27 私の過去、現在、未来……タロット占い
いつも読んでいただき、感謝です。
カフェを出て、商店街を抜けて、石畳の路地を歩く。
「懐かしいね~~、ただいま~~、私たちの青春のステージ」
あはは、おばさん、ドラマのセリフっぽい事、言ってるよ。
で、ママも、 「そうだね~~、アオハルな想い出が色々あるよね、ここには」 なーんて返してる。
私にも、ひむちゃんとそんな風に少女時代を思い返せる日が来るのかなぁ。
この通りには両脇に小さなお店がポツポツあって、JKの好物、食べ歩きの誘惑も凄いの……あはは。
「今はお腹一杯だから、さすがに食べ歩きはね。 逆に由美子の家まで頑張って歩いて、腹ごなししなくちゃ」
いやいや、それ以前に、イイ大人は食べ歩き、ダメです!!
しばらく歩くと、私が通う高校が見えてきたの。
「私たちと同じ高校に、ひいかが通ってるなんて、じわ~~ってくるよね~~」
「そうね~~。 時が経つのって、ホント、早いわぁ~~」
だめだめ、そういう話をしてたら、老けちゃうんだから。
ママとおばさんの青春の舞台で、今、私が生きてる……私にも子供が出来て、同じように感じる日が来るのかなぁ、何時か。
ここを過ぎれば、家までは毎日ひむちゃんと歩いてる通学路。
ママと、おばさん親子でこの道を歩くのって、何だか新鮮だなぁ。
丘を吹き抜ける風は、6月に入ってもまだカラッとしてて気持ちいい。
その風に背中を押されるように歩くうちに、私の家に到着~~。
「いらっしゃい、夏美、海愛ちゃん。 どうぞ中に入って」
「久し振りねぇ~~、由美子の家にお邪魔するの。 何時以来かなぁ」
「そうねぇ……ひいかを産んだ後ぐらいだったかな、前は。 そのひいかがこれだから、随分経ったよねぇ。 あの時、夏見がガラガラをプレゼントしてくれたよね。 あれ、ひいかが凄く気に入っちゃって、ず~~っと遊んでた。 懐かしいわぁ」
あはは、そんなガラガララブな時代もあったのね、私。
「そうなの~~、気に入ってくれたんだね、あれ! トゥインクルな双子星のキャラクターものだったね。 遠い町まで買いに行ったのを今でも覚えてるわ」
「でもあれ、何処にやったのかなぁ……」
ん? そんなに気に入ってたんなら、きっと何処かに大切にしまい込んでるんじゃないかな。
「あ、ごめんごめん、ついつい思い出話に……。 海愛にひいかちゃん、私は由美子とここで大事な話をするから、その間、ちょっと時間を潰しててくれない?」
また用事かぁ……色々と大変なのね……。 じゃぁ、私たちは……。
「海愛姉、私の部屋にご招待しますね」
私の部屋に入るなり、海愛姉、ぐるりと見渡して、 「これが今時のJKの部屋かぁ。 本棚、漫画で埋め尽くされてるけど、勉強、やってるのぉ?」 なーんて言うのよ。
今時のって、私とそんなに歳、変わんないじゃない! もう。
「勉強やってるのって……大人になった途端、みんなそう言うんだから! 意地悪~~っ!!」
「あはは、冗談だよ、冗談。 私だって他人の事、絶対言えないや」
「ま、勉強はそれなりですよ。 全科目が美術だったら最高なんですけど……」
「それ言っちゃったら、私だって、全教科が家庭科だったら無敵だったんだけどね、あはは」
こういう意味のない会話を楽しめるのがJKだって思うの、私。
「ところで、あそこにかかってる似顔絵、ひいかが描いたのじゃなさそうね」
海愛姉の視線の先には、ひむちゃんからプレゼントされた色紙が。
「違いますよ~~。 ひいかの似顔絵をひいかが描いて部屋に飾ってたら、ナルじゃないですかぁ~~。 これはこの前の誕生日に親友のコがプレゼントしてくれた、ひいかの宝物なんですよ」
「なるほどね~~、額に入れて飾ってるくらいだから、思い入れのあるものだと思ったよ。 こういうのって、上手い下手じゃないんだよねぇ」
「そう、ひいか、心を揺さぶられたんですよ。 苦手なはずのお絵描きでプレゼントを作るなんて、って」
「気持ちがこもってる……凄く大切に思ってくれる親友がいて、JK生活、充実してるじゃない」
「うん。 そうなんですけど、心からそうだとは言い切れなくて、最近……」
「あれっ?! もしかして、悩み事があるのかなぁ~~? JKらしいねぇ。 私で良かったら相談に乗ってあげるけど?」
海愛姉、言葉尻は冗談っぽく言ってるけど、ちょっと表情が引き締まったような。
「うん……そのコとは上手く行ってるんです。 ただ、ちょっと最近、そのコに色々とあって……何とかしてあげたいんですけど、どうにも出来なくて……」
「その話し振りからすると、詳しくは話せないけど、その子の力になれずにモヤモヤしてる、って訳ね」
「ごめんなさい、海愛姉……楽しいJKライフを話すはずが……」
「いえいえ、そういう時は、姉さんにドーーンと任せなさーーい!」
そう言うと海愛姉は、セカンドバックを開けてゴソゴソいじりだしたの。
「じゃーーん!! 当たるかどうかは保証できないけど、この子に聞いてみるとしましょう!!」
そう言って取り出したのは……ん? タロットカード??
「うわぁ~~、海愛姉、タロット占い、出来るんですか?!」
「あはは、本格的じゃないんだけどね。 ま、趣味ってところかな?」
そう言いながら、紫色の、四隅に金色の小さな星が刺繍された高級そうな布を、私の目の前に敷いたの。
「これはクロスって言うのよ。 ベルベットで出来てるの。 で、これがタロットカード」
海愛姉の手よりちょっと大きな木の箱から、両手を使って丁寧にカードを取り出してる……まるで、割れ物を扱うみたいに。
「思わず見入ってしまいました……凄く、神聖な感じですね」
取り出されたカードは一度、胸の前で丁寧に束を整えられ、それから、クロスの真ん中に静かに置かれる……凄くゆったりした動き。
「じゃあ、三枚引きで占ってみましょうか」
「三枚引き?」
「そう。 複雑な占いが正義、って事はないからね。 簡単なのが好みなの。 だから私は逆位置は見ないしね。 カードが逆さまに出ても、正位置として扱うわ」
何を言ってるのかよく分かんないけど、シンプルに占うよ、って事ね。
ま、その方が私も気軽に聴けそうだからいいかな。
「ではまず……ひいかは右利きよね?」
利き腕も関係するの? どんどん海愛姉ワールドに引き込まれていく感じがするよ。
「あ、はい。 右利きです」
「じゃぁ、左手でそこのカードを切って、それを大雑把に三つの束に分けてみてね。 利き手じゃない手の方が良いの」
言われた通りにしてみる。
「こんな感じ、ですか?」
海愛姉は、 「うん、それでいいわ」 って言うと、静かに三つの山をまた一つに重ね合わせて、呼吸を整えてる。
「始めるわよ。 まずは過去からね。 一番上から一枚取ってみて」
言われるままにめくってみる……ドキドキ。
「19番、太陽……あはは、このカード、好きなんだよねぇ、私。 これは分かりやすいわ。 ひいかは明るい子。 周りにも恵まれてここまで来た、って訳ね」
「あはは、そっかぁ。 今までのひいかをダメ出しされなくて、ホッとしたよ~~」
「自分じゃ気付いてないかもしれないけど、ひいかには人を笑顔にする強い魅力があるみたい。 小さい頃から人との縁に恵まれてるし、幸せな過去だったって示してくれてるわ」
心なしか海愛姉、微笑んでくれてるような。
「で、次は現在ね。 また一番上から一枚取ってみて」
念を込めて二枚目を、エイッ!!
「18番、月……なるほど……このカードね」
海愛姉の声のトーンがちょっとダウンしたのが不安で、 「えっ?! あまり良くないんですか? 今のカード」 って、思わず私、尋ねてた。
「うーーん……ひいかは今、何か悩んでたりするよね。 さっきもそんな話、してたし。 そうねぇ……今はちょっと苦しそうだね。 何だろう……見えないものを追いかけてる、みたいな……まるで霧の中を歩いてる、みたいな」
えっ?! 見えないものを追いかけてる? ちょっとドキッとしたよ。
「うん、何となく……そんな感覚もあります、今は」
「なるほどね……じゃぁ、最後は未来ね。 また一番上から一枚取ってみて」
何だか引くの、怖くなってきた……でも、覚悟を決めて、エイッ!!
「10番、運命の輪?! ここでこれが出るなんて。 太陽、月って来て、この流れ……これはどう解釈しようか……」
超不安になるから、そんな反応、止めて~~。
「どうしたんですか? 海愛姉」
「過去から現在の流れは凄く綺麗に読めたんだけど……未来は……そうねぇ、大きく流れが変わるみたいね」
「流れが……大きく変わる……」
「大げさに言えば、人生の転機ってところかな。 環境も、人間関係も。 それが良い方向なのか、悪い方向なのかまでは分からないけど、もう今までの毎日には戻れない、ぐらいの」
「人生の転機……もう戻れない……ひいか、ちょっと怖くなってきました」
「そんなに恐れる事はないわ。 タロットって未来を決めちゃうものじゃない……ひいかの今の立ち位置を教えてくれる……あくまで流れを見るものだから、ね」
何だか凄く肩に力が入っちゃったけど、何だろう、客観的にアドバイスをもらって、少し肩の荷が下りた感じもしたの。
「ありがとう、海愛姉。 参考になりました」
「それそれ。 そのくらいの受け止め方でいいの。 どんな未来も、心の持ちようで変えていけるんだからね」
そうこうしてると、下のフロアからガランガランって音が聞こえてきたの。
何だか、懐かしい感じのする、優しい音色……。
「ん? もしかして、ママたちの大切な話が終わったのかな? そろそろ降りても良さそうだね」
「はい、海愛姉。 下に降りましょ」
本編では描かれてない、このスピンオフオリジナルのエピソードを構築しました。
☆今回気を付けた点☆
タロット占いのシーンは、だいぶ苦心して仕上げました。
詳しい方からは、それは違うぞ! って言う指摘を受けそうですが……。
このカードの組み合わせならこういう解釈もあるぞ、って言うのがあれば、ド素人の私に是非教えてください。




