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ラディカル・シティ  作者: やばくない奴
ライフライン
25/37

交渉

 翌日になり、ラディカル・ゲームが開催された。雄生(ゆうき)はいつものように翔也(しょうや)を連れ、ほたるを探す。無論、あの少女は理解しているだろう――彼女自身が、ほとんどのプレイヤーに狙われているということを。


 雄生たちが最初に出会った相手は、綾川長治(あやかわちょうじ)だ。先ず雄生が試みるべきことは、戦意を見せることではない。

「綾川さん。少しばかり、話をさせてくれ」

 そう――あくまでも交渉だ。今の最優先事項は、妹との再会ではない。たった一人の少女にライフラインを掌握された現状を変えること――それが今の課題だ。

「どうした、雄の字」

 長治は訊ねた。元より社会基盤に関する望みを抱えている彼からしてみれば、眼前の青年と結託することは悪い話ではないだろう。


 雄生は本題に移る。

「今回だけは、オレたちで同盟を組まないか? オレの他にも、翔也、彼方(かなた)、そして海斗(かいと)が同盟に加わっている」

「同盟だぁ? この街で、他人を信じろというのか?」

「今だけは信じて欲しい。同盟のメンバーだけが生き残ったら、一人を除いて全員降参する。そして残った一人は、社会構造を元通りにする。今のオレたちの共通の敵は、平沢ほたる――そうだろう?」

 今は争っている場合ではない――それは確かなことだ。さりとて長治には、彼らを信用する理由などない。

「ずいぶんと旨い話だな。だがお前さんは、俺がどんな人生を歩んできたのかを知っているはずだ。旨い話には必ず裏がある。同盟のうち、誰が裏切りだしてもおかしくはない。殊更に、月島(つきしま)は非合理に徹した愚か者だろ」

 この時、雄生は海斗を同盟に加えたことを後悔した。別段、彼自身があの男を疑っているわけではない。他のメンバーの信用を得られない人物の存在が、あまりにも邪魔に感じられたからだ。

「だったら、オレと戦ってもいい。だが約束しろ。アンタが最後に勝ち残ったら、平沢財閥の天下を終わらせてくれ」

「言われなくてもそうするさ。さぁ、雄の字。始めようか」

「ああ……! 下がってろ、翔也!」

 結局、二人は戦うこととなった。雄生は駆け足で間合いを詰め、長治に殴りかかる。長治は紫色の光線を放ち、相手を数歩ほど押す。その火力は相も変わらず強烈であり、周囲に散らばる廃車の窓が次々と大破していく。雄生はいつものように再生を試みるが、紫外線による損傷を受けた細胞はホメオスタシスでは修復できない。戦況は、明らかに長治にとって有利な方向へと傾いていた。

「お前さんの曲解は、守りに徹しすぎている。生身の拳でしか攻撃のできないお前さんに、光学密度を曲解できる俺を倒せはしないだろうよ」

「やってみないとわからねぇ!」

「フッ……愚かだな。悪いが、手加減はしない。俺たちの望みは同じだが、俺は同盟を宛にはしていないんでね!」

 一発、また一発と、紫外線の光線が放たれていく。それを浴びるたびに、雄生の身はほぼ不可逆的に破壊されていく。細胞が過剰な紫外線に晒されることにより、その身体の免疫機能は低下する。その上で次々と光線が撃たれていく以上、雄生にできることは何も残されていない。

「くっ……ここまでか……」

 そう呟いた彼は、その場で崩れ落ちた。気絶した彼はその場に伸び、動かなくなる。

「御堂雄生、綾川長治の曲解により戦闘不能デス! これより、転送を開始しマス! 残るプレイヤーは、七名となりマス!」

 スピーカーを通し、美美(メイメイ)の合成音声が響き渡った。直後、雄生の身は光の粒子と化し、天へと昇っていく。


――長治の勝利だ。


 長治は翔也の方へと目を遣った。目の前の少年は今、恐怖で震えている。されどその少年の曲解は、長治の脳にも作用している。

「案ずるな。俺がお前さんを守ってやるさ、ボウズ」

 そう告げた彼は、父性に満ちた微笑みを浮かべていた。

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