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ラディカル・シティ  作者: やばくない奴
雄生、参戦
9/19

美美の不具合

 意識が朦朧となりつつも、雄生(ゆうき)は知りたいことがある。

「……彼方(かなた)

「お呼びですか?」

「アンタは、なんのために戦っている?」

 転送には十秒かかる。つまりこのゲームでは、勝者には敗者を殺せるだけの猶予があるのだ。更にこの街は、ゲームマスターが買い取った治外法権の土地だ。メディカル・ポッドがあるとは言え、参加者たちが命がけであることに変わりはない。


 彼方は望みを語る。

「数年前の事故で、私の恋人が植物状態になりました。私が断腸の思いで尊厳死を決意しかけた時に、抜山さんが来たのです。そして私は、ラディカル・ゲームの参加者になりました」

 冷静沈着かつどこ冷たい彼にも、愛というものがあった。翔也(しょうや)がいまだに生き延びていることも、それを裏付ける根拠に足りうるだろう。

「……アンタも、苦労してるんだな。アンタみたいな強い奴がまだ戦う理由って、なんだ? 前のゲームから、アンタは戦っていたんだろ?」

「前回までは、抜山(ばつざん)さんがゲームで無双していましたからね。全てを手に入れた次に、彼は強敵を作りたいと願いました。前回のゲームで『強いラディカル』を生むという望みを叶え、今は観客として我々の戦いを眺めています」

「……なるほどな。オレが来るまでは、何もかもあの男の天下だったのか」

 あの彼方から見ても、抜山蓋世(ばつざんがいせい)と云う男は強すぎる。自身を取り巻く数多の強者たちの存在を噛み締め、雄生は複雑な心情を噛み締めた。


 今度は、彼方が質問する番だ。

「そういう君は、何故ここに来たのですか?」

「オレは五年前、妹を誘拐された。妹がまだ生きているのかどうかもわからねぇ。だがオレはアイツのためなら、あの世にだって行く覚悟だ。だからオレの望みは、『御堂雪吹(みどうふぶき)と再会すること』だ。二言はねぇ」

「……案外、君かも知れませんね。抜山さんの望みが生んだ、強いラディカルの正体は」

 確かに、前のゲームで蓋世がそれを望んだのであれば、今回新たに加わった雄生がそのラディカルであるという線は濃厚だろう。しかしそんな彼も、先ほどの死闘で今は満身創痍の有り様だ。

「いいのですか? 急がなくて。メディカル・ポッドを使うなら、今のうちですよ。これは、闇医者としての警告です」

 そう告げた彼方は、戦闘中の打算的な言動をしていなかった。今度は、本当に相手の身を案じているらしい。

「気遣いどうも。アンタこそ、敵を案ずる暇はあるのか?」

「ええ。抜山さんがいなくなった今、勝機は私にありますから」

 揺るぎなき自信だ。雄生は深いため息をつき、美美(メイメイ)を呼ぶ。

「美美」

「お呼びデスか?」

「オレをメディカル・ポッドに転送しろ。インターバルが終わるまでな」

「わかりマシ……お、お兄ちゃん。助けて」

「……!」

 突如、その場に現れた美美には異変が起きた。

「返してクダサイ」

「嫌だ! お兄ちゃんと、話したい!」

「この回路は、ミーのために作られたものデス」

 それは到底理解の及ぶことではない。否、理解したくもないことだ。

「美美と雪吹が……同化している……?」

 雄生が驚いたのも無理はない。五年間探し続けた妹が電脳存在の中に交っている事実は、あまりにも不穏なものだったからだ。


 美美はすぐに「不具合」を修正し、雄生を転送し始める。

「失礼しマシタ。少し取り乱しマシタ。あまり気にしないクダサイ」

「ちょっと待て、オレはまだ聞きたいことが!」

「お答えできマセン。それでは、良い夢を」

 光の粒子と化した彼は、その場から姿を消した。インターバルが終われば、次は雄生と彼方の一騎打ちである。


 疑念を抱くのは、雄生だけではない。

「美美、君は何者ですか? ただの不具合と呼ぶには、あまりにも奇妙です。雄生が参戦してから、その不具合は著しくなりましたよね?」

「お答えできマセン。機密事項デス」

 結局、真相は彼方にも明かされなかった。

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