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ラディカル・シティ  作者: やばくない奴
雄生、参戦
2/19

ゴーストタウン

 雄生(ゆうき)が辿り着いた街は、あまりにも閑散としていた。先ず前提として、交通機関が存在しない。車も、バスも、ひいては電車も走っていなかった。この街が元ある都市を居抜きしたのか、かろうじて線路や道路は残っている。言うならば、これはゴーストタウンと呼ぶに相応しい街並みだ。


 雄生の前に、パンダのマスコットのようなホログラムが現れる。

「ラディカル・シティへようこそ! ミーはこの街AI、美美(メイメイ)デス! この街は、ゲームマスターが丸ごと買い取った治外法権の領土デス!」

 そう語った彼女から、雄生は何か奇妙な感覚を覚える。

「オレはアンタとは初対面のはずだ。なのに、この既視感はなんだ?」

「存じマセン。しかしミーも同じ感覚を覚えていマス。とりあえず、ルールの説明に移りたいと思いマス」

「はぁ」

 彼が状況を飲み切れないのは致し方ない。彼は先日、屈強な著名人から襲撃を受け、この街に案内され、その上よくわからない出来事に巻き込まれた身の上なのだ。


 そんな彼に構わず、美美は説明を始める。

「先ずラディカルというのは、曲解という力によって何かを極端にできる新人類の総称デス。例えばユーはホメオスタシスを曲解し、類稀なる再生力を誇りマス」

「なるほど、道理であの時に命拾いしたわけか」

「最後に勝ち残った一人は、ゲームマスターに望みを叶えてもらえマス。戦闘不能か降参で脱落デス。三人脱落するたびに、一時間のインターバルが設けられマス」

 一見、その話は信用するに値しないものだ。しかし雄生は、不自然な程に多くを掌握した男を存じている。

抜山蓋世(ばつざんがいせい)も、このゲームで全てを手に入れたのか?」

「左様でございマス。しかし、どんな望みでも叶うわけではありマセン。理論上、実現可能な望み――それだけが叶えられマス。他に叶えられないのは……」

「願い事を増やす系統の望み……とか?」

 この手の上手い話には、必ず要求の数に関する制限が設けられる。して、雄生はそれを飲み込み始めている。

「その通りデス。直接願い事を増やすのも、全能になって間接的に全てを叶えるのもルール違反デス」

「……そうか。ところで、負けたら、死ぬのか?」

「部分的にはそうなりマス。脱落者はメディカル・ポッドに転送され、回復させられマスが、転送には十秒間かかりマス。戦闘で即死したり、あるいは転送の途中で殺された者は、二度と復活できマセン」

 下手を打てば死ぬ――何やらこのゲームは、そう生温いものではなさそうだ。さりとて、ここで退く雄生ではない。

「オレが勝ち残り、妹と再会する!」

「良いのデスか? そう簡単に自らの身を危険に晒しても」

「妹の身を案じねぇ長男がどこにいる? 御堂の血は家族を裏切らねぇ!」

 これは、他のプレイヤーたちに対する宣戦布告だ。その瞳には、底知れぬ覚悟が宿っている。握り拳に力を入れる彼の周囲で、空気が張り詰める。彼の出で立ちはすでに、一人の狂戦士と呼ぶに相応しきものであった。

「つまり、エントリーするということデスね?」

「ああ、エントリーだ!」

「受理しマシタ。ゲーム開始の合図が来たら、他の参加者を探して倒してクダサイ」

 そう告げた美美の風格は、あまりにも無機質なものであった。その身や声に走るノイズは、彼女が電脳存在であることを端的に示していた。



 それから約十分後、美美は街中のスピーカーを介して合図を出す。

「ゲーム開始デス。各自、他のプレイヤーを探してクダサイ」

 数多のスピーカーから流れた声は、街一帯に反響した。雄生はその場で軽いストレッチを行い、臨戦態勢を整える。

「どんな奴でもかかってこい! アンタらが何を望んでいようと、オレが雪吹(ふぶき)を想う心には敵わねぇ!」

 そう断じた彼は、周囲を見渡した。先ずは敵を探すこと――それが彼に課せられた目標だ。

挿絵(By みてみん)

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