26 王道と別離
俺はその男と対峙する。
「我ぁが息子よ。父を呼び捨てとは感心せんなぁ」
「お前に息子と言われる筋合いはない!」
「悲しいことを。折角また会えたというのに」
「うるさい!これはお前の仕業か!」
「そうだ。こいつらは全員我が下僕よ」
「お前もゾンビになったのか?」
「ああ。食べまくっていたら、こいつらを支配できるようになったわ!」
俺と違いゾンビから進化したのか。
差し詰め精神タイプと言うところか。
俺の後ろでは早見さんが豹変した俺を不安げな目で見ているが、今は構ってる暇がない。
「それでこんな所まで来てどうするつもりだ?」
「お前の力は危険だ。よって、この場で始末させてもらう」
「なっ!実の子供を殺す気ですか!」
早見さんが怒ってくれたおかげで少し冷静になれた。
「何故俺の力を知っている?」
「我は自分の配下と意志を共通していてな。お前にやられたゾンビ共から情報が入ってきたのだ」
だとすると、のこのこ出てきたからには、俺の力より自分の方が上だと思っているのだろう。
本当に?俺の力は王の力だ。
だが奴も王になってもおかしくない実力を持っている。
考えろ、考えるんだ。
この状況を打開する術を。
「ハァッハッハァッ!考える時間はやらんぞぉ。我を蹴落としたお前の知識は侮れんからなぁ」
時間がない。
最大の武器であったタンクローリーは上で轟々と燃えている。
どうする?
フッ。どうするも何も俺の力は一つしかないじゃないか。
これでダメなら仲間を逃がす為に囮になろう。
俺は覚悟を決める。
「死者の王が命じる。貴様達は、全員止まれ!」
「無駄よ。無駄無駄ァ。お前では私には勝てん」
「クッ。ダメか!?」
頭に命令が逆流して来る。
このままでは俺が停止してしまう。
そう思った時、目の端に何かが映る。
「ヤラセナイヨ!」
「オウジサマハワタシガマモリマス」
阿澄と大橋が若本に飛びかかる。
「やらせねー」
「狙うわよ」
「突っ込むぜ」
悠木がボウガンを撃ち、沢城さんが銃を撃ち、杉田が木刀を持ちながらアルファードで突っ込む。
「あっち行けッス」
「殺す」
「物騒だな、おい」
佐倉さんが盾を投げつけ、内田さんがでかいフォークを投げつけ、オッサンがキャンピングカーを横滑りさせながら突っ込む。
「あなただけは許しません」
早見さんがトラクターのバケットを上に持ち上げ振り下ろす。
しかし若本が周りにゾンビを集め犠牲にし、全てを無力化してしまい、逆にゾンビ共が皆に襲いかかる。
そうだよな。
俺には自分の身を挺して助けようとする、素晴らしい仲間がいるじゃないか。
王の力だけと言った自分が情けない。
絶対に皆を守るんだ!
「ウオォォォ!俺はどうなってもいい!寄越せ!俺に力を寄越しやがれえぇぇぇ!」
(ワカリマシタ。『王ノ力』ガシンカシマス)
何だ?右目が熱い。
そこに力が集まっているのがわかる。
これなら!
「死者の王が命じる!貴様達は、道を開けろ!」
するとゾンビ共が道路脇に避け一斉に跪く。
「なぁぜだぁ!なぜ我の力が効かん!」
「親父。俺はお前を越えて行く!皆、今の内に突っ切れ!」
俺の声で車が一斉に走り出す。
「行かせるかぁ!」
若本がキャンピングカーのタイヤにでかいフォークをぶっ刺す。
キャンピングカーはタイヤがパンクしバランスを崩し横転してしまう。
「クソッ!杉田はそのまま走れ!大橋、阿澄頼む」
「わかった!」
「リョーカイデス」
「コッチハマカセテ!」
「港にフェリー乗り場がある。そこで必ず合流するぞ!」
「わかった!必ず来いよ!」
アルファードがそのまま走り去る。
俺はトラクターを操作し、キャンピングカーから三人を救い出しバケットに乗せる。
「大丈夫か?」
「ああ」
「頭クラクラするッス」
「あいつ許さネー」
内田さんの言葉遣いが変わっているが問題なさそうだ。
俺達も港へ向かうため走り出す。
「我が息子よ!今回は負けを認めよう。だが次は違う。東京で待っているぞ!」
「行くわけないだろ?」
「お前の可愛い妹がいてもか?」
「何だと!?」
「待っているぞ。ハァッハッハァッ!」
王の力が切れたのか、若本はゾンビの群れに身を隠してしまう。
ナツカが東京にいるだと?
今すぐは難しいが落ち着いたら東京に乗り込まねばならなくなったな。
それから苫小牧へ向かう途中、放置されてた車を一台確保し、遂に苫小牧の地に辿り着いたのであった。
~1章 完~




