55 俺達の戦いはこれからだ!
久しぶりに休めるとあって、オレは部屋で寛いでいた。
体はゾンビなので睡眠は必要ないのだが、精神的な休養は必要だ。
そして、気持ち良くウトウトしていると、扉からノックが聞こえた。
「カタナシ君、カタナシ君。ちょっと来てほしいんだ!」
扉を開くと、そこにいたのは阿澄だった。
阿澄に連れられ、7デッキの外、スカイデッキへと出た。
「パワーレベリングが終わったよ!」
「おお、良くやったな。それで久野は?」
「あっちにいるよ!」
阿澄が指差したのは、ブリッジの上だった。
そこには、月をバックにした・・・久野?
久野と思われる人影は、高く跳躍し俺の前に降り立った。
だが待ってほしい。
俺の記憶が確かなら、久野は小学生だったはずだ。
でも俺は今、見上げている。
そう、それはプロレスラーのようなゴツくてデカい体をしていたからだ。
しかし、顔は確かに久野なのだ。
プロレスラーの体に、久野の頭部。
アンバランス感が凄まじい。
「ドウデゴゼーマスカ。オオキクナッタデスヨ」
「久野ちゃん、羨ましいよ!」
どや顔の久野と、心底羨ましそうな阿澄。
でも俺は非情なんだよ?
「却下。やり直し」
「エーッ!ナンデデゴゼーマスカ!?」
「カタナシ君、酷いよ!」
「何でも酷いもあるか!それで人前に出せるわけがないだろ!」
2人はシュンとなるが、久野のためだからしょうがない。
井口の件があるから、黒目に進化すれば体も元に戻るだろう。
こちらをチラチラと見ながら、ゾンビの下へ戻る2人。
そんなに大きくなりたいのか?
ナイスバディならわかるがプロレスラーだぞ?
そんな事を考えながら、部屋に戻り朝まで休む事にする。
新しい朝が来た!
空は快晴、絶好の出航日和だ。
周りはゾンビの死体だらけだが。
俺は朝ご飯を食べに食堂へ向かう。
そこには仕事中の乗務員以外、全員が揃っていた。
久野もあれから頑張ったのだろう、元の姿に戻っていた。
阿澄と2人で睨んできたが。
阿澄よ、お前もか。
ゾンビにも反抗期があるのかな?
大橋は綺麗なままでいてほしいな。
内田さんと佐倉と、楽しそうにお喋りしている大橋を見てそう思う。
厨房のカウンターにいたオリカサさんから、朝ご飯を受け取り、櫻井船長の下へ向った。
オリカサさんとスギヤマ君は、コック長のオオハラさんの手伝いをする事にしたそうだ。
櫻井船長が座るテーブルの対面に座り、ご飯を食べながら今後の予定を話し合う。
「これからどうするんだい?」
「まずは仙台に寄ろうと思う。それから銚子かな。そこに家族がいる仲間がいるんでね」
「それは助かる。お客さんの中には仙台から来た人達もいるんだ。それに燃料も足したいしね。ただ銚子はフェリーを停泊できないかも」
「そうか。近くに停泊できる場所は?」
「大洗ならできるから、そこから陸路かな」
「それじゃその予定で頼むよ」
「了解した。ところで南の島はどこか決めているのかい?」
「伊豆諸島に北海道の形に似た島があるから、今のところはそこかな」
「ん?ああ、あそこか。あそこならフェリーも通っているし問題ないだろう」
こうして今後の予定は決まった。
辺りを見回すと、ここまで一緒に来た皆が楽しそうに話をしている。
早見さんは、沢城さん、茅野さん、井口と大人女子トーク中だ。
佐倉は、内田さん、大橋と女子大生っぽい話をしている。
正直、オジサンには意味不明だ。
デレスタって何?
オッサンは、杉田と、あれは機関長のナリタさんだっけかな。
3人で車の話で盛り上がっている。
阿澄と久野は、昨日ので仲良くなったみたいだ。
まるで姉妹のようだ。
長かったが、ようやくここまで来れた。
色々な問題が多々あるが、今はこの時間を大事にしよう。
そして、また今日から戦いの日々が続いて行くだろう。
この世界を救うために!
そう、俺達の戦いはこれからだ!~完~
そんなわけがない。
世界を救う?
俺は南の島でゆっくりしたいだけだ。
そのついでに仲間を拾ったり、東京で秘密組織を倒したりするかもしれないが。
欲を言えば、島を守るために戦艦も欲しいけどね。
何だかそのうち出会える気がするけど。
そんな事よりまずは仙台だ。
仙台には内田さんの実家があるらしいので、一度様子を見に行こうと思う。
家族が生き残っていれば良いけどな。
そして、朝の団欒を終え、俺達は南の島への旅路を進むため、出航するのであった。
~2章 完~




