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第41話 超越者の戦い、氷帝対聖騎士!

ハワード邸に突入予定でしたが思いついた展開などがあって微妙な区切りとかで断念しました。


side璃音


マイクお手製の万能装甲車、アーマー・ドラゴンに乗り、千歳ちゃん達を誘拐したフェイト達の屋敷・ハワード邸に向かう。

助手席に座り、車のエンジン音や道を走る音を耳にし、轟牙を手に乗せながら軽く目を閉じて心を落ち着かせていく。

「……ん?」

心を落ち着かせていたお陰か不思議な力を感じ取れた。

この感じ……強いな、聖霊狩りか?なら今の内に対処した方ががいいな。

「マイク、車を止めてくれ」

「えっ?どうして?」

「いいから」

マイクに装甲車を止めてもらい、俺はドアを開けて装甲車から降りた。

「お、おい!リオン、どこに行くんだ!?」

「悪い、野暮用が出来た。先に行ってくれ。すぐに後を追う」

「リ、リオン!?」

「天音!聞こえているな?必ず千歳ちゃんを連れ戻せ!!」

「えっ!?に、兄ちゃん!!?」

両足に霊力を込めて走り出し、その強い力を感じるところまで一気に走っていく。

七星剣に所属して世界中の悪人や実力者たちと戦うようになってから自分自身と花音を守るためにある程度離れた距離から強い気配を察知する能力を身につけて来た。

まさかこんな時にこれほどの力を感じるとは思わなかったが、もし仮に敵なら戦わなくてはならない。

顕現陣から氷蓮に代わる新しい蓮宮神器である刀身がかなり長い刀を神子装束の腰紐に刺して行く。

そして……目的の人物は見つかり、田舎道に二人組の男がいた。

一人は神父服を着て背中に巨大な十字架を背負い、もう一人は黒の鎧を着た男……多分そっちが契約聖獣だろう。

俺は二人の前に降り立ってまずは挨拶をした。

「こんばんは。いい月が輝いているな」

挨拶に対し、鎧の男が神父の前に出て睨みつけながら俺を警戒する。

「……その容姿に亀の契約聖獣……お前は七星剣の氷帝アイス・エンペラーだな……?」

神父は俺の姿と轟牙を見てすぐに正体を判明した。

俺も少し有名になったなと思いつつ、その巨大な十字架を持つ神父が何者なのかすぐに分かった。

「俺を知ってるか。そう言うお前はエクソシストの聖騎士パラディンだな?」

アメリカに巨大な十字架を模した剣を持つ最強のエクソシストと謳われる男がいる。

その男は騎士のような誇りを持ち、尚且つ無類の強さを誇る豪快な剣の使い手であることから聖騎士と呼ばれている。

良かった、聖霊狩りじゃないのはここに来て大きな収穫だ。

でもエクソシストがここにいると言うことは……。

「俺は蓮宮璃音だ。あんたは?」

「ユーリ・ペンドラゴンだ。さて、そろそろ失礼する。これから仕事があるからな……」

ユーリね……少し女っぽい名前だなと思ったが俺も似たようなものだから人のことを言えないな。

さてそれよりも……。

「それってフェイト・ハワードの屋敷にか?」

立ち去ろうとした神父……ユーリが俺の問いにピタッと停止して目を細めた。

「何故それを……?」

その反応はビンゴか……少し嫌な予感がしていたがまさか的中するとはな。

「感だよ、感。悪いがその仕事、後にしてくれねえか?今から俺の弟が向かってるからよ」

「弟?」

「実はフェイトが弟の婚約者を誘拐したんだよ。それで、弟が今から取り戻しに向かってるんだ」

「……どうしてそうなったのか全く分からないが、俺には関係ない。とっとと悪魔祓いの仕事を終わらせて報酬をもらって家に帰りたいからな」

「だからちょっと待ってくれよ」

横切ろうとするユーリの肩を掴んだ瞬間、鋭い腕の振りで俺の腕を強く弾いた。

「そうか……あくまで俺の邪魔をするか、氷帝……それが七星剣の仕事か?」

ギロリと殺気を込めた目で俺を睨みつける。

俺としたことが久々に恐怖を感じたぜ。

これが聖騎士の気迫か、だけどそんな事でビビってたらここに来た意味がない。

「違うな。今は七星剣の氷帝じゃない……たった一人の弟を思う兄貴として戦うだけだ」

俺が戦う理由は七星剣として正義の名の下に悪を倒すだけではない。

俺の希望の光である天音の行く道を邪魔するものを取り除く為に時には盾となり、時には剣となって戦う……それが俺のもう一つの戦う理由だ。

『ならばここで今すぐ堕ちろ』

声と共に新たな殺気が俺に向けられ、振り向くと月光に反射した光が振り下ろされ、俺は全力でその光を回避した。

「うおっと!?」

その光を避けた瞬間、地面に一直線の綺麗な切れ目が入っていた。

「ジーク!」

『ユーリよ、この男に何を言っても通しては貰えないようだ。よほどその弟のことが大切と見える。こういう時は力尽くしかない!』

ジークと呼ばれたその男の手には両刃の怪しげな紫色に輝く剣が握られていた。

斬れ味がとても凄く、触れてないのに振っただけで地面に大きな切れ目を入れていた。

俺はすぐにその剣が蓮宮神器と同じ特別な力が込められた武器の一つ、魔の剣・魔剣だとすぐに分かった。

そして、男の名前と魔剣でその正体が分かった。

「ジークに魔剣……そうか、竜殺しの英雄・ジークフリートか!」

北欧神話で語られる、毒の邪竜・ファフニールを魔剣・グラムで退治した偉大な英雄。

更には竜殺しの英雄……『ドラゴンスレイヤー』の一人としても古くから語られている。

「まさかここで竜殺しの英雄と相見えることになるとはな……」

「臆したか?」

「まさか……寧ろ嬉しくて心が躍る。行くぞ、轟牙!!」

『ゴォオオオオオーッ!!』

轟牙を地面に下ろすと掌サイズから少しずつ巨大化し、腰紐に刺した神剣……蓮牙を鞘から抜く。

刃から月光に反射して銀色の輝きが閃き、刃に刻まれた蓮の文様が美しさを更に増す。

蓮牙は元々は先代の十二代目当主、親父の蓮宮詩音が使っていた神器だ。

氷蓮を天音に託し、新しい神器をどう工面しようかと悩んでいた時に親父から託された。

親父は左腕を失い、もう剣を握ることは出来ない……だからこそ親父の魂の剣を俺に託してくれた。

自分の信じた正義を貫く為に、そして……天音を守る為に。

「ふっ……久々の人間の強者と戦うことになるとはな」

『気をつけろ、ユーリ……』

ユーリは背中に背負う十字架を下ろし、上部を握りしめると中から両刃の刀身が姿を現した。

十字架の長剣……十字剣がユーリの武器であり、聖騎士の異名の象徴とも言える存在だ。

互いに武器を構え、戦いを始めるための最初の言葉を紡ぐ。

「契約執行!轟牙!!」

「契約執行!ジークフリート!!」

お互いが同時に契約執行の言葉を叫んだ瞬間、轟牙とジークフリートの体が光り輝き、粒子となって蓮牙と十字剣に入り込んだ。

二つの契約媒体に契約聖獣が一体化し、剣のアーティファクトが姿を現わす。







「アーティファクト!『霊牙氷帝剣れいがひょうていけん』!!」







今はもう使う事はない霊閃氷帝剣と同じ水晶か氷を削って作り出したかのような透明感のある水色の刀身を持つ両刃の大剣、霊牙氷帝剣。

唯一違うところは霊閃氷帝剣よりも刀身が長く、漂う冷気がかなり強くなっており、周囲の空気や地面などが凍りついている。

不思議な事にこの霊牙氷帝剣は霊閃氷帝剣よりも轟牙との同調率が高く、とても扱いやすいと感じる。

どうして長く使っていた氷蓮よりも親父の蓮牙の方が同調率がいいのか分からないが、それよりも今は目の前の相手の方が重要だ。







「アーティファクト……『クロスソード・オブ・パラディン』!!!」







ユーリの持つ十字剣はジークフリートと一体化し、刀身の大きさや見た目はあまり変わっていないが、何かの文字が刻まれており、不思議な紫色のオーラを纏っており、更に柄や鍔に美しい彫刻などが施されていた。

「聖騎士の十字剣か……」

正しくその名の通りユーリに相応しいアーティファクトだと思った。

もしこれがアーティファクトの模擬戦とか大会だったら楽しめたのかもしれないが、今は少しでも時間が惜しい。

「悪いが、一気に決めさせてもらう」

「それはこっちの台詞だ。全力でお前を倒す」

その言い草だと、どうやらユーリも『境地』に達しているようだな。

そう言う俺もそうなんだが、この『力』はあまりにも強力過ぎて周囲の環境に気をつけないといけない。

本来なら同じく境地に達した仇敵である瑪瑙の時にも使いたかったが、下手に使うと天音達や星桜学園を大きく傷付けてしまう恐れがあったので使うことが出来なかった。

幸いにもここは周囲には民家も人通りもない……思いっきりこの力を使うことができる!

「行くぜ……聖騎士!!」

「望むところだ、氷帝!!」

俺とユーリは同時に剣を上に掲げて、新たな言葉を紡いだ。







「「神器超越オーバードライブ!!」」







二人の『超越者オーバーロード』から二つの光が天を貫き、その後……人気のない場所で轟音と衝撃波が次々と響き渡るのだった。



side天音


いざハワード底に向けて万能装甲車のアーマー・ドラゴンで発車したのはいいんだけど、その直後に何故か璃音兄ちゃんは車を降りて轟牙と一緒にどこかへ行ってしまった。

璃音兄ちゃんの事だから何か理由があってのことだろう。

それにすぐに後を追うって言ったのだから、俺は璃音兄ちゃんを信じる。

「とりあえず、あの馬鹿璃音が来るまでの戦闘の陣形は前衛は天音と刹那君。後衛は私。情報関係のバックアップはマイクよ」

「お館様、ハワード邸にいる軍人は全て拙者にお任せください

「やれるのか?数はかなり多い、しかもアメリカ軍の精鋭達だぞ?」

マイクさんの情報によるとアメリカ軍の軍人は一定の階級を持つ隊長ではないとアーティファクトを持つことを許されない。

その代わりに以前聖霊狩りの死弦団が使った聖獣やアーティファクトの力を封じる特殊な弾丸が込められたマシンガンなどの近代兵器を用いて戦う。

その訳は小隊全員が統一された武器で戦う事により安定した戦闘を行うことが出来るという意味も兼ね備えているからだ。

下手に全員が形や能力の異なるアーティファクトで戦えば想定した作戦が遂行できるか難しいからだそうだ。

そしてハワード邸には約百人ほどのアメリカ軍人が配備されている。

それを全て相手をするのは流石に難しいと思ったが、せっちゃんの目に迷いは無かった。

「拙者はお館様の家臣……お館様の進む道を阻むものを全て取り除くのが拙者の役目。天影忍者の名に懸けて、必ず遂行するでござる!!」

せっちゃんの側には今まで目にすることがなかった契約聖獣の銀牙がいる。

この前のブリュンヒルデさんやワイバーンの時みたいな遅れを取ることはないだろう。

更に今のせっちゃんは気合い充分でコンディションもとても良い……ここでせっちゃんの主として信じなければいつ信じることが出来る。

「わかった。軍人は全てせっちゃんに任せる、頼んだよ」

「はっ!!」

「さあ、そろそろ目的地に到着するよ。近くの森で止めるからそこから出撃してくれ」

ようやく目的地であるハワード邸に近づいていく。

ハワード邸はアメリカのセレブ達の住まう高級住宅街にあるので遠目で見ても高級そうな家が沢山並んでいる。

大金持ちって本当に凄いところに住んでいるんだなと思いつつ、静かに待っているとマイケルさんはアーマー・ドラゴンを林に止めた。

「あ、そうだ。出撃前に……はいこれ」

顕現陣から『話』の文字が書かれた俺の血が混ざった炭で描いた護符をみんなに渡す。

「それを衣服の中に入れて」

「お館様、これは?」

「霊操九十一番『念話』。これでその護符を持っていれば半径数キロ内なら口で言葉にしなくても心で念ずれば相手と話をする事が出来る霊操術だ」

「何だと!?せっかく用意した超小型イヤホンマイクが無駄になってしまった!!くっ、流石は魔法!科学に真正面から対抗できる術を持っているな!」

マイケルさんは少し悔しそうに護符を握りしめながらも上着の内ポケットにしまってくれた。

超小型イヤホンマイクか……よくアクションやスパイ映画で見かけるけどそれがあれば便利だよな。

念話は今回のアメリカ遠征前の修行で急いで覚えた霊操術だ。

本当は璃音兄ちゃんにも渡しておきたかったけどその前に何処かに行ってしまった。

今回は大規模な戦いになると思って戦闘やその他の状況などで使えそうな霊操術を色々会得してきた。

少なくとも今の俺は過去最高の力を持っている……だからこそ負けるわけにはいかない。

アーマー・ドラゴンの荷台から降り、顕現陣から愛刀の蓮煌を取り出して腰紐に刺す。

そして左腕を腰紐に刺した蓮煌の柄に軽く乗せ、続けて荷台から降りてきたせっちゃんと花音姉ちゃんの顔を見ながら告げる。

「……行くよ」

「はっ!」

「ええ」

二人は俺の両側に並んで一緒に歩き出し、その後ろを鳳凰の姿になった白蓮と銀牙と流星が付いてくる。

いよいよハワード邸への突撃の時が来た。




璃音とユーリは実は超越者でした。

どんなアーティファクトかは今のところ頭の中でイメージはできあがっています。

そして次回はせっちゃんの本気のバトルが見られます。

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