67 仙台上陸
「な~みを、ちゃぷちゃぷ、ちゃぷちゃぷ、かきわけて~」
「福山さん、何ですかそれ?」
「早見先生、あたし知ってるッスよ!ひょっこりはんッス」
「違うわ!」
「あれ?『ちゃぷちゃぷ』、じゃなくて『ジャブジャブ』じゃなかったか?」
「そうだっけ?さすが藤原のオッサン、年の功だな」
「うるへー」
俺達は苫小牧を出発し、仙台へ向けて順調に進んでいた。
仙台までは15時間程かかるみたいなので、朝6時には出航していたから、着くのは21時ぐらいか。
なので俺達は、スカイデッキでこんなくだらない話で時間を潰していた。
他のメンバーは、沢城さんは負傷者や具合が悪くなった人達の治療をしている。
内田さんと大橋はトラクターの洗車中、茅野さんはブリッジで櫻井船長や小清水さんと話している。
阿澄と井口と久野は、生存者の中にいた子供達と遊んでいる。
阿澄と井口は子供達に紛れ込んでもわからないな。
悠木と杉田は、乗用車デッキで面白い車を見つけたと、何やら作業を行っている。
オッサンも手伝っているのだが、今は交代で休憩中とのことだ。
「あとどれくらいですかね」
「今が11時だから、10時間ぐらいか」
「長いですね。周りも海ばかりなので、ちょっと飽きます」
「まあ、ゾンビがいないだけマシだよ。仙台に着いたら嫌でも会う事になるだろうし」
「そうッスよ。今のうちに平和を堪能するッス」
「ああ、休めるのも今のうちだ」
「でも仙台には全員降りるわけではないんですよね?」
「そうだね。今回は内田さんと、護衛に大橋と阿澄を連れて行くだけだ」
「私はお留守番ですね」
「私は行くッスよ!」
「ダメだ。佐倉が沢城さんから剣術を習っているのは知ってるがまだ早い」
「むー。あと10時間で強くなるッス」
と言って、沢城さんの下へ駆けて行く。
いや10時間じゃ無理だろ。
沢城さんの邪魔にならない程度にお願いしたい。
今回の上陸の目的は、あくまで内田さんの家族の捜索なので、出来れば少数精鋭で臨みたい。
見つけた後に迅速に撤退するためにも。
戦力の茅野さん、久野、沢城さん、井口を残すのは防衛のためだ。
決して物語るのが面倒なわけではない。
わけではないよ?本当だよ?
そうしていると、オリカサさんが昼食が出来たと呼びに来てくれた。
早見さんとオッサンとレストランへと向かうと、途中ぞろぞろと皆が集まって来た。
しかし井口がいない、と思ったら既に席に着いていた。
「遅いんだよ!もうお腹ぺこぺこで死んじゃうかも!」
「お前が早いんだよ!」
「そんな事ないんだよ!カレー、カレー♪」
嬉しそうだし、まあ良いか。
こうして俺達は、束の間の平和を楽しみ、そして21時、予定通り仙台港へ到着した。
その日は港に停泊し、明日の朝から行動する事にした。
次の日、朝起きて朝食を食べ、準備を整えた俺と内田さん、大橋と阿澄はフェリーのエントランスに立っていた。
周りには見送りに皆が勢揃いしている。
あれだけ一緒に行きたがっていた佐倉も、ニコニコしてそこに立っていた。
着いて来ると思った早見さんも静かだ。
何があったのだろうか?
めちゃくちゃ怪しい。
「それじゃ茅野さん、後は任せるね」
「了解よ。安心して行ってらっしゃい」
「牛タン食べたいんだよ!頼んだんだよ!」
この女は食い意地が張りすぎなんだよ。
皆に笑顔で見送られるが怪しさが拭えない。
絶対悪巧みをしてそうだ。
まあ考えてもしょうがないので、俺達はトラックデッキへと向かった。
そこにはピカピカのトラクターと、アルファードが停まっている。
トラクターに内田さんと大橋が乗り込み、アルファードには俺と阿澄が乗り込む。
あれ?何か後ろが寂しくなってないか?
トランクには悠木の荷物が沢山あったはずだがなくなっている。
違う車に積み替えたのだろうか?
軽くなったから良いかと考え、そのまま搬出入口へ向かう。
そこでは杉田が待っていてくれて、搬出入口を開けてくれる。
「それじゃ行って来るよ」
「ああ、気をつけてな」
杉田と会話を交わし、遂に仙台の地へと降り立った。
周りに少数のゾンビがいたが、停止させトラクターで跳ね飛ばした。
生存者はいなさそうで、船がない事から海に逃げた人もいそうだな。
俺達は、事前に櫻井船長から周辺の地図を受け取っており、それを見ながら最初の目的地であるショッピングモールへと車を走らせる。
仙台も札幌や苫小牧と同じ様に、道路は事故車で溢れ、その周りにはゾンビが彷徨いている。
車はトラクターで押しのけ、ゾンビ共は俺が止め、大橋と阿澄で掃討する。
そして、港から西に道路を進み、目の前にショッピングモールが見えて来た。
そこの駐車場には車とゾンビの燃えかすが残っており、激しい戦闘があったのだろうと予測される。
それを横目にショッピングモールに進んで行くと、2階の窓から人が出て来た。
まだ生存者が残っていたんだな。
入口がバスで塞がれているので予想はしていたが。
そこで俺は、3人目の覚醒者と出会う事になった。




