31 宮司さんの考察
いつも読んでいただき、感謝です。
今週は中間テスト週間……高校でも続くのね、これ。
私は普段から勉強する派だからね~~、一夜漬けなんてしないのよ。
私のノート、黒板に書かれた事をただ写すんじゃなくて、書かれてても重要じゃないなって思ったのは写さないし、逆に書かれなくても先生が語気を強めてたら書き留めるし……オリジナル過ぎるから、貸してほしいって頼まれないのよね。
で、4日間の長~~い戦いが終わった時の開放感ときたら!
中学の頃はひむちゃんと打ち上げ! とか言って、駅前の商店街に繰り出して、軽く食べに行ったりしてたんだけど……どうも今回、そんな雰囲気になれないのよねぇ。
ひむちゃんに笑顔がないの。
アレの事で頭が一杯で、テストに集中できなかったのかなぁ……って言っても、ひむちゃんの事だから、大崩れはしないだろうけど。
私、点数でひむちゃんを上回った事、無いんだもん。
私は私で、別の事で気持ちが重くなって……。
って言うのは、その夜、絵日記帳をパラパラと眺めてたんだけど、私がいなくてもどんどんページが埋まっていってる……その事が……。
最初はひむちゃんのお悩み解決! ってノリで始めたアイデアだったのに、ただの妄想だよね? っていう逃げ道が無くなっていって、ひむちゃんも変わっていって、どんどん遠くに……。
画伯レベルだったイラストもどんどん上手くなって……私がいなくても、ひむちゃんがどんどん先に進んでいっちゃう……そんな感覚になって。
そう思うと、悲しくなって、悔しくなって……涙が出てきたの。
そんな感じで、約束の日曜日を迎えたの。
朝10時、ひむちゃんとガゼボで合流すると、月宮神社に向かう……縁の無かった場所だったのに、この1ヶ月ちょっとで4回目。
「この前ので、神社の朝が早いって知ったから、朝のお勤めが終わる頃を見計らって出ようかな、って思って」
なるほど、それで今日は集合時間をゆっくりめにしたんだね。 納得。
「うん。 あの日、宮司さんが忙しくて、だいぶ待ったもんね」
神社に着くと、真っ先に参拝を済ませてから、ひむちゃんと崖を見下ろせる、例の休憩所に向かったの。
ひむちゃんが崖の下を覗き込むと、 「うん、岩の上にちゃんと泊まってるのが見えるよ」 カヌーを確認できたみたい。
「ふぅ。 消えてなくて良かったよぉ」
それから、宮司さんを探して参道を行ったり来たりしたんだけど、結局、授与所の前で見付けたの。
「おはようございます、宮司さん。 先週は挨拶もせずに帰ってしまって、すいませんでした」
そうね、まずは凄くお世話になったのにお礼を言わなかった事、謝っとかないとね。
「おや、ひむかさんにひいかさん、おはようございます。 今週もようこそお参りくださいました。 いえいえ、あの後、巫女のちかねから、無事戻ってきたとの報告を受けて安堵したのですよ。 今日はその件で参られたのですか?」
「それもあるんですけど、その時の事で宮司さんに訊きたい事が色々と出てきて……ひいちゃん、絵日記帳をお願い」
はい、準備はバッチリだよ。
「ここに、島で観てきた事を描き出したんです。 神社に関わる事が沢山あって……」
「なるほど、神社に関わる事、ですか。 それは凄く興味がありますし、私にも協力できそうですね。 ではどうぞ、こちらにお越しください」
宮司さんに案内されて、ひむちゃんと社務所の中へ入ったの。
ここから先は私、二人の会話を黙って聴く事に集中するね。
「島には長森島っていう名前が付いてて、そこには月宮神社奥宮っていう名前の神社がありました」
奥宮? この前のひむちゃんの報告ではその話、聴いてなかったはず。
それだったら同じ名前の神社なんだもん、宮司さんなら絶対知ってるはずだよね。
「長森島……はて、聞き覚えが無いですね。 でも、私が気になったのは神社の名前です。 当神社に奥宮がある、なんて話は聞いた事がありません。 そこに奥宮があるという事は、当神社の主祭神は長森島、という事になりそうですが、天之御中主神という神様で、子宝や子育てなどのご利益を戴いているのです。 全くもってあり得ない話です」
えっ?! まさか知らないなんて……。 冷静な宮司さんもさすがに語気を強めて、ひむちゃんの言った事を全否定……そりゃ、祀ってる神様が違うなんて言われたら当然よね。
「あり得ない話なんですね……でも、確かに、道案内にはそう書かれてたんです。 奥宮の話をこれ以上すると混乱しそうだから、次……その神社の境内に、こんな輪っかがあったんです」
ひむちゃんが「輪っか」っていうタイトルを付けたページを宮司さんに見せると…… 「これは茅の輪ですね。 間違いないでしょう」 あはは、即答。
「ちのわ?」
「はい。 草偏にほこって書いて、ちがやと読みます。 それで編まれた輪です。 当神社でも年に二回、境内に組むのですよ」
「ちがやの輪、なんですね。 年に二回って、何時と何時なんですか?」
「6月末の夏越大祓と、12月末の年越大祓です。 半年の間に溜まった罪や穢を祓い清めるのです。 くぐり方もあるのですよ。 茅の輪の前で礼をし、左足でまたいでくぐり、左回りに回って元の位置に戻る。 また礼をし、右足でまたいでくぐり、右回りに回って元の位置に戻る。 更に礼をし、左足でまたいでくぐり、左回りに回って元の位置に戻る。 最後に礼をし、左足でまたいでくぐり、ご神前へと進むのです。 くぐる時にそれぞれ、祓い給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸え給へ、とお唱えするのです」
そう言った後、宮司さんが実際に目の前で[エア茅の輪くぐり]を見せてくれたの。
なるほど~~、言葉で聴くより、目で動きを観た方が、バッチリ分かったよ。
「へぇ~~、特別な日に、特別なお参りのやり方があるんですね。 ここで一旦、メモにまとめる時間が欲しいんですけど、いいですか?」
・・・・・・
「すいません、書けました。 次なんですけど、ご本殿の中に置いてあった衣装を、ここに書き出したんです」
「何という……ご本殿の中に入られたのですか。 大胆ですね」
言葉にちょっと棘を感じる……咎めるような口調……宮司さん、少し癪に障ったみたい。
「それが、独りでに扉が開いたんです。 まるで中に入るように、って言ってるみたいに」
ひむちゃん、ピリッとした雰囲気を感じたのかな? ちょっとビビったみたい。
私の時と同じように、すかさず弁解してる。
「そんな神懸かった事が……貴女の目を見る限り、本当に体験した事なのでしょうね。 分かりました、貴女の話、受け入れましょう。 それで、これらの衣装ですが……見たところ巫女のもので、しかも、千早まで描かれているという事は、舞を舞う時のものだと言えます。 ただ、袴が紫というのにちょっとした違和感は感じますが」
お咎めなし、って事にしてくれたみたいね……良かったぁ。
「やっぱりこれは巫女さんの衣装なんですね。 でも、紫が違和感って、どういう事なんですか?」
「通常巫女舞は、文字通り巫女が舞うものなのですが、神職ではない彼女たちは緋色の袴を身に付けるのです。 この紫の袴は神職に就いている者が身に着けるもの……つまり持ち主は、神職に就きながら巫女舞も舞う人、という事になります。 ま、あり得ない話ではないのですが」
「という事は、この衣装の持ち主は、神職に就いてる女性、って言えるんですね?」
「はい。 そうですね、後で巫女のちかねにお願いして、実際に貴女にここに書かれている衣装を着付けてもらいましょうか?」
ひむちゃん、凄く大きな手掛かりをゲットできたんじゃない?
衣装の持ち主と、手紙を残した人が同じだとは決め付けられないかもだけど。
「えっ?! 巫女さんの衣装、実際に着せてもらえるんですか?! ……夢みたい……わ、私、ちかねさんみたいに凛々しくなれるかなぁ」
あはは。 巫女さんに凄く憧れてるっぽいから、気持ちは分かるんだけど……舞い上がり過ぎ。
「あっ、あっ、す、すいません、嬉しくてつい……。 ここでまた、メモにまとめる時間をください」
本編の第43話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
ここから神社にまつわる描写がかなり増えますが、この物語の核の部分なので、どうぞ赦してください。




