同盟
一方、ラディカル・シティの一角には、四人の人影が集まっていた。
「オレたちで、同盟を組まないか?」
それが雄生の提案だった。彼の背後では、翔也が少しばかり怯えている。その様に庇護欲を刺激され、雄生は少年の頭を撫でる。彼方は肩をすくめ、含みのある笑みを浮かべながら語る。
「同盟……ですか。確かに、今の我々が優先すべきことはただ一つですからね。願い事の内容も重複していることでしょう」
本来は個人戦を想定して設計されたゲームでも、徒党を組むことはできる。して、今の彼らは利害が一致しているのだ。
一方で、海斗は話を理解していない。
「はーっはっはっは! ついに気づいたようだな! 俺様が世界を征服することが、いかに素晴らしいことか!」
その相も変わらない厚かましさに、雄生は絶句する。さりとて、今はいがみ合っている場合でもない。そこで説得を試みるのは、翔也だ。
「違うよ、おじさん。ほたるお姉ちゃんが望みを叶えてから、世界がめちゃくちゃになったでしょ? ぼくたちは、それを元通りにしないといけないんだよ?」
そう――それこそが、雄生が同盟を結ぼうとした理由だ。無論、彼は妹との再会を最優先しているものの、他に叶えたい願いがあるのはお互い様なのだ。かくすれば、落としどころは利害の一致した望みを叶えることに他ならない。
彼方は言う。
「今回のゲームにおいて、私たちの望みは共通しています。それは世界を元通りにすることです。現に、あらゆる税金は平沢財閥の暴利となり、着実に値上げされていますから」
このままほたるの天下が続けば、彼らの生活も苦しくなることだろう。否、現に彼らは苦しいのだ。
そこで雄生は提案する。
「ほたるを優先的して倒そう。他のプレイヤーたちには、同じように説得してオレたちと同じ望みを持ってもらう。同盟のメンバーだけが勝ち残れば、後は代表者以外の全員が降参するだけで丸く収まるだろ?」
同盟を結んでいる以上、彼がたった一人の勝者である必要はない。それが彼の論理であった。
海斗は不服そうだ。
「俺様が世界を征服すれば、今のインフラも変わるのに」
「だったら、同盟を降りるか? オレもアンタも、今は個人的な望みを叶えようとしている場合じゃないだろ」
「うーん、確かにその通りだ。良いだろう。この俺様が、直々に手を貸してやろう」
交渉成立だ。しかしこの街には、まだまだ強力な曲解を持つ猛者たちがいる。そこで雄生は、翔也に指示を下す。
「翔也。アンタは生き延びることに特化したラディカルだ。必ず最後まで残り、勝利をオレたちに譲ってくれ」
「うん、わかった。ぼくは山で暮らしているからよくわからないけど、人間の世界は今大変なことになってるもんね」
「そうだ。それに、これは翔也にとっても他人事じゃない。ほたるの天下が続けば、土地開発も進む。この世の金のほとんどが平沢財閥に吸われているとあっては、なおのことだ。土地は財産になるからな」
ほたるの与えた影響は世界規模――ゆえに現状は翔也にとっても死活問題だ。続いて、彼は彼方と海斗にも指示を出す。
「ほたるの次に優先して倒すべきは、香琉だ。アイツだけが翔也に攻撃できる以上、同盟のメンバーを失うリスクだけは回避したい」
「ええ、おっしゃる通りです。先ずはほたる、その次は香琉を倒し、残るプレイヤーとは同盟を結びましょう」
「……だけど、叶得がどう出るかわからないぞ? アイツは闘争にしか興味がない。今の生活基盤を不自由に感じているのかどうかさえ怪しい。何より俺様の直感が、叶得を勝たせるなと言っているんだ!」
叶得の望みは、闘争そのものだ。それをラディカル・ゲームで叶えている彼女が望むものは、更なる闘争である。そんな彼女を警戒した海斗の判断は、至極真っ当なものである。




