第40話 エクソシストと竜殺しの英雄
性懲りも無くまた新キャラを登場させます。
更に主要キャラの不明だった契約聖獣が判明します。
side???
アメリカの田舎町のとある小さな教会。
そこに老人の神父と若い神父の二人が長椅子に座って手紙を読んでいた。
「ふん……悪魔祓いの依頼か」
若い神父は手紙を老人の神父へ投げ捨てながら椅子に寝転ぶ。
「依頼成功でとんでもない額を出すと書いておるな」
「ちっ、成金共が……そんな金があるなら普段から教会に寄付しろ」
「まあそう言うな。これも子供達のためだ……行ってくれるな?ユーリよ」
若い神父の名前はユーリ。
神父服を着て一応この教会の神父なのだが……神父服はかなりの改造を加えており、一部では不良神父などと呼ばれている。
ユーリは舌打ちをしながら椅子から立ち上がると教会の象徴である十字架に手をかけると扉のように開き、中には十字架を模した巨大な剣が入っていた。
その剣を剣帯を取り付けて背中に背負い、更に十字架の中には神の祝福を受けた聖水が入ったガラス瓶と古い聖書を神父服の内ポケットに入れる。
ユーリはアメリカでも有能なエクソシストで度々悪魔祓いの以来を受けている。
今回はアメリカで今起きている謎の連続呪印事件で呪いの刻印に苦しんでいる者達を救うために今から出掛ける。
教会の外に出て上を見上げ、古びた屋根の方を見ながらそこにある一つの影に向かって叫んだ。
「さて……面倒だが行くぞ、ジーク!」
教会の屋根の上にいる漆黒の鎧を纏った灰色の髪をした男性に呼びかけた。
男性は屋根に寝転がっており、ユーリの声に反応してゆっくり起き上がった。
『仕事か……ユーリ』
その男はただの人間でなく、ユーリの契約聖獣で屋根から飛び降りると何事も無く静かに地面に降り立った。
「ああ。お前も知ってるだろ?連続呪印事件。その祓いを依頼された」
『そうか……』
「ちなみにそのリストの中にお前の『嫁さん』の契約者の家族も入っていたが……」
するとジークは不安そうな表情を浮かべて俯いていた。
ジークとその『嫁』との間には愛故に起きてしまった大きな事件があり、その事がジークのトラウマになっていた。
『……あいつは契約者と一緒にいて幸せそうな顔をしていた。今更俺が会いに行ったところであいつの幸せを壊してしまうと思う……』
もう一度その人を傷つけてしまうのではないかと大きな不安にかられるが、そんなジークにユーリが言葉をかける。
「だとしても、一度は深く愛し合った仲なんだろ?だったら会いに行けばいいじゃねえかよ。向こうもお前に会いたがってるかもしれないし、何もしないよりはマシだろ?」
目の前の現実から逃げようとするジークにユーリがそう説得する。
ジークは懐から鎧を纏った金髪の美女の写真を見て何かを決意した表情をして頷いた。
『そうだな……いつまでも逃げているわけにはいかないな。ここは戦士として堂々と会いに行こう』
「それでこそ、竜殺しの英雄だ。それじゃあ、早速その嫁さんのいる家に向かうか」
『ああ。しかしその前に子供達の出迎えだな』
「ん?」
するとそこに数人の小さな子供達が走ってきて元気よく二人に話しかけた。
「ユーリ、ジーク、ただいまー!」
「今日も学校頑張ったよー!」
「二人ともこれからお仕事?」
その子供達は全員孤児で教会で保護して養っており、ユーリとジークにとって大切な弟や妹のような存在である。
「みんな、おかえり」
『俺たちはこれから仕事に行ってくる。じいさんの言うことをちゃんと聞くんだぞ?』
「「「はーい!」」」
子供達が元気よく返事をする中、子供達をまとめ役である一人の少女がいた。
その少女は紅い瞳に長い金髪をしてとても可愛らしさに凛とした雰囲気が漂っていたが、何故か男物の服を着ていた。
「ただいま、親父、ジーク」
「セシリア、おかえり」
『おかえり……』
少女の名前はセシリア。
ユーリの事を親父と呼んで慕い、ジークのことを兄として慕っている。
「これから仕事か?今日中に帰れるのか?」
「いや、今日中には無理だ。何日か時間がかかるから俺たちの分の飯は必要ない」
『帰りに何か土産でも買ってくる……』
「分かった。じゃあ、気をつけてなー。いってらっしゃい」
「「「いってらっしゃい!」」」
セシリアと子供達に見送られ、心が温かくなったユーリとジークは微笑みながら手を振った。
「ああ、行ってきます」
『行ってくる……』
二人はみんなの為に早く仕事を終えて帰って来ようと心に決めて歩き出した。
☆
side天音
マイケルさんの家で十分に休息を取り、時差ボケを無くして体をいつもの調子に戻した。
出撃前に戦闘装束に着替え、俺と璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんは蓮宮の神子装束でせっちゃんは忍装束。
ちなみにマイケルさんはせっちゃんを忍者と知ると目をキラキラと輝かせて手裏剣などの武器を見せてもらったり一緒に写真を撮ってもらったりしていた。
アメリカでは何故か忍者は大人気らしくせっちゃんも苦笑を浮かべながらマイケルさんに付き合ってあげていた。
「ん?ねえ、兄ちゃん姉ちゃん。その神子装束……随分とボロボロだね」
二人の着ている神子装束はよく見ると結構ボロボロになっており、ところどころ破れていたり汚れていたりしていた。
「あー。しばらく戦いっぱなしでそのままにしていたからか」
「蓮宮の神子装束は良い素材を使っているから中々新調出来ないのよね〜」
蓮宮の神子装束は高級素材を使い、霊力を込めながら編まれており、強靭な防御力を持ちながらも動きやすい作りとなっている。
「あ、そうだ。こういう時のための霊操術があるんだ。二人共、ちょっとそのまま動かないで」
二人は頭に疑問符を浮かべながら黙って俺の言う通りに動かないでいる。
俺は二人の方に手を置きながら霊力をボロボロな神子装束に送り込んだ。
「戦いに赴く者に天からの衣を授けよ!霊操二十九番『天衣』!!」
霊力を送り込んだ神子装束が光り輝くとボロボロになっていた部分が修復され、汚れが全てなくなり二人の神子装束が新品同様となった。
二十九番の天衣は衣類の分解と再構築を行い、強固な防御力を持つ蓮宮の神子装束にする霊操術だ。
「うおっ!?すげぇ!装束が新品同様じゃねえか!」
「凄い……天音、後でこの霊操術を教えて!」
「もちろん。あとこれを持ってて」
俺は顕現陣から巾着袋を取り出して中からアクアマリンのような小さな石を取り出して二人に三つずつ渡す。
「それは霊操百十二番『結晶』で霊力を極限まで圧縮して作った霊力の塊。それを飲み込めば霊力を何割か回復出来るよ。せっちゃんも受け取って。飲み込めば霊力の代わりに体力や精神力を回復出来るから」
「お館様、ありがとうございます!」
「ははっ、本当にすげぇな。天音、蓮宮当主として大きく成長してきているな!」
「私達も負けてられないわね。日本に帰ったらアリス先生に修行をつけてもらいましょう」
「これで戦闘準備はオッケーだね」
武器と服装と回復アイテムの準備は完了……後はこの場にいない三人の契約聖獣だけだ。
「それじゃあ呼びますか」
「ええ、そうね」
璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんの右手の甲に光り輝く魔法陣と紋章が浮かび上がる。
それぞれ魔法陣は同じデザインだが中の紋章の方は異なり、璃音兄ちゃんの方には亀の形をした紋章で花音姉ちゃんは馬の形をした紋章だ。
そして、二人は外に出て紋章を輝かせている右手を地面に置いた。
「来い、轟牙!!」
「おいで、流星!!」
二人の前に聖獣を召喚するための魔法陣が展開される。
その際璃音兄ちゃんのだけは何十倍にも大きくなり、中から二人の契約聖獣が姿を現す。
まずは璃音兄ちゃんの巨大な魔法陣からは大きな山が現れたと思ったらその下には山を背負った大きな亀が現れた。
次に花音姉ちゃんの魔法陣からはゆっくりではなく、金色の光が突然飛び出し、そのまま夜の空を登っていくと光が少しずつ収まっていく。
そして。光の中から金色に輝く馬に似たものが空をまるだ地面を走るかのように華麗に駆けながらゆっくりと地面に降りてきた。
契約聖獣は白蓮のように全員が契約者の側に居て暮らしている訳でない。
体が大きすぎて契約者と暮らせない、神や仏など人間界で大きな役目を持つ仕事があり普段は聖霊界の『神の世界』の暮らしている、更には聖獣が持つ特別な『性質』により人前に出ないほうがいいとなど様々な事情がある。
契約者と契約聖獣は見えない強い絆で結ばれており、その証として右手の甲に小さな魔法陣と契約聖獣の姿を模した紋章が刻まれている。
そして、有事の際には今のように魔法陣を展開して召喚する事ができる。
実際に恭弥と雷花の契約聖獣である悟空とトールもいつも人間界にいるイメージだが、二人とも中国と北欧を代表する仏と神なので時折仕事に出掛けている。
「大きな亀に金色の馬!?」
「亀の方は璃音兄ちゃんの契約聖獣、『霊亀』。馬の方は花音姉ちゃんの契約聖獣、『麒麟』」
霊亀は千年以上生きた亀が霊力を得て巨大化し、背中に蓬莱山という伝説の山を背負った聖獣。
ちなみに轟牙は自身の大きさを変える事ができ、本来ならこの数十倍の大きさで普段は海を漂って孤島となって過ごしている。
麒麟は獣の長で空と地を自由自在に駆け抜け、吉を招き入れて平和を愛する聖獣だ。
「霊亀と麒麟……素晴らしい聖獣をお持ちですな」
「そう言うせっちゃんの契約聖獣は何なの?」
せっちゃんと再会して早数週間、未だにその契約聖獣の姿を知らない。
忍として最後の手段を極力見せないという事もあったが、最早それを言っている余裕はない。
せっちゃんもその事を理解しており、決意を込めた目をしていた。
「……お館様、今こそ拙者の契約聖獣をお見せする時が来たでござる!」
せっちゃんの右手の甲に狼の形をした紋章が浮かび上がり、右手で強く地面を叩いた。
「来たれ、闇夜を照らす銀月の衣纏し天狼!!」
魔法陣が銀色に輝くと中から四本足の聖獣が現れた。
「銀狼……?」
それは銀月の如く銀色に輝く美しい毛皮を持つ狼だった。
あれは間違いない、狼が神格を得て神となった存在……。
「真神か……」
『マガミ?』
真神は人間の性質を見分け、善人を守り、悪人を罰する神と言われている。
『我の存在に気付いたか。その衣服……主は神子だな?』
真神から少し渋い声が響いた。
「蓮宮天音だ。あなたが刹那の……」
『銀の牙、銀牙だ。そうかお前が刹那の主か。刹那の事をよろしく頼む』
「任せろ。銀牙もこれからよろしくな」
『うむ……』
毛皮がフサフサな銀牙の頭を撫でようとしたが俺の手をすり抜けてせっちゃんの元に行く。
あちゃあ、流石にちょっと馴れ馴れしかったかな?
少し反省しつつ気を取り直してみんなの顔を見る。
「よし……みんな、行こう!」
『うん!』
「おう!」
「ええ!」
「はっ!」
みんなの気合いのこもった返事を聞くと、突然マイケルさんの家の庭から大きな音が響いてきた。
すると、庭の地面が持ち上がり、中からコンクリートや機械で整備された地下通路が現れた。
おー、小さい頃に見たロボットアニメでこう言うのを見たことある。
流石はマイケルさん……庭にこんな大掛かりなギミックを作っていたなんて。
そして、地下通路からエンジン音が鳴ると、万能装甲車のアーマー・ドラゴンが勢いよく飛び出して俺たちの前で停車した。
「みんな!こっちの準備が完了したよ!」
マイケルさんが運転席から顔を出した。
『早く装甲車に乗れ』
アーマー・ドラゴンの上にグレイヴスが合体しており、昼間に見た姿と少し異なり、色々なパーツが装着されていた。
「轟牙、少し小さくなってくれ」
『ゴォオオオ……』
大きな轟牙は萎んでいく風船のように小さくなって掌サイズの大きさになり、璃音兄ちゃんは轟牙を両手で優しく持ち上げて運転席にいるマイケルさんの隣の助手席に座る。
「さあ、私達は荷台に乗るわよ」
花音姉ちゃんの指示で俺と白蓮、せっちゃんと銀牙、そして流星はアーマー・ドラゴンの荷台に入る。
荷台の中には地下室のコンピュータ室とあまり変わりないほどの最新コンピュータやよく分からない機械、そして座り心地の良さそうなソファーが設置されていた。
全員が荷台に入ってもまだ荷台の広さには余裕があり、花音姉ちゃんはコンピュータの前の椅子に座った。
「さーて、人工衛星をハッキングして通じてまずは屋敷を上から覗いてみましょうか」
パキポキと指を鳴らしながらキーボードをタッチして花音姉ちゃんはこの地球の周りを回っている人工衛星をハッキングと言う恐ろしいことをし始めた。
「マイク、そろそろ時間だ。出してくれ」
「オッケー!レッツゴー!!」
マイケルさんはアクセルを踏み、アーマー・ドラゴンを発進させた。
いよいよフェイトさんの屋敷に向かう……待ってろ、千歳!
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ジークはお気づきの方も多いかもしれませんが、あの有名な英雄です。
次回は天音達がハワード邸に殴り込みます。




