29 脱出成功!
技術室でのヒヤマ君の物色が終わりました。
集めた物は、バッテリー式のドリル、ガス式の釘打ち機、工作用の鉄パイプ、後はテープ等の小物でした。
ドリルをキタムラさんが、釘打ち機をヒヤマ君が、鉄パイプを私が持ちました。
鉄パイプなんて使える気がしませんが。
残りの小物はヒヤマ君が持っていたバッグに詰めていました。
準備も終わったので、私達は職員室へ行くためカーテンを下に垂らしました。
「ぼ、僕が先に降りて下の様子を見ます」
あら、ヒヤマ君も男の子なのね。
関心しながら降りる様子を見守ります。
辺りの様子を確認したヒヤマ君が手を上に上げ輪っかを作り、オーケーのサインをしてきます。
次はキタムラさんが降りる事になっています。
私は先生なので、技術室に誰か入って来ないか見張らないといけませんから。
下ではヒヤマ君が、キタムラさんが降りるのを心配そうに、ではありませんね。
スカートの中に目が釘付けです。
後で説教ですね。
でもやっぱり男の子なのね。
今日は私、パンツスーツで良かったわ。
無事に私も下に降りる事ができ、ヒヤマ君が職員室の中を覗き込みます。
先生達は皆、生徒の引率で付いていったのでしょう、職員室の中には誰もいませんでした。
いえ、一人だけいました。
放送室にいたはずの教頭先生です。
しかも都合悪くカギの保管庫の前でフラフラしています。
既にゾンビ化しているみたいですね。
するとヒヤマ君が素早く動き、釘打ち機から釘を発射し教頭先生の頭に打ち込みます。
あなた何者?
いつもとは違うヒヤマ君に驚きを隠せません。
倒れた教頭先生は立ち上がる気配がないので、私達は保管庫から無事にカギをゲットする事ができました。
さて、問題はここからです。
バスがある駐車場までは50m程の距離があります。
しかし外には既に何体ものゾンビが闊歩しています。
三人で突破するのは難しそうです。
悩んでいると、職員室の扉がバンバンと叩かれる音がしてきました。
あまり余裕はないようです。
良い考えが浮かばず考えていると、外に人影が見えました。
ゾンビかと緊張しましたが、そこにいたのはスワベ君とイノウエさんでした。
「二人とも無事だったの!?」
「はい。校舎内の階段は諦め非常階段から下りて来ました」
「あら?ミヤノ君も一緒じゃなかった?」
首を力なく横に振るスワベ君。
「そんな!」
私の生徒の訃報は何気に初めてだったので動揺してしまいました。
でもスワベ君達の方が何倍も悲しいと思い気を取り直します。
「二人は少し休んでなさい。今バスまでどうやって行こうか考えていたんだけど」
何やらガチャガチャやっていたヒヤマ君が急に立ち上がります。
「じゃじゃーん!」
と言って私達に釘打ち機を見せてきます。
ん?先端に付いているのは防犯ブザー?
「やっと調整が終わりました!これで防犯ブザーが付いていても20mは飛ぶはずです」
何か授業の時より生き生きしてない?
「先生、こいつ授業以外の時はいつもこんなですよ」
「授業中もこうだと嬉しいんだけど」
「む、無理です」
スワベ君が教えてくれましたが改善は無理そうですね。
「まあでも今は頼りにしてるわよ」
「ま、任せて下さい!」
ヒヤマ君が防犯ブザーを鳴らし釘を打ち出すと、ゾンビ達はそちらに釣られて行ってしまいました。
その隙に私達はバスまで走ります。
私はバスのカギを開け、運転席に乗り込み横にあるドアを開けます。
女性陣が乗り込み、いざ男性陣が乗り込もうとした時、声が聞こえてきました。
「待って、待って!私達も乗せてほしいんだよ!」
「井口先生!」
そこにいたのは私の同僚の 井口 裕 先生と、その生徒のタケタツさんとギブさんでした。
男性陣がゾンビを牽制し、三人も乗り込む事ができました。
「はあー、間に合ったー。茅野先生が駆けだしたのを見て慌てて追い掛けたんだよ」
「間に合って良かった」
「ギリギリだったので」
井口先生、ギブさん、タケタツさんが次々に安堵の言葉を出します。
私達五人に三人加え、計八人で学校を脱出する事に成功しました。




