22 あのコと一緒に、誕生日を祝い合うの[3]
いつも読んでいただき、感謝です。
「ごぼう……てんせいの、ひじゅつ?」
ひむちゃん、言葉をなぞるだけで一杯一杯。
私なんて、ごぼうが何の事を言ってるのかすら分かんない……こんなの、宮司さんの作り話でしょ、って思い込もうとしたんだけど……表情がマジなのよ……。
「はい。 五芒とは五芒星の事で、今、イラストで見せていただいた、星形を指します。 そしてそれは、精霊、天使、悪魔と言った、五次元の存在との繋がりを意味し、主に秘術の儀式などに利用されたそうです」
淡々と話を進めていかれるんだけど、もう既に私、置いてきぼりなの。
ごぼうは星型……それは分かったとしても、五次元との繋がりって……そんなの、ホントに存在するの?
その秘文書、何か凄~~くオカルト寄りじゃない??
「我々人間の願いとは、三次元の生物として生きるためのものですが、更に強力な欲望を叶えるために用いられたと伝えられています。 自分に不相応な、強大な存在の力を借りるわけですから、当然、用いる者はそれ相応の代償を差し出す必要があります」
も~~何それ! 無理無理無理無理~~!!
頭が受け入れるの、拒否ってる! もう、完全にオカルトじゃない!!
「ごじげん? ぎしき?? 私、そんな事、考えた事もないし、全く縁も無いんだけど……」
それでもひむちゃん、こんなぶっ飛んだ話でも、冷静に理解しようとしてる……。
「ひむかさんは自分の与り知らないところで、その秘術を施された、と私は考えます。 何者かが代償を差し出し、欲望を叶え、ひむかさんに秘術を施した、と申し上げたいところですが……この話にはそもそも矛盾があるのです。 何者も、門外不出の秘文書について知る術はないはずなのですから」
何者か……何者って何者なの? ほつきさんが黒幕じゃないの??
「えっと……もし何者かがいたとしても、私に秘術を施す必要性って何? そもそも、どうして私なの?」
もう完全に頭がオーバーヒートしちゃってる私の分まで、必死に喰らいつこうとしてる……小説を一杯読んだり書いたりしてるひむちゃんですら、こんな異常な話、レベチだよね。
「それは私にも全く想像がつきません。 今の話、私の常識からはあまりにかけ離れ過ぎているものですから。 でももし、私が今話した事がここで起こっているのなら……」
ちょっと! 宮司さん、溜めテクニックがプロ級なのは分かったからぁ~~、そこで溜めないでよ~~! 怖いから~~!!
「それを成し得るのは秘文書の存在を知り、私ですら知らない秘術の作法を知る者、という事になります。 しかし、そんな者がいるとは到底思えません。 とは言え、ひむかさんが目にしている、ほつきという存在は、この五芒転生の秘術が具現化したもの、としか考えられないのです」
平たく言うと、その何者かって、いる訳が無いって事?!
それって、どうにも出来ない、って言ってるようなもんじゃない!!
……結局、私はこのオカルト話に一言も口を挟めなかった。
耳には入ってきてるのに、頭の中でこんがらがって……何を考えればいいのか分かんなかったし、とても言葉になんて出来っこなかったから。
「ついつい話を脱線させてしまいました。 私にとって、あまりに衝撃的な事実だったもので……閑話休題、最初にひむかさんが尋ねられたのは、カヌーの事について、でしたね」
あれだけドロドロな話しといて、余談だったねって、フッと話題変えちゃうなんて……無茶苦茶だよ。
オカルト話のインパクトが強烈過ぎてパニクっちゃったけど、そうだよ!
私、ひむちゃんにカヌーを側で見せてあげたいが為に、宮司さんを捕まえたんだから!!
それが、ここに来た一番のミッションだったんだから。
「あっ、そうでした! 秘術の話も気になるんだけど、理解が追い付きそうになくて……カヌーを間近で観たいんですけど、あの場所に降りる事って出来るんでしょうか」
そうそう、あんな脳がとろけそうな話なんて一旦置いといて、まずはそっちに集中しましょ。
「それでしたら、こちらへどうぞ。 崖の下へと続く道の入口までご案内致します」
快く案内してくれる事になって良かったけど……長かった~~、ここまでの道のり。
で、付いていった先は……売店。
「実は、ここの奥の出入口から、石段を伝って崖の下へと降りる事ができます。 ただ、私はこのような歩きにくい格好をしておりますから……ここから先へはご同伴できません。 足元に充分気を付けて行ってきてください」
そう言うと宮司さん、巫女さんの一人を呼び寄せて、軽く打ち合わせを済ませると、 「私はそろそろお勤めに戻らないといけませんので、後の事は、このちかねに言付けておくとしましょう」 って言い残して、この場を去っていったの。
「ちかねです。 当神社で巫女をしております。 用事を済ませて戻られましたら、私にお声掛けください」
この人って……前にここに来た時、ひむちゃんが”撫でウサギ”について尋ねた巫女さんだよ、たしか。
「さっき、舞を舞ってた綺麗なひと……。 あっ、失礼しました。 私はひむかで、こちらはひいかです。 どうぞよろしくお願いします」
……ひむちゃん、巫女さんを見る度に、憧れモード突入スイッチが入っちゃうんだから、もう。
ひむちゃんと奥の出入口から出ると、崖へと続く石段……表面がちょっとツルツルしてて、足元が危ない……ゆっくりと下りきると、平らな岩に辿り着いたの。
「ひいちゃん、絵日記帳を貸して。 ここまで来れば、はっきりと見えるから」
ま、私には相変わらずカヌーなんて見えないんだけどね。
手に持ってた絵日記帳を渡すと、ひむちゃんは新しいページの右上のコーナーに、カヌーのイラストを描き始めた……今更だけど、悔しいの……何でひむちゃんと同じように、私にも見えないの? って。
「ほんとにこの前、棗海岸で見たカヌーにそっくりだね」
完成したイラストを観てそう思ったんだけど、あれっ?! カヌーの中に……これ?
「で、この服は……女物? 一揃いあるけど、誰のものかな?」
ま、尋ねたところで、ひむちゃんに分かりっこないんだけど、畳まれてるとは言っても、服がカヌーに置きっぱだなんて、違和感しかない。
「さぁ……このカヌーの持ち主、って考えるのが普通なんだろうけど、持ち主が誰か、なんて分からないし」
持ち主……うーーん……服……あっ!
「ひょっとして、さっきの宮司さんの話にあった何者かのもの、だったりして?」
「ちょっとぉ! それだったら余計に怖いよぉ!! 得体のしれない存在の力を借りて、欲望を叶えるような人だよ? それが女の人だなんて……ま、あの話を信じるなら、だけど」
ん? 今ひむちゃん、人って言ったよね?
まぁ、そりゃそうか……人じゃなきゃ、書物を読んだり、秘術を施したりしないか。
でも、もし人だったら……一体誰が? 何のために??
あ、ダメダメ、今はオカルト話系は考えない、考えない。
イラストを描き上げると、続けて右下の説明コーナーをひむちゃんが埋めていく。
・3ページ目に描いた舟を間近で観たもの。
・折り畳まれてる服は女性用で、上下の服の他、下着、靴まである。 汚れも無くて、凄く綺麗。
・白い封筒のようなものが置かれてる。
「ん? 封筒のようなもの?? ひむちゃん、それって中に……あっそうか……今は触れないんだね」
「そうなの。 あの状態になれば、服も封筒ももっと詳しく確かめられるかもだけど、ちょっとここでは……」
あの状態に、か……じゃぁ……。
「さすがに、ここでは無理だよね。 今から宮司さんに事情を詳しく説明して、脱衣所を用意してもら……」
私の言葉を強く遮るように、 「ううん、さすがに忙しい宮司さんを引き留め続けるのは気が引けるなぁ。 今日のところはここまでにしておこうよ」 って、ひむちゃんにどぉどぉどぉってされたの。
確かに今日の私、暴れ馬みたく突っ走り過ぎてるのかも……。
本編の第35~36話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
ひいかをかなりのオカルトアレルギーに仕上げました。
ひいかは[授与所]という単語を知らないので、意図的に[売店]と表現しています。




