20 あのコと一緒に、誕生日を祝い合うの[1]
いつも読んでいただき、感謝です。
その夜、リビングの電話が……こんな時間に珍しいなぁ……あ、もしかして、ひむちゃんからかな?
ママが出たから、暫く側で待ってたんだけど、どうも違うみたい。
だって、ママの声色が変わったんだもん……これは電話の向こう、きっとパパだよね!
盗み聞きは良くないよね、部屋に戻っとこっと。
どのぐらい経ったのかな……漫画を読んで過ごしてたら、 「ひいか~~、パパから電話よ~~」 ってママの声が。
はやる気持ちを抑えながら階段を降り、電話口に出たの。
「もしもし、パパ? ひいかに代わったよ~~」
「ああ、ひいかも元気そうだね! 声を聞いて安心したよ。 何かパパにニュースはないかい?」
パパ、第一声はいつもこう尋ねるんだよね。
「うーーん……今のところは特に……。 元気なのが一番のニュースかな~~、あはは。 パパも忙しそうだけど、元気そうで良かった~~。 あっ、この前、パパが送ってくれたワンピース! 凄く可愛いの、ありがとう!! もったいなくて、まだ着れてないんだけど……」
「喜んでくれて良かったよ。 パパはファッションセンスには自信無いからな……。 でも、まだ着てないのかぁ……それじゃ、宝の持ち腐れだなぁ」
「そうだよね……あっ! 良い事思い付いたよ、パパ!! 今度、家でお誕生日会するんだけど、その時に初お披露目するよ!!」
「誕生日会……今日は23日で……ひいかの誕生日は27日……あっ! ホントだ!! ごめん、パパ、ひいかの誕生日がもうすぐだって今気付いたよ。 ちょっと早いけど、誕生日おめでとう!! 16歳だね」
あ~~っ! ちょっとごねちゃおっかなー、私。
「もぉ~~、パパったら~~、ぷんぷん!! なーーんて、うそうそ。 ありがとう、パパ。 ところで、次はいつ帰ってくるの?」
「それが、プロジェクトが延長になって、まだ当分帰れないんだよ……。 ひいかの喜びそうなのをこっちで見付けたらまた送るから、帰りはもう少し待っててくれるかな?」
「うん、でも、早く帰って来てほしいなぁ……。 今度、神社に行って祈ってくるよ」
「おやおや、ひいかから神社って言葉が出るの、初めて聞いたよ。 やっぱ、ママの血を引いてるんだね」
ん? パパ、ポロっと気になる事、言ったよ?
「えっ?! パパ、ママのその話、知ってるの?! ひいか、この前初めて、ママが結婚前に神社に行った事があるって聴いたばっかだよ?」
「あ、あはは~~。 今の、無~~し! パパからは言えないなぁ~~。 ママがひいかに話さない限りはね」
「あ、はぐらかした~~。 気になる~~!! でも、それじゃ仕方ない、か。 じゃぁ、またね。 パパも無理しないで、お仕事頑張ってね」
「ああ、ひいかも明るく元気でな。 じゃ、おやすみ」
ママが私に話してくれる日、いつか来るのかな。
金曜日の事。
次の授業は芸術で、美術教室に移動しなくちゃいけなかったんだけど……廊下で蹴つまづいちゃったの。
段差も何も無い所なのに、シューズが突っ掛かっちゃって……ちょっと、ボー―ッとしちゃってたのかな。
「いてててて……」 膝を軽く擦りむいちゃったけど、大した傷じゃなくて良かった、なんて思ってたら、後ろから声が飛んできてびっくり。
「おい、ひいか! 大丈夫か!!」
「あ、きゆりちゃん……恥ずかしいとこ、見られちゃった、あはは。 大丈夫、ほら、軽い擦り傷だから」
でも、きゆりちゃんに、 「後ろから見てたけど、ひいか、脚が上がってなかったぞ。 場所によっては大怪我に繋がるかもしれないんだ、気を付けろよ」 って叱られちゃったの。
「うん、分かったよ。 ありがとう」
きゆりちゃんは右手を挙げながら、私を抜き去っていったけど、私、注意力が足りないよね……。
いよいよやってきたよ、日曜日。
この3日間、この日の為に色々と考えてきたんだから。
服はもちろん、パパからの贈り物、小さな花柄で一杯の、淡いクリーム色ワンピース!
まずはママにお披露目だよね。
「ひいか、誕生日おめでとう! ってそれ、パパがこの前送ってきたドレスね! 良く似合ってるじゃない!!」
ま、ママの場合はパパ補正が入っちゃうから、ちゃんとした評価が出来てるか怪しいんだよね~~。
キッチンを見ると、少しずつお誕生日会の料理の準備を始めてるみたい……ありがとう、ママ。
「じゃぁ、行ってきま~~す! 昼過ぎには戻ってくるからね、ママ」
「はい、行ってらっしゃい! ひむかちゃんを連れて帰ってくるの、楽しみに待ってるわね」
ガゼボでひむちゃんと合流……反応はどうかな。
「ひいちゃん、おはよー! お誕生日おめでとう! ってそれ、可愛いドレスだね~~! 凄く似合ってるよ~~!!」
ママと同じような感想だね、あはは。
「おはよー、ひむちゃん。 ありがとう~~、嬉しいな、褒めてくれて。 早速、最高の誕生日になる予感がするよ」
「あはは〜〜。 じゃぁ、行こっか、神社に」
ひむちゃんと二人きりで、この前歩いた参道へ向かっていく。
今日は私、ひむちゃんウオッチングもするの……冴先生が言ってた事が気になるしね。
白い鳥居の前から、あのそびえ立つ石段を登り始めた時、ひむちゃんの歩き方に違和感が……。
「あれっ? ひむちゃん、歩き方、ちょっと変わった?? 何っていうか、ベタベタ歩いてるみたいな……」
私がそう言うとひむちゃん、びっくり! って顔をして、 「やっぱひいちゃん、観察眼が鋭いなぁ。 実はきゆりちゃんに、登山する時の歩き方を教えてもらって、試してるの」 って。
何時の間に……あっ、この前ひむちゃん、きゆりちゃんから歩き方のトレーニングとコツを教えてもらうみたいな事、言ってたよ……それかぁ。
「今までの歩き方だと、平地ではいいけど、登山じゃダメなんだって。 で、このベタベタ歩きはフラット歩行っていうみたい」
それが、きゆりちゃんが言うコツ、ってやつなんだね。
「へぇ~~、ひいかもそれ、真似していい?」
「もちろん。 ま、ただの受け売りなんだけどね。 前かがみはダメ、っていうのも気を付けなきゃいけないんだって」
ひむちゃん、どんどん新しい事にチャレンジしていく……私、置いていかれそうで不安だなぁ。
モンスター石段にノックアウトされそうになりながら、何とか神社に到着……もう、脚がガクガクしてるよぉ~~。
ん? 今日はちょっと賑やかじゃない? 何かイベントやってるのかな……。
あ、これか……ひむちゃんがこの前来た時に興味を持った、社務所の隣の建物……そこで、手には扇、頭には髪飾り、身体にはパリッとした衣装を着込んだ巫女さんが3人、和風な演奏に合わせて舞ってるよ。
「ゆったりしてて優雅だなぁ。 普段の巫女さんの落ち着いたたたずまいとは違った魅力を感じるよ」
あっ、こりゃまたひむちゃん、憧れモード発動してる?!
だけど、目を奪われるのも無理ないや、これは。
「ほんと、観てると心が洗われるような、清々しい気持ちになるよね。 早速、誕生日をお祝いされてる、って感じがするよ」
「うん。 神様にもおめでとう、って祝福されてるみたい。 ひいちゃん、改めて、誕生日おめでとう!」
「うん、ありがとう! ひいか、一足先に16歳になったよ」
「私もすぐ追いかけるからね。 でも……」
「でも?! ひむちゃん、どうしたの?」
ひむちゃんから、でも、っていう言葉が出る時って、突拍子も無い事を言い出すかもしれないから、ドキッとするよ。
「私、この舞と音楽、何処かで観たり聴いたりした事があるような……。 デジャヴなのかな……。 全く初めてなはずなんだけどなぁ」
ほら! やっぱ来た!!
「この前、神社に来るの初めて、って言ってたよね。 そんな機会……」
そこまで言った時、私、一つ思い出したよ。
「あっ! そう言えば宮司さんが、ひむちゃんがほんの小さな頃に会った事がある、って言ってたような……」
「うーーん……。 でも、私自身、その当時の事は全く覚えてないからなぁ。 何ていうのかなぁ……懐かしい? っていうのも違うし……」
何だかひむちゃん、危ない妄想の沼にハマっていってない??
「ひむちゃん、またそんな……変な事、言ってる……」
あらら……私の声、耳に届いてないみたい……もう、ひむちゃんの視線、巫女さんたちの舞に釘付けになってるんだもん。
本編の第34話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
今回は本編に無いエピソードを色々と挿入しました。
本編のストーリーに絡むように組み立てる……物語を肉付けしていく感覚が楽しいです。




