68 新戦力
ショッピングモールで出迎えてくれたのは、両隣に美女を侍らせた、俺と同い年ぐらいの男だった。
「何しに来た?」
「観光?」
「ふざけるな」
「ごめんなさい」
ふざけ過ぎたので素直に謝った。
だって目が怖いんだよ?
隣にいるポニーテールの人が。
指の間に何か挟んでいるし。
「実は俺達は北海道からフェリーで脱出したんだ。それで食料があればと思ったんだけど、人がいるなら諦めるよ」
「ちょっと待て、フェリーだと?」
「ああ。今、仙台港に泊まっているよ」
「ちょっと待っていてくれ。一度相談するから」
美女を侍らせた男は奥に引っ込んで行った。
その間、暇だったので、大橋と阿澄にゾンビを狩らせ、俺はモール全体を観察していた。
ん?何だかうっすらと膜のような物で覆われているような?
ゾンビもそれにぶつかっては弾かれている。
もしかして、俺と同じ様な奴がいるのかもな。
「待たせた、何だそのゾンビの山は?」
「待っている間、暇だったんで」
「もしかして、オレと同じ能力者か?」
「やったのは違うけど、あんたも何かの能力が?」
「ああ。俺のは盾を出す能力だ」
「モールを覆っているのはそれかな?俺はゾンビに命令できるよ」
「そうだ。だが命令できると言っても、そのゾンビの山はどうやったんだ?」
「それはこの2人がやった。多分見ていた人もいるだろ」
男が周囲に確認すると、やはり何人かは見ていたようだ。
「間違いないようだな。それで、フェリーなんだがまだ人は乗れるか?」
「まだ部屋もあるし、雑魚寝も可能だよ」
「俺達を乗せる事は出来るか?」
「大丈夫だけど、もうここには戻って来ないよ?俺達は南の島を目指しているから」
「もう一度相談させくれ。それと外で待たせて悪かったな。これで登って来てくれ」
男はそう言うと、2階の窓から縄梯子を降ろした。
縄梯子で2階に上がると、そこはフードコードだった。
男と一緒にいた、ポニーテールじゃない方の女性が席に案内し、お茶を出してくれた。
そして、ここにいる人達の輪に戻って行った。
全部で30人ぐらいだろうか。
ほとんど一般人っぽいが、中には自衛隊の服や白衣を着た人もいる。
その人達はすぐにどこかへ行ってしまったが。
話が終わったようで、先程の男がこちらにやって来る。
「待たせたな。全員ではないがフェリーに乗せてほしい」
「いいよ。でも用事かあるから、それを済まして戻って来てからになるけど」
「了解だ。戻って来るまでに準備をしておく。それと一つ相談があるのだが」
「何だろ?」
「ゾンビになってしまった奴がいるんだが、命令で何とか出来ないか?」
「んー、出来るけど助ける義理がないよね?」
「頼む。この通りだ」
深々と頭を下げてくる男。
見れば一人の女の子も、同じく頭を下げている。
うーん、どうしようか。
一つ条件を出してみるか。
「助けても良いが、一つ条件がある」
「何だ?言ってみろ」
「あんたに仲間になってほしい」
「そんなんで良いのか?元から一緒に行くつもりだったが」
「俺達には倒したい敵がいてね。そいつらを潰すのを手伝ってほしい」
「わかった。いいだろう。石川も手伝ってくれるか?」
「はい。裕を助けてくれるなら何でもする」
「その子も強いのか?」
「ああ。剣一本でゾンビの群れを相手に出来るぐらいには」
「それは凄いな。それじゃあそのゾンビの所に連れて行ってくれるか?」
「こっちだ」
男と石川さんと言う女の子の後をついて行く。
そこはカメラ等が置いてある警備室だった。
奥にあるベッドがある部屋に入ると、布でぐるぐる巻きになったゾンビが寝かされていた。
顔を見ると確かにゾンビで、口を塞がれているがウーウーと唸っている。
俺はそいつに近付き隷属の言葉を紡ぐ。
「死者の王が命じる。汝、我と契約し、隷属せよ」
(イエス ユア マジェスティ)
(ハヤクコノコウソクヲ、トイテホシインテスケド)
「これで隷属されたよ。拘束を解いてあげて」
「本当か?石川、口の拘束を解いてやれ」
石川さんがゾンビ男に近付き、口を塞いでいた布を取る。
女の子に噛み付く様子はない。
「裕!良かった!」
ゾンビ男に抱き付く女の子。
打算込みだが、助けてあげて良かったな。
それから石川さんは、体を拘束していた布を全部取り外す。
「ゾンビも成長して進化するから、外のゾンビを食べさせたら良いよ。言葉も喋れるようになるしね」
石川さんは、ゾンビを食べさせるという事に一瞬躊躇したが、喋れるようになると聞いて、ゾンビ男の手を引いて外に出て行った。
「ありがとう、助かった」
「いいよ。後で助けてもらうから」
「フェリーに乗せてもらえるばかりか梶まで助けてもらって。俺に出来る事なら何でもする」
「期待しているよ。それじゃ皆も待たせているのでそろそろ行くから」
俺達はさっき入って来たフードコートに戻った。
少し寄り道になってしまったが、新たな戦力が加わったので結果オーライだろう。




