23 あのコと一緒に、誕生日を祝い合うの[4]
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海の向こうを眺めながら、 「それより……今まであまり意識してなかったんだけど、ここからも、棗海岸で見たのと同じ島が見えるの。」 って、ひむちゃんが呟く……私の目の前には、ただ海が広がってるだけ。
どうしてだろう……もうこれ以上、新しいのは見付けないで、って私、心の底で願ってしまってる。
「そ、そうなんだ……」
「角度はだいぶ違うけど、多分同じ島だと思う。 で、何だろう……ここから島に向かって、海の中に道が見えるような……」
「う、海の中に、道?!」
びっくりし過ぎて、声が裏返っちゃったじゃない!!
それってもしかして、聖者みたいな人が、海を割って道を作った、みたいなやつ?
「あっ、言い方がおかしかったかも。 ここから島に向けて、波が立ってない所が、すーーっと細い道みたいに続いてるように見える、って感じ」
海パッカーン! じゃなかったみたいね、さすがに。
何を言われても、そうなんだって、事実として受け止めるしかないんだけどね。
ひむちゃんが両腕を伸ばして、シャーーって振り上げたのからして、真っ直ぐ伸びてるんだね、その海の道って。
そして…… 「ひいかには、海に万遍なく波が立ってるようにしか見えないんだけどなぁ」 って、ぼやく事しか出来ない。
「ねぇ、ひむちゃん、それも絵日記帳に描いてみてよ」 って、お願いするしかないよね、今回も。
「うん、分かったよ」
ひむちゃんが新しいページの右上のコーナーに描いたイラストは、こんもりとした島と、それに続く細~~い海の道……やっぱこれって、さっきのカヌーで、この海の道を通って、この島へ……っていう流れなのかな?
右下の説明コーナーは、っと。
・4ページ目に描いた島を、月宮神社から観たもの。
・波が立ってない所が、筋のように島に向けて伸びている。
イラスト通りの説明かぁ……こっちのページは私、手の加えようがないんじゃない?
実際、絵の構図が単純だから、私が描いてもそんなに変わらないしね。
「じゃぁ、さっきのカヌーのイラストだけ仕上げていくよ。 この島の方は、ひむちゃんが描いたままでいいと思うから……」
それにしても、カヌーに載ってる服は……ひむちゃんのイラストと説明がアバウト過ぎて……ま、今日のところは仕方ないよね、またの機会にしましょ。
密かに、それを口実に、またひむちゃんと一緒にお出掛けができるって事が、何よりも嬉しいんだけどね。
「よしっ! 完成っ!! こんなところかな」
「うん、バッチリだと思う! とりあえず、今日はここまでにしておきましょ。 ちかねさんにも迷惑がかかるしね」
「すいません、戻りました」 って、ひむちゃんが声を掛けると、 「はい、無事に戻ってこられましたね。 目的は果たせましたでしょうか?」 って、ちかねさんは笑顔で出迎えてくれたの。
「お陰様で、しっかり果たせました。 ありがとうございました」
宮司さんの姿を探しながら、社務所の前まで戻ってきたんだけど……。
「一言、宮司さんにお礼を言っておきたかったんだけどなぁ……出会えなかったね」
「だね……。 今度会う時に、しっかりお礼する事にして、ひいかの家に向かいましょ。 ママ、痺れを切らしてたりして」
もう、お昼前になっちゃったもんね。
帰り道も大変だったんだけど……もういいよね、いきなりガゼボまで戻って来た、って事で。
「じゃぁ、ひむちゃん、ひいかの家まで案内するから、付いてきてね」
ひむちゃんを招待するの、今日が初めてなんだから、多分、この道を歩くのも初めてなはずよね。
ガゼボから私の家までは、緩やかな上り坂になってるんだけど、歩く事5分……玄関の前で、ひむちゃんは足を止めて、私の家を見上げてる。
「わぁ~~、ひいちゃんの家、洋風な感じでおしゃれだね~~。 屋根には煙突があるし、屋根のすぐ下にはステンドグラスも……二階には出窓があるんだね」
確かパパとママが、家を建てる時にドイツの家をモデルにしてデザインしてもらった、って言ってたのよね。
「煙突はただの飾りだけど、それも、ステンドグラスも、出窓もひいかたちのお気に入りなの。 出窓の部屋はママの寝室で、ひいかの部屋は二階の奥にあるの」
何でも、出窓の上にあるステンドグラスは、作業員さんの機嫌が良かったから、無料で付けてくれたとか。
そこ自体は屋根裏になるから、家の中からは見えないんだけどね。
そんなこんなで、玄関先でお喋りしてると、私たちの声を聞きつけたママが中から出てきたの。
「こんにちは、ひむかちゃん。 ひいかの母の由美子よ、よろしくね。 初めてよね、家に遊びにきてくれるの。 ひいかから話に聞いてて、ずっと会うのを心待ちにしてたのよ」
もう、こぼれそうな笑顔ってやつ?
よっぽど会いたかったみたいだね、ひむちゃんに。
「初めまして、おばさま。 いつも、ひいちゃんに仲良くしてもらってます、ひむかです。 今日のお誕生日会……心待ちにしてました」
今日は私がホーム、ひむちゃんがアウェイだもんね……緊張するでしょ、相手の親に初めて会うって。
「こちらこそ、いつもひいかをありがとうね。 さあどうぞ。 今日はたっぷり楽しんでいってね」
挨拶を済ませてリビングに入ると、凄く食欲をそそる匂いが……朝から動き回って、健康的にお腹が空いてるから、余計効くよ~~。
テーブルの上には、こんなに食べられるの? ってくらい、色んな手料理がセットされてる。
向かい合わせにあるカウンターキッチンに戻ったママ……ん? ちょっとドヤ顔してない??
朝早くから、これだけ一杯の料理を作ってくれたのね……ひむちゃんも、 「うわぁ~~、お肉に、お野菜に、デザートにドリンク……まるで、何かの小説で出てきたビュッフェみたい。 おばさま、お料理上手なんですね!」 なんて、目を丸くして驚いてるもんね。
どう? 私のママ。 えっへん。
「うふふ、ありがとう、ひむかちゃん。 子供の頃から料理を作るのが好きで、今日もワクワクしながら料理してたものだから、ついつい作りすぎちゃった、てへぺろ」
あはは……てへぺろって……何処で覚えたの? ホント、お茶目なんだから。
作りすぎちゃった、ってところにアクセント入れたよね……それって、ツッコめって事?
「もぉ、ママったら。 今日はママを入れても女子三人なのに、こんなに沢山、どうやっても食べ切れないよぉ」
はい、お望み通り、返してみたよ。
「まぁ、量はともかくとして、こんなに美味しそうな手料理が食べられるなんて、私、凄く幸せだよ」
あ、ひむちゃん、あまりママを調子に乗せないで!
「うふふ、幸せだなんて、ひむかちゃんの期待に応えられるかしら」
ほら、ママがドヤ顔しちゃったじゃない、あはは。
それぞれのグラスにフレッシュアップルジュースを注ぐと、ママが乾杯の音頭を……なんか、ノッてるなぁ。
「ひいか、お誕生日、おめでとう! 今日は大切なお友達と一緒に、最高の思い出を作ってね。 じゃ、乾杯~~!」
「「乾杯~~」」
ひむちゃんが最初に手を付けるの、どれかな~~?
おおーっ! フライドチキンからかぁ……結構ワイルドにかぶりついてる……意外と、肉食系なの?
「うわぁ~~、美味しい~~! 外はカリッと揚がってるのに、中はジューシーで、お店で食べてるみたい。 ついついがっついちゃった……恥ずかしい~~」
「うふふ。 美味しい! って食べてもらえるのが、何より嬉しいの。 がっつき、上等よ! 他の料理もどう? 一杯食べてね」
ひむちゃんが予想以上にがっついてる様子を眺めてるママ、ニコニコ顔。
私も負けちゃいられないよね。
「ひいかも、ローストビーフをサンチュで巻いて……うーーん、美味しい~~」
「まぁまぁ、二人とも、やっぱり育ち盛りの女の子ね、うふふ」
今度は、私がバリバリ食べてる様子を見てるママ、更にニコニコ顔。
「ひいかは今日で16歳だから、育ち盛り真っただ中だよ。 さっき、神社の神様に約束してきたんだ~~」
「へぇ~~、神様に約束?」
ママがニコニコ顔のまま、それとな~~く訊いてきた。 あはは。
「うん。 誕生日を機に色んな事に積極的に頑張るから、見守ってて下さい、って」
「へぇ~~、ひいちゃん、叶えてほしい事をお願いするんじゃなくて、頑張ってる姿を見ててねって神様に誓ったんだね。 えらいなぁ~~」
お、ひむちゃん、私の事、見直してる? まだ続きがあるんだよ。
「うん。 それから、パパが一日も早く帰ってきますように、ってお願いして、これからもひむちゃんと、ずっと仲良くいられますように、って……」
「もう~~。 ひいちゃん、それ、いっぺんに二つお願いしてるよ~~」
あはは、今度は呆れられちゃった。
だって、どっちかを選ぶなんて、出来なかったんだもん。
これでも、一つは捨てたんだよ~~。
「やっぱ、欲張っちゃったかな……」
ま、私たちのやりとりを、ママはニコニコ聴いてくれてたから、いっか。
「本人の目の前で、そんなお願いを口に出しちゃうなんて、ずるいよぉ。 私、絶対それ、叶えなきゃいけなくなるもん。 プレッシャーかかるよぉ」
どう? 策士ひいかの作戦は?
「あはは、どさくさに紛れてコクっちゃった。 でも、心からそう願ってるんだもん」
「そのお願い、聴いた以上は叶えるように頑張るよ」
えへへ、確約、戴きました~~、てへぺろっ!!
本編の第36~37話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
この日の神社でのエピソードが長すぎて、間延びしてしまったかな……。
この物語にはタイムリミットがあり、この日に詰め込んでしまったのです。




