37 何度でも
防衛役が俺とヒヤマ、イノウエのお父さんと、俺の父さんの四人になり、火力が増した事でゾンビの数は減っていくが、まだ足りない。
車を出すにも、周囲を囲まれていては走る事ができない。
何か手はないか?
と、考えてると父さんが話しかけて来た。
「ジュン、よくここまで来てくれたな。父さん嬉しいぞ」
「何だよいきなり。また安心するには早いよ」
「いや、息子の成長を見れて嬉しいんだ」
「何だよそれ」
「聞けジュン。あそこに車が見えるな?」
「父さんの車でしょ?」
「ああ。俺があそこまで走るから援護しろ」
「なっ!無理だよ父さん!」
「だがこのままじゃジリ貧だ。父さんが囮になるから、その隙にお前は皆を連れて出発しろ」
「ダメだ!それじゃ父さんが!」
「母さんを頼むぞ!」
「父さんっ!」
父さんがゾンビの群れに飛び込んで行く。
「クッ!ヒヤマ、イノウエさん!父さんの前にいるゾンビを狙って下さい!」
「わかった!」
「了解!」
二人がショットガンを撃ってくれたおかげで、車までの道が開ける。
父さんはその隙に車まで辿り着き、車に乗り込む事に成功する。
エンジンをかけ、すぐさま大音量で音楽をかける。
辺りに鳴り響くのは、北海道を代表する男女デュオの歌、母さんの大好きな歌だ。
父さんが乗った車は、海とは反対側の北に向かって走って行く。
「父さん!」
俺は声が枯れるまで叫んだ。
そう、何度でも、何度でも、何度でもだ。
母さんも車の中から何か叫んでいる。
しかし時は待ってくれない。
避難者の中で車を運転できる人が、運転席に座り出発する。
父さんが切り開いてくれた道を走る。
俺はまた、大事な人を失ってしまった。
車が出発しても俺は車の屋根の上で寝そべっていた。
こんな世界になっても空は青いんだな。
そう物思いに耽っていると声をかけてくる人が。
「スワベ君」
イノウエとキタムラとヒヤマが心配して来てくれたのだ。
「どうした?」
「大丈夫?」
「ああ。俺はまだ母さんを守らないといけないからな。父さんとの約束だ」
そうだ。
俺はまだ立ち止まれない。
発電所まで皆を連れて行くまでは。
海までの道のりは順調だった。
それもショットガンを手に入れる事ができ、殲滅力が各段に上がったからだ。
行く手を遮るゾンビ共は全て撃ち殺した。
バスのスピードも緩めなくて大丈夫なため、後ろから迫って来るゾンビも皆無だ。
そして俺達は港に着いた。
そこには何隻かの船が停泊していた。
避難者の中に二人漁師さんがいて、ここに船があるそうだ。
船が二隻もあれば、無理をすれば全員乗れるだろう。
漁師さんが船の準備をしている間、俺はヒヤマと周囲の警戒を行う。
イノウエの父さんは皆を取りまとめ中だ。
「静かだな」
「街中の喧騒が嘘みたいだね」
港にはゾンビもいなく閑散としていた。
人がいないから集まって来ないのだろうか。
すると遠くの方にゾンビの群れが見えた。
諦めずに追い掛けて来たみたいだ。
そんなに人を食いたいのかよ。
俺達は急ぎ皆の所に戻り、乗船を急がせる。
全員が乗ったのを確認し船が出た時には、ゾンビはあと100m程の所までに迫っていた。
「何とか間に合ったな」
「これは置き土産だ!」
ここまで俺達を運んでくれた護送車と人員輸送車に、ヒヤマがショットガンを構えガソリンタンクへと発砲する。
それは見事ガソリンに引火し、爆発と共に二台の車を燃え上がらせる。
火はゾンビにも燃え移りその身を焼いていく。
一部のゾンビは止まる事ができず、海に落ちていく。
俺達はやっと市街から抜けられたのだと安心する。
後は発電所に無事に到着するだけだ。
漁師さんが船の無線を使ったところ発電所と無線が繋がり、案の定向こうは自衛隊の守りのおかげで無事みたいだ。
左にフェリーターミナルのフェリーを横目に発電所へ向かう。
フェリーはまだ無事みたいだな。
そして先を進み、発電所で俺達を待っていたのは意外な再会だった。




