28 あのコの固い決意
いつも読んでいただき、感謝です。
リビングに降りると、小さい頃に遊んだおもちゃを詰め込んだ箱が床に置かれてて、ママの手にはさっき話題になってたガラガラが……ホントだ! 今見てみると、トゥインクルな双子星がプリントされてる!!
おもちゃ箱に入ってたなんて思いもしなかった……底の方に隠れてたのかな。
私のトゥインクルな双子星好きは、物心つく前から刷り込まれてたみたいね。
「あら、ガラガラの音に誘われて降りてきたのね。 ひいかが赤ちゃんの頃、こうやって鳴らすと興味を持って近付いてきてたのよ」
昔も今も私を惹きつける音色、って訳ね……ママからガラガラを受け取って、軽く振ってみる。
「優しい音色……こういうのに惹きつけられるの、年齢とか関係ないのかもね」
「そうかもね。 これを持たせると、ひいかはずっとガラガラ振ってたわ」
「それと、おもちゃ箱の中に入ってるぬいぐるみ……懐かしい~~。 小学校に入る頃まで、毎日のように遊んでたなぁ」
ママは何だか優しい顔をして、私を見詰めてる……その頃の出来事を懐かしんでるのかな?
「あ……ひいかが小さかった頃の事をつい……私もトシね……」
ママ、目から涙が……それを手で軽くぬぐうと、 「丁度呼びに行こうって思ってたところに、二人とも降りてきてくれたから助かったわ。 ホントはゆっくり泊まっていって欲しかったんだけど……」
って、話題を変えちゃった。
「今日中には戻らないといけないの。 今回は用事を済ませに来たんだから……名残惜しいけど、ここでお別れね」
ふと、おばさんを見ると、すっかり身支度を整え終わってて……じゃぁ私も、二人をしっかりお見送りしなくちゃ。
「短い時間でしたけど、おばさんと海愛姉に久し振りに会えて楽しかったです。 今度は是非、用事じゃなく、遊びに来てください。 その時にもっと色んな話ができるよう、ひいかも頑張ってみます」
「また今度ね、ひいかちゃん。 今回はほとんどお喋りする時間が取れなかったけど、次は頑張った成果を聴くの、楽しみにしてるわ」
「ひいかがどんな道を選んで、どう進んだのか……その時に教えてもらうからね。 楽しみ~~。」
私の挨拶が終わると、次はママの番。
「夏美、今日は遠い所からありがとう。 今度はゆっくり、くつろぎに来てよ。 海愛ちゃんも、ひいかの相手、ありがとう。 また遊びに来てね」
「今日、由美子と会って、子供の頃を思い出して若返った気がするわ~~。 はい、今度は旅行気分でお邪魔するからね」
「おばさんとママって、ずーーっと仲が良いんだね……高校の同級生同士で姉妹の関係って、うらやましいなぁって。 またママに連れてきてもらうよ」
ひとしきり別れの挨拶を済ませた時、ガタガタガターーッって、家が揺れたの。
「キャーーッ! 地震!!」
地震って、私、初めて……結構揺れたよ……怖かったぁ。
「こんなタイミングで……夏美、気を付けて帰ってね。 電車、ちゃんと動いてるかなぁ」
「この程度の揺れだったら、止まるって事は無いと思うわ。 気遣ってくれてありがとう。 じゃぁ、また何時か」
おばさんと海愛姉の背中をずっと見送る……まだこの時間なら、駅には明るいうちに着くはず……心配は要らないよね。
いよいよ日曜日。
昨日の夜、 「明日の集合時間、朝の7時なの」 って言ったら、さすがにママ、びっくりしてた。
ひむちゃんがやろうとしてる事は予想できる……けど、ママには言えない。
「ひむちゃんの、たってのお願いなの。 帰るのも、もしかしたら遅くなるかも」 って保険、掛けといた。
ひむちゃんに一日を捧げる覚悟を決めたから……遅くなっても付き合うから。
ママは深くは詮索せず、黙ってうなずいて私を送り出してくれた……心配掛けてごめんね。
時間通りにガゼボでひむちゃんと合流すると、月宮神社へ……これで3回目になるね。
そびえ立つ石段も、ひむちゃん、前よりスムーズに歩けるようになってる……これも努力の成果。
毎日の早歩き登下校に付き合ってる私も、前よりは脚が進むようになったな、って思えるもん。
境内に着いたのは8時前なのに、既に巫女さんたちが竹箒でサッサカサーって掃き掃除してる……神社の朝って早いのね。
そんな光景を見ながら、ひむちゃんが、 「ひいちゃん、今日は目的を果たす! って決意でここに来たの」 って宣言したの……気持ちのこもった強い声……本気ね。
「まずは宮司さんに会いに行こうと思うんだけど……」
宮司さんに会う……寄り道無し! 目的に向かってまっしぐら!! って感じがビンビン伝わってくる。
じゃぁ、私も一発ぶちかましてみようかな。
「いよいよ島に渡りたい! って事よね!!」
「えっ?! どうして分かっちゃったの?!」
いやいや、分かるでしょうよ……ひむちゃんの言動、ヒントモリモリだったもん。
「昨日はみづるさんに、カヌーの漕ぎ方を教わりたくて、会いに行ったんでしょ? で、今日ここに来て、真っ先に宮司さんを探してる……そりゃ、想像付くよ。 決意満々な目してるし、動きもきびきびしてる……かなりの覚悟を決めてるな、って感じるもん」
するとひむちゃん、観念したかのように、 「やっぱひいちゃん、何でもお見通しなんだね」 って、つぶやいたの。
えっへん、何年ひむちゃんの親友、やってると思ってるの?
ひむちゃんと、宮司さんを探して境内を歩いてると……ご本殿の中に発見!
でも、凄く忙しそう……このタイミングで声掛けたら、きっと迷惑でしかないと思う。
ひむちゃんもその辺は察したみたいで、 「邪魔にならないように、あっちで待つ事にするよ。 落ち着いたら、向こうから声を掛けてくれるよね、きっと」 って言って、本殿の中を遠巻きに眺められる場所に移動したの。
宮司さんは、何やら聞き慣れない古い言葉の詩? を読み上げてて、その側には巫女さんが付き添ってる。
日本語だよね? ……何だか、古文の授業みたい。
「うーーん……昔の詞みたいね。 何を言ってるのか、さっぱり分かんないよ」
国語に強いひむちゃんですら分かんないなんて……でも、こんな朝早い時間に、神様の前で読んでるって事は…… 「神様に朝の挨拶、してるのかな……」 って、私は思ったの。
「そうかもしれないね。 何だか語り掛けるような話し方だし」
そんな事を話してると、宮司さんが本殿から出てきて、私たちと視線が合ったの。
宮司さんは私たちに近付きつつ、 「ああ、貴女たちは……朝早くから、ようこそお参りくださいました。 先ほどからそこで私たちのお勤めを聴き入っておられたようですが、興味がおありなのですか?」 って、声を掛けてきたの。
あはは、宮司さん、気付いてたのね……後ろにも目があるみたい。
「お早うございます、宮司さん。 あはは……詞が難しくて、私にはほとんど聞き取れませんでした」 ひむちゃんがそう答えると、 「聞き慣れない詞でしょうから、そう感じるかもしれませんね。 先ほどお唱えしたのは、”大祓詞”という祝詞なのですよ。 神様に奏上する事で、穢れを祓い、心身を浄化するのです」 って、宮司さんが説明してくれたの。
「おおはらえ? ……祝詞だったんですね。 何となく、心に直接響き渡るような、不思議な詞に思えました」
えっ?! ひむちゃん、そんな感性、持ってるの?! 私なんて、耳から入ってきて、そのまんま頭をスルーしていっちゃったよ。
「ところで、今日は宮司さんにお願いがあって……。 お勤めが一段落着いたところで、時間を割いていただけないでしょうか?」
ひむちゃんが勝負を賭けたんだけど、 「朝はするべき事が多くて、随分とお待たせする事になるかもしれませんが、それでも良いのですか? 落ち着いたら必ずお声掛けしますので、それまで境内を見て回っていてください」 って保留され、宮司さんはこの場を去って行っちゃったの。
ここは気長に待つしかないよね。
そこから、ご本殿をお参りしたり、撫でウサギやウサギの石像たちを眺めたり、海を観ながらひむちゃんとお喋りしたりして、2時間くらい経った頃、宮司さんが声を掛けてくれて、社務所においでって案内してくれたの。
「随分長い時間、私を待ってくださったんですね。 それだけ大切な用事がある、という事ですね?」
「はい。 今から話す事を、どうか、信じてほしいのです」
ひむちゃん、マジな顔付きになった……ここからが勝負だよ、頑張れ!!
宮司さんをどこまで説得できるのか……私が出る幕じゃないから、大人しく話の展開を見守る事にするよ。
本編の第39話をベースに書き上げました。
☆今回気になった点☆
エピソードを区切る場所が……本来は前半と後半([いよいよ日曜日。]以降)の境目でエピソードを区切るべきなのですが、文字数のバランスが上手く取れず、不格好になってしまいました。




