45 フェリー船外戦
折角合流できたのだが、ここで一旦二手に別れる事にする。
発電所へ生存者を運ぶ班と、フェリーを手に入れる班だ。
車の編成はこんな感じだ。
まずバスには、ショッピングモールの生存者達18人を乗せ運転も任せた。
高校生達の自衛隊車両には、高校生達と小学生6人。
トラックの二台は、杉田とオッサンに任せ、保存の効く食料は発電所に置いてきてもらう。
アルファードには早見さんが運転で、沢城さんと内田さんと佐倉と悠木とトマツさんが乗り込む。
以上が発電所班だ。
残りの俺と茅野さん、大橋と阿澄と井口でフェリー班だ。
皆と話した結果、フェリーを手に入れるために最大戦力を投入する事にした。
発電所班を見送り、俺達はトラクターでフェリー乗り場を目指す。
運転席には俺が座り、茅野さんには後ろに立ってもらっている。
膝抱っこ?滅っせられますよ?
大橋と阿澄は屋根の上で寝っ転がっている。
井口は大きいのでバケットに入れて運んだ。
「ワタシノアツカイダケ、ヒドインダヨ!」
という文句は無視しておいた。
道中のゾンビは、井口が恨みをぶつけるように飛び跳ねて潰していった。
そして港が近付き、ようやくフェリー乗り場へ到着したのは良いのだが、そこにはゾンビが溢れていた。
俺達と同様に、フェリーで逃げようとした人達だろう。
フェリーに乗る前に噛まれたのか、乗った後に噛まれたのか、今ではわからないほど港にゾンビが溢れていて、全員が船内に入ろうと押し寄せている。
あのゾンビの動きからして、船内にはまだ生存者がいるかもしれないな。
俺はトラクターでゾンビの群れに突っ込んだ。
タイヤからブチブチという潰した嫌な感触が伝わるが、今となっては慣れてしまった。
数体のゾンビを潰した後、動きを停止させる。
そこに配下の3人を投入する。
「さあ、レベルアップの時間だ!」
3人は次々とゾンビを葬っていく。
ある者は首と胴体を切り離され、ある者は四肢をもがれ頭を潰され、ある者は上空からのスタンプで圧縮され潰れる。
3人の強さは圧倒的だった。
だが俺は油断しない。
必ずどこかにいるはずだからだ。
3人と同じ紫目の進化体が。
若本のような黒目ゾンビもいるかもしれない。
俺は周囲を警戒する。
いた。
ゾンビの影を縫うように、こちらに近付いてくる紫目ゾンビが。
「茅野さん、出番だよ」
「わかったわ。目標はあいつね」
茅野さんも気付いてくれて、目標を定める。
次の瞬間には、紫目ゾンビはそこに倒れて動かなくなった。
視線である程度は範囲を限定できるみたいだ。
これで配下が間違えて滅っせられる危険も減った。
茅野さんにはそのまま、遠くにいる雑魚も滅してもらった。
俺が止め、配下が雑魚を殲滅し、茅野さんが進化個体を狙う。
これが、俺達がここに来るまでに話し合ったコンビネーションだ。
ただしこれは、見晴らしの良い外だから通じる作戦だ。
フェリー内部では個々の力が試される。
そうして配下の戦いを眺めていると、大橋と阿澄のある変化に気付いた。
「足太くない?」
厳密に言うと、移動のために地面を蹴る瞬間だけ、元の足の3倍になっているのだ。
海賊王になる気じゃないよね?
当然スピードも以前の3倍だ。
しかも、目が黒くなっている。
遂に進化したのだ。
後で話すのが楽しみだな。
一方、井口はまだ成り立てなので時間がかかりそうだ。
進化したらもっと大きくはならないよね?
それだけが心配だ。
フェリーの外にいたゾンビを全て倒し、一旦トラクターに集合する。
「どうだ調子は?」
「凄いです!力が溢れてきます!」
「周りが止まって見えるよ!」
「フタリダケ、ズルインダヨ」
予想通り流暢に話せるようになったな。
佐倉と内田さんの顔が楽しみだ。
阿澄よ、実際止まっていたんだが?
井口はこれからに期待だな。
しかし、皆がここまで強くなると、オレの存在意義がなくなる気がする。
茅野さんもいるし。
俺も強くならないと。
あれ以来、右目が光る事もないしな。
配下の調子も大丈夫そうなので、改めてフェリーの確認をする。
結構大きいな。
200mぐらいだろうか。
船体には『いしかり』と書いてあるな。
フェリーは乗船用の入口と、車両の搬入用の入口が開いたままになっていて、そこからゾンビが侵入したようだ。
船の上の部分は4階分ぐらいあるが、人がいるような気配はない。
まずは下から攻めて、上のデッキを目指す事にするか。
ブリッジまで行けば何かわかるだろう。
船を動かせる人がいてくれるのを願いながら、俺達5人は先へと進む。




