14 あのコ以外の子にも髪型、褒めてもらったよ
いつも読んでいただき、感謝です。
「はい、ひむかです。 初めまして。 ところで、宮司さんって……」
ひむちゃんが尋ねると、 「宮司というのは、神社の最高責任者にあたる神職を指す職位なのです。 もうずいぶん長い間、この神社で宮司を務めさせていただいております」 だって。
「やっぱり、一番偉い人、なんですね。 お母さんとは昔からの知り合いなんですね」
「はい、十数年来になるでしょうか。 縁がございまして。 実は……ひむかさんとも、ほんの小さな頃にお会いした事があるのですよ」
ん? 宮司さん、何か今、サラッとカミングアウトした??
「えっ?! あづちさん、そこまで……」
んん? おばさま、慌てて遮ろうとしてる??
「へぇ~~、私が物心が付く前、なのかな。 記憶に残らないくらい、小さな頃?」
「はい。 本当に大きく、立派になられましたね。 明美さんの強い愛情を一身に受けてこられたのが私にも伝わってくるようです」
宮司さん、おばさまにアイコンタクトしたような……。
ひむちゃんはサラッと流したけど、この空気感……おばさまと宮司さんには、何か共通の秘密みたいなのがありそうだよ?
でも、そっとしておく方が良さそうね……育児相談に乗ってもらっただけ、かも知れないし。
「はい! 私の自慢のお母さんだもん」
「そうですね。 明美さん、娘さんをここまで立派に育てられて、願いが叶いましたね。 子宝、子育ての御利益が成って、宮司として感無量です」
って事は……おばさまは子宝か子育てのご利益を願って、この神社に足繫く通ってた、って事か……。
あ~~ぁ、言葉の端々が気になる~~。
「あづちさん……その節は、本当にありがとうございました」
「では。 また神社にお越しの際にはお声掛けください。 心から歓迎致しますので。 八百万の神々のご加護がありますように」
その日の夜、私はママに、神社での出来事を報告したの。
もちろん、ひむちゃんに降りかかってる超常現象に関わる事は伏せて、だけど。
ママ、懐かしそうに遠い目をしながら、私の話を聴いてた……昔見た景色とか思い出とかが蘇ってきたのかな。
私がママに一番訊きたかったのは、神社へ抜けるあの小径を知ってるかどうかだったんだけど、 「あぁ、あそこの道って、神社に通じてたのね! 知らなかった~~」 だって。
「結婚前は街中に住んでたからね~~。 古河町駅から電車に乗って一駅、降りたらすぐだったの」
私、肝心な事を見落としてた……ママが神社に行ったの、結婚前だったんだ。
「わぁ~~、ずるいよ、ママ! 凄かったんだから、あの小径。 ママも一回、体験してよ~~」
やり場のない悔しさをぶつけるところが無くなって、ママに意味の分かんない八つ当たりしちゃった、あはは。
「そう言えば、こっちに来てから一回も神社に行ってないわ。 久し振りに行きたくなったかも。 ひいかも付き合ってみる? でも、その凄かった道はヤバそうだから、電車で行こうかな~~」
「あ~~っ、ズルいよ、ママ~~」
翌朝、ガゼボで合流するなり、ひむちゃんが妙な提案をしてきたの。
「ひいちゃん、今日から私、登下校の時にちょっと早歩きしてみよう、って思ってるの」
詳しく事情を訊いてみると、おばさまが昨日、スイスイって石段を上って行くのを目の当たりにして、自分もあのくらい歩けるようになりたい! って思ったみたい。
おばさまは、 『願うだけじゃダメ、叶えてもらうためには努力もします!』 って誓いを立てて、何と3年間、毎日欠かさずあの小径を通ったんだって……もう、その芯の強さ、尊敬しかないよ。
「ひいちゃんを巻き込んじゃう事になるけど……」 ひむちゃんは申し訳なさそうに言ったけど、私、おばさまのそのエピソードに感動しちゃって……ついついオッケーしちゃった。
「うん、分かったよ。 ひいかも付き合う。 でも、足手まといになるのが怖いなぁ……」
そんな私の不安を、 「ううん、私も今日から急に、だから。 無理のないように、最初は”ほんのちょっと早歩き”から始めるよ」 って、拭ってくれたの。
今は片道30分かけてるけど、どのくらいまで早くなるのかな……それを励みに頑張ってみる!!
その日の放課後、私は厚生委員の集会に参加したの。
私は副委員……正委員の朝子ちゃんと一緒に。
「ひいかちゃん、そう言えば昼休憩の時、ひむかちゃんを図書室で見たよー」
まぁ、ひむちゃんは読書好きだから、私にとっては別に不思議でもないかな。
「ひむちゃん、何か小説でも探してたのかな?」
すると、朝子ちゃんから意外な答えが。
「ううん、ひむかちゃん、郷土資料のコーナーにいたよー。 何か、神社の本を色々と探してたみたいー」
「あ、ひむちゃんと昨日、月宮神社に行ったの。 それで、何か調べたくなったものがあったんじゃないかな」
「そうなんだー。 気になった事、すぐ調べるって、ひむかちゃん、凄いねー」
「あっ、それとー」 朝子ちゃん、私の頭に視線を移すと、 「ひいかちゃん、髪、久し振りにツインテに戻したんだねー」 って……私がツインテにしてたの、覚えててくれてたの?
「うん。 ちょっと自分に気合いを入れてみたくなって、ね」
すると朝子ちゃん、不思議な事を尋ねてきたの。
「私、今、ツインテにしてるでしょー? これって何時からだと思うー?」
「うーん……もう何年も前からしてる気がするけど……」
「えっとねー、小学6年の時からだよー。 きっかけはー、ひいかちゃんなのー」
えっ?! 私がきっかけ?
「ひいかちゃん、止めちゃったよねー、ツインテ。 私、凄く可愛いなぁーって思ったんだけどなぁー。 代わりに私がやってみたくなってー。 ひいかちゃんと被ったら、敵いっこないもん」
「そうだったんだ。 でも、今はもう、朝子ちゃんのトレードマークだよね。 似合ってるもん」
「ううん、やっぱ、本家のツインテを目の前にしたら、敵いっこないよー。 今日、朝からひいかちゃん、クラスメイトの皆から髪型を褒められてたの、見てたのー。 私、明日から髪型、おさげに戻そうかなーって」
「朝子ちゃん……何だかひいか、悪い事しちゃったかなぁ」
「ううん、逆だよー。 憧れのツインテを4年間も出来て満足してるのー。 今さっき、トレードマークだよ、って言ってくれたよねー。 ツインテの神から言われて嬉しかったー。 もう、悔いはないよー」
「じゃぁ、朝子ちゃんの分もひいか、ツインテに磨きをかけるよ」
「うん! 私の憧れの髪形、これからはずっと続けてねー」
翌々日の水曜日。
ひむちゃんが、今度の日曜日に温泉に行かない? って、私を誘ってくれたの。
おばさまの提案らしい。
どうも昨日の夜、ひむちゃんが神社で描いた舟を見て、よく似たものを昔、棗海岸で見た事があるって、おばさまが思い付いたらしくて。
目的は舟を見る事だけど、電車でもう一駅向こうに行けば、温泉もあるから、って事らしい。
神社の時もセッティングしてくれたけど、今回もおばさま発案のお出掛け……何だか最近、ワクワクイベント盛りだくさんだなぁ。
本編の第28~29話をベースに書き上げました。
☆今回気を付けた点☆
厚生委員の集会エピソードは、スピンオフで追加したものです。
本編では序盤しか登場しなかった朝子に、髪型にまつわるエピソードを加える事で、ひいかサイドのストーリーらしさを出してみました。




