表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラディカル・シティ  作者: やばくない奴
それぞれの望み
18/19

再起動

 インターバルの最中、雄生(ゆうき)の前には美美(メイメイ)が現れた。

「オニイチャン……オニイチャン……」

 その声は二重となっており、音質が悪かった。雄生の前で、これまでの記憶が反芻される。今までの美美の不具合は、おおよそ妹の雪吹(ふぶき)を連想させるものだった。して、メディカル・ポッドの中で、彼は雪吹に助けを求められる夢を見た身の上だ。

「アンタ、もしかして……雪吹なのか?」

 そう訊ねた雄生は、眉をしかめていた。しかし美美には、彼の質問に答えるだけの理性がない。

「オニイチャン……オニイチャン……」

 うわ言のように繰り返された言葉に、雄生は寒気を覚える。この時、彼は思い出す。妹が誘拐されたあの日、彼の目の前に立っていたのは龍造だったのだ。

「この街に、オレの妹が……?」

 そう呟いた雄生は、少しばかり動揺していた。そんな彼の背後から、一つの人影が忍び寄る。


「やれやれ、まァた不具合かァ」


――夜露龍造(よつゆりゅうぞう)だ。彼がフィンガースナップをするや否や、美美の全身にノイズが走った。彼女の姿はアンチエイリアスを失い、どことなく解像度の低いホログラムと化す。周囲には緑に光る何らかの構文が浮かび上がり、美美の不安定な立体映像は再構築されていく。

「なんだ? 何が起きている!」

 目の前で繰り広げられる光景に、雄生は狼狽した。

「見てわからないのかァ? 美美を再起動しているだけだァ」

 それが龍造の答えだった。やがて「再起動」を終えた美美は、その存在が安定し始める。

「再起動が終わりマシタ。先程のエラーの原因は不明デス」

 そこに雪吹の影はない。彼女はもう美美でしかないのだ。


 雄生は問う。

「答えろ! オレの妹は、今どこで何をしているんだ!」

 その声色は怒気を帯びていた。その威圧に臆することもなく、龍造はこう切り返す。

「それを知りたかったら、ゲームに勝って望みを叶えることだなァ」

 嫌に無責任な男だ――雄生はそう思った。彼は義憤に震え、龍造の胸ぐらを掴み上げる。

「アンタが雪吹に何かしたんだろ! そうに決まってる! あの日、雪吹をさらったのは、他の誰でもなくアンタだった!」

「おやおやァ……俺のことを覚えていてくれたのかァ。実に光栄だねェ」

「オレの質問に答えろ! 雪吹はなぁ、たった一人のオレの妹なんだ! 血を分かつ兄妹なんだ! 家族に替えは効かねぇって言ってんだ!」

 閑散としたゴーストタウンに、雄生の怒号がこだました。龍造は胸ぐらを掴んできた腕に両腕を掛け、そのまま雄生を足下に落とす。その挙動には、一切の迷いがなかった。

「護身術か……!」

 雄生は眼前の宿敵を睨みつつ、おもむろに立ち上がる。

「御名答。こんな猛者だらけの閉鎖空間でゲームマスターをやっているんだァ、自分の体くらいは守れる」

「アンタ、何が目的だ? 望みを叶えるとか言ってラディカルたちを戦わせて、それで何を満たされているんだ!」

「ククク……少しばかり、遺伝子の話をしようかァ。オス駆動進化説って知ってるかァ?」

 突如振られた突拍子もない話に、雄生は怪訝な顔をする。

「メスよりもオスの方が突然変異を起こしやすく、生命の進化に大きな影響を持つとする学説か」

「よくご存知で。だがオスが進化を促す理由は、突然変異だけじゃねェ。アルファが生き残り、子孫を残す。その繰り返しが進化を促しているのが自然界だ」

「その話は、ラディカル・ゲームに関係があるのか?」

「人類は摂理ではなく、制度に守られて生きてきた。だから衰退した。だが奇跡的に、ラディカルと云う種族が生まれ、今は人類に代わる新たな頂点捕食者の候補となっている」

「……つまりアンタは、このゲームを通してラディカルを選別しているのか!」

 ここに来て、ようやくゲームの趣旨が明かされた。されど肝心の雪吹の所在は、依然不明のままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ