21 あのコと一緒に、誕生日を祝い合うの[2]
いつも読んでいただき、感謝です。
結局、巫女さんたちの舞が終わるまで、ひむちゃんを引き剝がせなかった……。
ここでやっておきたい事があるから、ちょっと強引に、 「お参りに行こ~よ~~!」 って、ひむちゃんの手を引っ張って、急かしちゃった……ごめんっ!
「わわ、分かったよぉ~~」
名残惜しい気持ち、凄く分かるんだけど……今日は私に免じて、お願いっ、許してっ!
参道の両側に立ち並ぶウサギの像たち……この最強のひむちゃん誘惑ポイントも、手を引っ張る力、フルパワーで乗り越えて、手水舎へ……。
まずはここで、おばさまからこの前教わった事を思い出して、両手と口を清めて……それから、本殿で参拝する、っと。
神様に挨拶してからだよね、私がやりたいって思ってる事をするの。
ひむちゃん、観念したのか、私のペースに付き合ってくれてる……心の中で怒ってないかなぁ。
今日は私、誕生日を機に色んな事に積極的に頑張るから見守ってて下さい、って誓って、パパが一日も早く帰ってきますように、ってお願いするの。
ホントは違うお願いを用意してたんだけど……パパに電話で約束した事だしね、変えちゃった。
あと、こっそりもう一つ……ダメ?
「お願い、聴いてくれるかな、神様」
「心から願えば聴いてくれるよ、きっと。 日頃の感謝も忘れずに伝えないとね」
ひむちゃんも、ごにょごにょ、何かお願いしてる……お互い、叶えてもらえるといいね。
ここからは私のターン……この前、ひむちゃんがカヌーが見えたって言ってた、崖の上にあるベンチへと向かったの。
ひむちゃんはベンチから立って、柵から少し身を乗り出し、崖の下を覗き込んだんだけど…… 「結局、あの舟には近付けないのかなぁ。 降りる道が見付からないし」 って、呟いてる……凄く残念そう。
って事は、ひむちゃんには同じ場所にまだカヌーが泊まってるのが見えてる、って事だよね?
で、近付きたい! って思ってるんだよね?
よしっ! その為に今日、ここに一緒に来たんだから。
私、ちょっとしたアイデア、考えてきたんだ~~。
「折角、目の前にしてるもんね。 例えば、この前お会いした宮司さんに相談してみるとかって、どうかな? 不思議なものが見える、なんて言っても、相手にしてもらえないかもだけど……イチかバチか」
「う~~ん……普通に考えたら変な話だもんなぁ。 しかも、宮司さんとは、この前一度会っただけだし……こんな突拍子もない話なんて、聴いてくれないよ、きっと」
あれっ?! 大胆な時はとことん大胆なのに、どうしたんだろう、ひむちゃん……何だか弱気だなぁ。
よしっ! ここは私が背中をドーーンと押してあげなくちゃ!!
「ま、相手にされなかったら諦めるまでだよ。 まずは当たって砕けろ、ってね。 声、掛けてみようよ」
あれっ? 私、縁起でもない事言っちゃった、あはは。
そう言って、社務所に足を向けようとしたところに、偶然、宮司さんがこっちに向かってきてるじゃない! ラッキー!!
ほらほら、ひむちゃんの出番だよーー。
「早速、神様がチャンスをくれたのかもよ。 声掛けてみて、ひむちゃん」
「う、うん。 ……あのぉ……すいません、宮司さん」
「お早うございます。 おや、貴女は明美さんの娘さんのひむかさん、ですね」
「えっ?! 私の顔と名前を覚えてくださってたんですね。 ちょっとびっくりしました」
ま、この前会ったばっかだし、おばさま関係で記憶に結び付いてるだろうから……宮司さんとおばさま、深い関わり合いがありそうだもん。
「はい、しっかり覚えていますよ。 お隣の彼女は、先日ご一緒されていたのは覚えているのですが、まだお名前をお伺いしていませんでしたね」
それに比べて、私の印象ってそんなもんだったり……あはは。
「はい。 ひいかです。 ひむちゃんとは高校の同級生です。 よろしくお願いします」
宮司さんの丁寧語が変に伝染して、素っ気ない自己紹介になったじゃない。
「なるほど、同級生、ですか。 お名前も似ているんですね。 お二方とも、当神社へようこそお参りくださいました。 それで……私にお声掛けされたのは?」
お願い、ひむちゃん、上手くやって!!
「あ、はい。 あまりに突拍子もない事なので、信じてもらえるか……そこの崖の下にある平らな岩の上に、カヌーが泊まってるのが見えるんです。 でも、それが私にしか見えなくて……」
「ほぅ、ひむかさんにだけ見えるカヌー、ですか。 平らな岩とは、何処の事を指すのでしょう」
まずは話だけでも聴いてくれそう……懐が深い人で良かったぁ。
二人で、宮司さんをさっきの場所に連れて行くと、そこで、 「あの下の平らな岩です」 って、ひむちゃんが指さし、宮司さんがその先を覗き込むんだけど…… 「うむ……カヌーですか……私には全く見えませんね……」 っていう反応。
宮司さんも私と同じ星の人だった……何だかホッとするけど、このままだと話、終わっちゃうよね?!
どうやって話を繋ごう……ってあたふたしてたら宮司さん、興味を持ってくれたみたいで、 「それでは、ひむかさんには一体どんな風に見えているのでしょうか」 って、ひむちゃんに尋ねてくれたの。
首の皮一枚繋がったぁ……この流れを切らずにいかないと!
私はすかさず、リュックから絵日記帳を取り出して、 「ひむちゃんはカヌー以外にも、他の人に見えないものが幾つか見えるらしいんです」 って言いながらページをめくって、大アピール。
この前、ひむちゃんが絵日記帳を見せて活用してたから、今度は私がカヌーのイラストを……って思って、ペラペラとめくろうとした瞬間、最初のほつきさんのページで宮司さんが大反応したの。
「こ、これは……これが見える、って言うんですか?!」
ど、どうしたの? 冷静な宮司さんがここまで驚くなんて。
私が見せたいの、このページじゃないのに。
「はい。 今も右肩の上に乗ってて、薄だいだい色に光ってます」
ひむちゃんの方が冷静に受け答えしてるの、笑える。
「……すいません、手を止めさせてしまいました。 他のも見せてもらえますか」
残りの3つの超常現象も、宮司さんに見てもらったの。
「”ウサギのぬいぐるみ”のイラストは、当神社に鎮座まします”撫でウサギ”にそっくりですね。 関連性は分かり兼ねますが。 カヌーはよくは分かりませんが、最後の……山、ですか? 棗海岸で見掛けた、と……これは他のものとはスケールが桁違いですね。 先ほどは取り乱しましたが、最初に見せていただいた星形のもの、これについては、私に少し心当たりがあります、が……」
「私はこの子にほつきって名付けたんですけど……何かご存じなんですか?」
「はい……とは申しましたが、到底信じられるものではありません。 心当たりがあるのは、私がこの神社の宮司をしており、先祖代々の秘文書を受け継いでいるからなのです」
「ひぶん、しょ?」
ひむちゃん、ぽかんとしてる……そりゃそうよね。
ひむちゃんと秘文書なんて、どう間違ったって結び付かないもん。
「秘文書なので、世に広まる事はありません。 ただ、ひむかさんがそのような事情を知らないにもかかわらず、秘文書にある通りに言い当てたという事は……」
ひむちゃんが極秘のはずのものを言い当てる……宮司さんからすると、怪現象でしかないよね。
「本来は当然、口外できる事柄ではないのですが……直面している本人には知る権利があるでしょう。 絶対口外しない、と約束できますか?」
宮司さん、刺さりそうなくらい厳し~~い視線をひむちゃんに向けてる……。
「はい。 ここで聞いた話は口外しません」
ひむちゃん、固まってるよ……ま、そう答えるしかないよね。
「分かりました。 ひいかさんも、約束できるなら隣で聞く事を許しましょう」
あれっ?! 私、当事者じゃないのに、聞いていいの?! これは乗っかれ、って事だよね。
私も、その目力に貫かれそう……有無を言わせない強烈ビームだもん。
「はい。 必ず守ります」
「分かりました。 では……この星形の存在について記されているのは、当神社が保管する、門外不出の秘文書の中であり、その正体は……」
ごくり。 そこで溜めないでよ……。
「いにしえの時代に用いられたと伝わる、”五芒転生の秘術”によるものなのです」
本編の第35話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
本編では[ほつき]の正体解明への第一歩になるエピソードなのですが、ひいかにとっては訳の分からないオカルト話でしかありません。
次話にかけて、その辺りを強調して執筆したいと思ってます。




