きゆりちゃん流だと逆なんだね。

 「背中でお手本を見せるなんて、きゆりちゃん、カッコいい!!」

 「うん。 スポーツに打ち込む姿ってカッコいいなぁ~~って、憧れちゃった。 あっ! 実は昨日、私服をこっそり学校に持ち込んでたの。 ほら、カヌーに載ってた衣装、前にひいちゃんが、リアルでもこの恰好してみたらどうかな? って言ってくれたよね? この前、お母さんと買い物に出て、揃えてもらったの」

 「ま、マジで揃えたの?! 私より先に、きゆりちゃんにお披露目なんて、悔しいな……」

 ちょっと大げさにしょげてみる。

 「ごめーーん、ひいちゃん!! 今度、絶対お披露目するから!! 長森島の登山を再現できるかな、って。 あの服装でどう動くといいのか、きゆりちゃんに実践的なアドバイスがもらえるかなって」

 ひむちゃん、登山の技も、きゆりちゃんからたっぷり吸収できたみたいね。

 カヌーで渡るのも、山道を登るのも、これで目途がついたのかな。


 土曜日、授業が終わるとひむちゃん、先に飛んで帰っちゃった。

 今日はちかねさんが家に来て、舞の特訓をするんだ、って言ってたもんね。

 独りでゆっくり家に帰ると、ふと、ひむちゃんの練習をこっそり観に行きたいな、っていう衝動に駆られたんだけど、覗き見なんて良くない良くない、って思い留まったの。

 よく考えたら、今のひむちゃんって……登下校は早歩きしてるでしょ、家では1日3回、スクワットしてるって言ってたし、1日3枚をノルマにイラスト練習を続けてるって聞いてる。

 で、この前神社で約束した、大祓詞を唱える練習でしょ? 巫女さんの衣装のエアー着付けでしょ? 舞の順番を覚えるストーリー作りでしょ? ……こんな色んな事を毎日こなしていくなんて、絶対無茶してるよ。

本編の第46~47話をベースに書き上げました。


☆今回気を付けた点☆

きゆりとの登山訓練は、本編では当日の体験の様子を描いて、ひいかへの報告を省略してるんだけど、上手く会話に落とし込めたかな、って思ってます。

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― 新着の感想 ―
舞を覚えるためにストーリーを考えるって、面白い発想ですね!
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