15 あのコ、何かに取り憑かれてるの?
いつも読んでいただき、感謝です。
話の展開上、ここから新しい章(第三章)に突入です。
土曜日の夜、私は明日に備えて、リュックの中身を準備中。
「温泉なんだからもちろん、お風呂グッズと着替えがいるよね。 あと、水筒と……絵日記帳も。 何時どこで、ひむちゃんが超常現象に出くわすか分からないもん。 双眼鏡もあった方がいいかな……」
すると、ママが私を呼ぶ声がして、ダイニングに向かうと、 「ひむかちゃん達には何から何までお世話になりっ放しで……お礼もできず申し訳ないわ。 せめて宜しく言っておいてね、ひいか」 って。
「うん、分かった。 伝えとくよ」
日曜日は朝早くからおめめパッチリ、体調もバッチリ……遠くに出掛ける前って、いつもそう。
楽しみが待ってるから……気分、アガるよね〜〜。
「じゃぁ、行ってくるね~~、ママ!」
今日も気合入れて、オレンジの暖色系花柄ワンピースでコーデしてみたよ。
「行ってらっしゃい! 思う存分、楽しんでらっしゃいね」
「お待たせしました~~、おばさま、ひむちゃん!」 ガゼボに辿り着くと……ん? 何やら二人で話し合ってるとこだった。
「おはよー、ひいちゃん。 さっき偶然、ここできゆりちゃんと出会ったんだよ、こんな朝早くに」
こんな所で?! 珍しい……って言うより、初めてだよ。
この道の先には、ひむちゃんの家と、あの小径しかないけど……。
「えっ?! きゆりちゃんが?! ひむちゃんちに何か用事でもあったの?」
「ううん、違うよ。 ホントに偶然だったんだもん。 凄い重そうなリュックを背負ってた……何でも、山岳部の自主トレなんだって」
「休みの日もトレーニングなの? まさか……この前通ったあの小径に向かっていった、とか?」
「そうそう! ひいちゃん、聞いてよ~~。 きゆりちゃん、あの辛かった石段の事、[うってつけの石段]って言ったんだよ~~」
ひむちゃん、よっぽど衝撃的だったのか、目をまん丸にしてる。
しかも、声、裏返ってるし……あはは、ある意味恐怖だ……。
「うってつけのって……あの小径がトレーニング道場、って事? 無理無理無理、山岳部、ひいか、1日も持たないよぉ」
「で、アレをスイスイ上り下りするには、トレーニングとコツが必要だって言うの」
アレをスイスイ……絶対無理っぽいけど、この前私たちは、それをやってのけた人を目の当たりにしてるのよね。
「トレーニングと……コツ? も必要なのね。 コツって言うのが気になるなぁ……どんなのなの?」
「あ、それは明日、学校で教えてあげようか、だって。 急いでたみたいだから、きゆりちゃん」
「ひいか、コツだけでいいよ。 トレーニングなんて続けれそうにないもん」
あっ! 今ひむちゃん、呆れた~~って顔、したよね?
「で、きゆりちゃん、面白いの。 お母さんとひいちゃんと三人で、今から棗海岸へ行くって言ったら、まだ五月だし泳げないぞ、だって! 何でも運動に結び付けるの、きゆりちゃんらしいよね」
「あはは……ひいか、きゆりちゃんが親友でなくて良かったよぉ~~」
毎日がしごき道場になりそうだよぉ。
「じゃぁ、そろそろ出発しますか」
頃合いを見計らってたのか、おばさまがここぞと声を掛けて……そう言えば、私たちの会話に全然入ってこなかったけど……あんな石段、そんなの努力よ! って言われそうだから、そっとしとこっと。
高校の前を通り過ぎ、更に10分ほど歩いて古河町駅に到着すると、おばさまが3人分の切符を買ってくれたの。
「今日は西方面の電車に乗るけど、逆に東方面に1駅乗ると、月宮神社前駅に着くの」
あ、それ、ママが言ってたな、この前。
「そこから歩いて10分で神社に行けるんだけど、それだと、本来の参道、ほら、この前、凄い石段を上り下りした参道、あそこを通らないから。 言い換えると……そうね……裏口入学、みたいなものだから、電車で神社に行くのはお勧めできないな」
ママ、聞いてる~~? ママの言ってたルート、裏口入学だって~~、あはは。
ママにこの衝撃的な事実を伝えるべき?
でも、もしママに伝えて、それじゃぁ、あの小径で行こう! ってなったら怖いし……。
「ひいか、神様が大目に見てくれるんだったら、裏口入学がいいよぉ~~。 だって、大変だったんだもん」 って、言っちゃった。
二人とも笑ってくれたから、ま、いっか。
初めての電車旅……窓の外を流れる古河町の街並みをついつい眺めちゃう。
気が付いたら、棗海岸駅に到着してた。
改札を出ると、目の前にはどこまでも続く砂浜……あっ、ボートも数え切れないほど浮かんでるよ。
一番テンションが上がってるのは、私たちよりもおばさまみたい。
「わぁ~~、懐かしいなぁ、ここ。 お母さん、ここにはちょっとした想い出があるの。 内緒だけどね、あは」 とか言いながら辺りを見回して、 「あのベンチ、そのまま残ってるかな……あっ、あった!」 って言って、大喜びでそっちに向かって行っちゃった。
あのおばさまを、そこまでアゲアゲにするほどの想い出が気になるけど、内緒だって釘、刺されちゃってるもんなぁ。
ヒントはあのベンチだね……なんて、探偵ごっこはここまでにして、 「わぁ~~、海だよ! キラキラしてて綺麗!」 折角だもん、景色を堪能しなくちゃね。
「うん、キラキラ輝いてて綺麗だね~~。 で、あの島……山肌の木々の緑がくっきりしてて……」
ひむちゃんも堪能してるねぇ~~、って、島? シマって島、だよね?!
さっき、喜び勇んでベンチに向かってたおばさまも固まってる。
「……?! ひむちゃん、ちょっと待って!! 島? 島って、どこに見えるの??」
あまりにびっくりしたから、声、裏返っちゃったよ。
「あれっ?! ほら、あそこ……海の向こうに……」
「……ごめん、いくら海をガン見しても、ひいかには全く見えないよ」
「うん。 お母さんにも全く……」
今までは、ほつきさん、ウサギのぬいぐるみ、舟……今回は島! スケールが違い過ぎる!!
「ちょっと二人とも、あんなに大きくてはっきり見えてる島が、まさか不思議な現象だって言うの?」
「うん、そのまさかだよ。 それにしても……今までとはレベルが違うよね、島、なんて。 一体どんなのが見えてるの? ひいかたちにも教えて」
まずは落ち着いて……リュックから絵日記帳を取り出し、ひむちゃんに描いてもらう。
「凄い! 用意周到だね。 って、舟の事を訊きにここに来たんだから、絵日記帳、持ってて当然か……忘れかけてたよ。 分かった、描いてみるよ」
ん? 今までのひむちゃんだったら、山の輪郭を描いておしまい、って感じだっただろうけど、今日は割と細かく描いてる……スケッチっぽくなってる!
「ひむちゃん、前より絵、ちょっとだけ上手くなったんじゃない?」
涙ぐましい努力の成果、だったりする? それなら私、素直に褒めちゃう。
「いやいや、まだ練習始めて10日くらいだよ。 そんな急には上手くならないよぉ~~」
あはは、ひむちゃん、照れてる、あはは。
「で、次は説明だね。 えっと……」
・棗海岸から1kmくらい向こうの海にある。
・島のほとんどは山になってる。 稜線はゆったりした三角形?
・深い森が山肌を覆ってる。 道とか建物とかは見えない。
・海に面してる所は、砂浜が広がってるように見える。
「こんなところかな」
1kmって、結構近くない? 深い森……手付かずな自然がいっぱいな山、ってところかな。
私がスケッチの構図を考えてると、横からおばさまが、 「これ、何となく桜島みたいだね」 って。
「桜島? こんな感じの島があるの? じゃぁ、それは考察欄に書いておくね」
ひむちゃん、その反応は桜島、知らないんだね。
私は漫画で見た事あるから、ちょっと想像できるよ……アシスト有難う、おばさま。
私が描きあげたイラストを観ながら、 「それにしても、島なんて……私にそれを見せる事によって、誰が何をさせようとしてるんだろう」 ひむちゃんがふと、そんな事を呟いたの。
「何をさせる、ってひむちゃん、それ、神様目線になってるよ」
「だって、次々に私にしか見えないものを見せてくるなんて、普通じゃないもん。 もう、神様か誰かが私に何かをさせようとしてるんじゃないか、って思う方が楽に思えて」
ひむちゃんに超常現象を見せられる存在が仮にいるとして……目的はやっぱ、ひむちゃんに何かをさせようとしてる、って考えるのが自然よね。
でも、小説とか漫画の中の世界ならともかく、無理でしょ、そんなの。
ひむちゃんじゃなくても、そんな目に遭ったら思い悩むよ。
「神様、ねぇ」
私がパッと思い浮かんで口にしただけの言葉を、おばさまが復唱するかのように呟いてる……まるで、その存在を信じてるかのように。
本編の第30話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
ここで初めて[隠された島]をひむかが認識しますが、ここを境に、神様か誰かが私に何かをさせようとしてる、と思い込み始めます。
それをひいか視点から見ると、どう感じるだろうか……そこを意識して書き進めていこうと思います。




