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王宮の獣護   作者: 夜夢子
第3章

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ウェディング祭2

大広場に設けられた特設舞台の袖口には、白金の装束を纏った白狐たちの姿があった。


「……今年も、騒がしいな」

「去年より観客が多い気がする」


ジンリェンの小さな呟きに、フーリェンは短く答えながら舞台の向こうに響くざわめきに耳を傾けた。


舞台を囲むように設けられた仮設の観覧席には王都の住民たちがずらりと並び、今か今かと演武の始まりを待っている。


軽く腕を振って袖を揺らす。普段の戦装束よりも布地はやや厚く、手首の感覚がほんの少し鈍い。


「袖、きつくないか」

「……平気」


気遣うように覗き込んでくる兄にそう返しながら、指先を動かす。


刺繍の模様も剣帯の位置も同じ。背丈は数寸違うが、それでも今この瞬間、彼らは鏡写しだった。


「不思議だよな」


ジンリェンがぽつりと零す。


「こうして並ぶと、子供の時のこと、思い出す」

「俺たち、何でも同じだった。部屋も、布団も、飯の皿も。けど今は、違う道を歩いて、違う剣を持って、それでも――また並んでる」


「そうだね」と小さく返すと、ジンリェンはそれ以上言葉を投げなかった。


違う道。違う想い。違う重さ。


自分は今、第四王子ルカのもとにある。兄とは異なる義を背負い、異なる王子に仕える日々。かつては背中を追ってばかりだった彼の隣に、こうして自然と並ぶことができているという現実。


「並べる場所に、立ててよかった」


兄の耳に届いたかは分からない。届いていなくてもいい。それでいいと思う。


「合わせるぞ、動き」

「うん」


ふたりはゆっくりと手を取り合い、息を整えた。


剣を抜くタイミング、踏み出す足、呼吸の間――稽古で何度も合わせたその動き。型は決まっている。舞うように剣を振るい、呼応するように体を翻す。勝敗ではない。ただ、観る者の心に届けばいい。


袖口から覗く手がわずかに震えたのは、ただの緊張か、それとも。


「準備はよろしいですか?」


幕の向こうから進行役の声がかかる。その声にふたりは同時に顔を上げた。


音が消えた。


最後にもう一度だけ。揃いの琥珀を合わせると、ふたりは一歩、舞台の光へと踏み出したのだった。


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