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王宮の獣護   作者: 夜夢子
第2章

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【登場人物】

ワンジー…女王ヘラの直属護衛にして現王国唯一の女性の直属護衛。



【世界】

梟…女王ヘラが動かす影の組織。主に鳥類の獣人によって構成された部隊。女王ヘラの直属護衛であるワンジーが指揮官を務めている。

ヘラは静かに立ち上がると、視線を卓上の資料から羊皮紙の貼り巡らされた壁へと移した。そこには古地図や過去の戦況図が所狭しと並んでいる。壁に沿って置かれている書棚には、分厚い背表紙にまとめられた報告書が覗く。


すべて、この砦を中心に動く兵士たちが集めてきた情報である。


彼女はそれらを一瞥すると、振り返ることなく、力強く言葉を投げた。


「……梟を動かし、王国内の動きを逐次拾わせろ。特に第七地区のと、フーリェンについて掘り返している者たちを探せ」

「ワンジー、動ける者を選べ。報告なしに動く影があるなら、すべて追え」

「承知しました、陛下」


その言葉に応じるように、漆黒の髪を後ろで束ね、背に大きな猛禽類の翼を携えた女が恭しく一礼した。


「梟は既にいくつかの痕跡を掴んでおります。アスランから来た旅人の中に、身元の怪しい者が紛れていたようです」

「南とのつながりは?」

「恐らく。北の交易に紛れ、情報を抜いていたようですね」

「火はこちら側に収まらないかもしれない。アスラン側にも報告を飛ばしておけ」

「梟を全域に飛ばします。情報は逐一こちらに」


そう言って軽く翼を広げた彼女の背後に、次の瞬間三人の仮面の情報官が音もなく現れた。合図ひとつで、彼らは影のように身を翻し、闇の中へと溶けていく。


ヘラは窓の外に目を向けた。


「……忌まわしき過去に奴らが触れる前に。ワンジー、……容赦は不要だ」

「仰せのままに、陛下」


彼女は音もなく踵を返すと、その言葉を最後に冷気とともに姿を消した。


「北の梟は飛び立った。これで影で動く者たちの所在も明らかになるはずだ。お前たちはそれまでに準備を整えろ。……戦が始まるだろう」

 

静かにそう宣言した彼女は、そのまま一拍おいて自身の息子へと向き直った。


「ルカ。お前も共に戦うことになるはずだ」

「覚悟は出来ています、母上」

「その心得だ。……さて、この問題についてはしばし時間がかかる。それまではこの北の大地で体を癒せ。……そうだ、フーリェン」


何かを思い出したかのように、彼女はふとフーリェンへと視線を向けた。


「私の兵たちがお前に会いたがっている。明日から訓練に加わり、鍛錬をつめ。……あいつらにお前の顔を見せてやらんとな」


緊張を解いた彼女のその言葉に、フーリェンは思わず目を見開いた。ちらりと、彼はそのままルカを見つめる。ルカはそそんな彼の反応を見てくすりと小さく笑うと、静かに頷いた。


「会っておいで。きっと、みな君に会いたいはずだ」


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