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28 親友を殺した日

その日、スワベは屋上にいた。

サボるのはいつもの事で、手摺りに寄りかかり街並みを眺めていた。

すると街の方から黒煙が上がり、救急車や消防車、パトカーのサイレンが遠くから聞こえだした。

そしてふと校門の方を見ると、先生達とフラフラとした人が言い合いをしていた。

いや、言い合いというよりも、先生達が一方的に話している感じだ。

すると教頭の声で避難放送が流れた。

そんな大袈裟なとは思ったが、小心者な教頭らしいなとも思った。

昨今、学校での殺傷事件が多いから先手を打ったのだろう。

放送を気にせず眺めていると、いきなりフラフラした人が先生に噛み付きだした。

俺は一瞬で確信した。

あれはゾンビだと。

俺は見るのをやめて、その場を離れイノウエとミヤノの下へ走る。

結果は見なくてもわかる。

学校は間もなく地獄に変わるだろう。


下の階に降り、生徒の集団の中にいたイノウエとミヤノへ呼び掛ける。


「イノウエ、ミヤノ、こっちだ!」

「スワベか!」

「無事だったの?」

「ああ。そっちは危険だ。非常階段で降りるぞ!」


俺は二人の手を引き、外にある非常階段へと向かう。

校舎内にある二つの階段は生徒でいっぱいになっている。

しかも下の階からの悲鳴で戻って来た生徒とで大混雑だ。

俺達は生徒の波を掻き分け進み、やっとの事で非常階段に辿り着いた。

非常階段には人がいなく、辺りにゾンビもいなかった。

そこで少し一息吐く。


「ねぇ。何が起こっているの?」

「あれはゾンビなんだろ?」


イノウエと、察しの良いミヤノが尋ねてくる。


「そうだ。校門で先生達が襲われて、その後に先生達も人を襲いだした」

「これからどうなっちゃうの?」

「俺だってわかんねーよ!」

「落ち着けスワベ。大事なのはこれからどうするかだ」


イノウエの問いにキレた俺を、ミヤノが宥めてくれる。


「とりあえず職員室に行こうと思う」

「どうして?」

「職員室にはバスのカギがあるはずだ。何人脱出できるかわからないが、乗車できるのは多い方が良いだろう」

「良い考えだね。それが一番かな」


俺の考えにミヤノが賛同してくれる。

イノウエは質問ばかりなので正直助かる。

職員室を目指し、ミヤノが先頭、イノウエが真ん中、最後尾が俺の順番で進んで行く。

三階から降り二階に到着した時、それは起こった。

校舎内から非常階段に出る扉が開き、ゾンビが出て来たのだ。

想像してないわけじゃなかったが、タイミングが悪すぎた。

ちょうど扉の前にはイノウエがいたからだ。


「キャア!」


イノウエの声に反応したミヤノがゾンビに飛びかかり、階段の柵の上から地面に落とす。

俺はその隙に開いていた扉を閉める。

幸いな事に外に出てきたゾンビは一体だけだった。

俺はホッとするが、イノウエの顔が青い。

その視線の先のミヤノを見ると、腕に噛まれた後があった。


「ミヤノ!」

「ごめん。ドジったみたいだ」


ミヤノの顔から血の気が引いていき、体が痙攣しだす。


「ミヤノ君!ミヤノ君!しっかりして!」

「イノウエごめん。僕はもうダメみたいだ。スワベお願いがある」

「なんだ?」

「僕がゾンビになる前にこれで頭を刺してくれ」


そう言ってポケットから刃渡り15cm程のサバイバルナイフを取り出し、それを震えた手で俺に渡してくる。


「ここに来る前に拾ったんだ。不良の誰かが慌てて落として行ったんだろうね」

「無理に決まってるだろ!」

「やらなきゃダメだ。イノウエを守ってくれ」

「無理だ!」

「頼む。俺をゾンビにさせないでくれ」


泣きながら頼んでくるミヤノに反論はもうできなかった。

長い付き合いになるが、こいつが前に泣いたのはいつだったろうか。


「わかった」

「スワベ君ダメ!ミヤノ君はまだ生きているんだよ!」

「イノウエ、守ってあげられなくてごめんね。ゴボッ」


ミヤノが口から大量の血を吐き出し倒れる。

イノウエが駆け寄るが、俺は腕を掴み強引に引き剥がす。


「なんで!」

「ミヤノはもう・・・」


首を横に振り死んだ事を伝える。

だが次の瞬間、イノウエの後ろで倒れたはずのミヤノが起き上がる。

その顔は青白く血管が浮き出て目が白く濁っていた。


「チッ!もうなったのかよ!」


俺は止めようとするイノウエを突き飛ばし、ミヤノの額にナイフを突き刺す。


「ごめん。ミヤノ」


ナイフは僅かな抵抗のみで吸い込まれて行き、ミヤノだったモノはその場に倒れた。


その日、俺は親友を、殺してしまった。


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