第39話 機身聖獣
天音が本格的にアメリカに向かいます。
そして新キャラが登場します。
side天音
東都空港から約十二時間の長い時間を掛けてアメリカの数ある空港の一つ、ニューヨーク国際空間に到着した。
俺と白蓮とせっちゃんは遊びに来た訳ではないが、初めて乗った飛行機に緊張と興奮をしていた。
自ら空を飛ぶことができる白蓮はこんな大きな鉄の塊が空を飛ぶとは思いも寄らず乗っている間、ずっと目を輝かせて窓から見た風景を眺めていた。
「ここがアメリカか……」
『当然だけど、外国人がたくさんいるね……英語で全然言葉が分からないや』
「やはり拙者達の祖国とは大きく違うでござるな」
そして、日本とは違うアメリカの風景や人種の違いに驚きつつ、眺めていると璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんが空港前にタクシーを連れてそのまま乗り込んだ。
このままフェイトさんの屋敷に向かうのかと思ったが、ニューヨーク郊外にタクシーを走らせた。
そして、タクシーはニューヨーク郊外の小さなのどかな感じの田舎町に到着してそこで降りる事となった。
これから何処に行くのかなと思って歩いていると森に囲まれた小さな民家に到着した。
そして、民家から一人の茶髪の男性が出てくると笑顔で迎えてきた。
「オオ!リオン!カノン!」
「よぉ、マイク!」
「元気そうね、マイク」
そしてその人は璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんと軽く抱き合った。
誰なんだと思っているとその人は二人から離れて俺の元へ来た。
「俺はマイケル。リオンとカノンの友人だ。そうか君がリオンとカノンの弟君か。よろしく」
「は、はい。よろしくお願いします」
「拙者は天音様の部下の月影刹那でござる」
「ああ、よろしく。さあみんな、家の中へどうぞ」
マイケルさんはそう言って俺たちを家の中に案内する。
家の中は至って普通の生活感溢れる落ち着いた感じだが、奥の部屋の本棚の前に行くと、そのうちの本の何冊かを引いて戻すと驚くべき事が起きた。
ガチャ!ゴトン!と何かが作動して動く音が鳴ると、本棚が扉のように開いて地下に続く階段が現れた。
「か、隠し扉!?」
『え!?これ本物!?スパイ映画とかで見たことある!』
「なんと、からくり屋敷でござったか……」
白蓮の言う通りこんな本棚にある隠し扉はスパイ映画とかでしか見たことない空想の産物かと思っていたがまさか現実にあるとは思わなかった。
千歳が見たら一気にテンションマックスになって大はしゃぎするだろうなと思いつつ、恐る恐る地下への階段を降りていく。
そして、地下への階段を降りた先にあったのは驚くべきものだった。
アリス先生の黄昏の部屋に設置されている最新鋭のコンピューターよりも大きなコンピューターに、見たことない機械や機材か沢山置いてあった。
俺はそこまで機械が得意じゃないけど、とても一般人が簡単に持てるような品じゃないことだけは理解出来てる。
「マイケルさん、あなたは一体……?」
わざわざ璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんの二人がここに来たんだ、只者じゃないと思っていたけど。
そして、マイケルさんはコンピューターの前に置いてあるオフィスチェアーに座り、笑みを浮かべて口を開いた。
「改めて自己紹介だ。七星剣、技術情報部隊・六番隊のマイケル・ウォーカーだ。よろしくな、極東の守護者」
「七星剣のメンバー……?それに極東の守護者の事をご存知で……?」
「当たり前だとも。君の先先代、初めて極東の守護者と呼ばれたミセス・オリネは七星剣で有名だからね。もちろん、聖霊狩り (ホーリー・ハンター)のメノウを倒した君のこともね」
え?曾祖母様だけでなく俺も七星剣で有名なの?
「マイク。それよりも今分かったことを教えて」
「オッケー、カノン。さてと、まずはこれを見てくれ」
マイケルさんはパソコンのキーボードを操作して大きな画面状に沢山の資料を映し出す。
「これはアメリカで起きている大物を次々と呪いにかけている事件、通称・連続呪印事件の資料だ。資料はポリス、FBI、CIA……ありとあらゆる所のコンピューターから拝借した」
それってハッキングで違法に手に入れた資料だよね?
ま、まあ悪用しないし、手慣れているからいつもやっていそうだし、七星剣の部外者だから口を出さないでおこう。
「これを見る限り、首都のワシントンやここニューヨーク。主に東海岸の地区を中心に起きている。犯人は東海岸にいることは分かっているが、まだ犯人の目星はついていない。これ以上の被害が広がないよう、アメリカ中の教会から神父やエクソシストが呪いを解こうと試みているが、あまりにも強すぎて呪いが解けていないんだ」
実際にその呪いを写真で撮影された画像があり、不気味な虫のような形をした刻印が体を侵食するように刻まれていて見ただけでそれが悪しき力によるものだとすぐに察しできた。
「こいつが呪いの刻印か……天音、行けるか?」
「うん。実際に見てみないとわからないけど、破魔なら行けると思う」
「行けるって、アマネはこの呪いを解けるのかい?アメリカのエクソシストでも祓えなかった呪いを」
マイケルさんは少し信じられないような表情をしており、確かに破魔の力を知らない人から見ればその反応は正しい。
「解くんじゃ無くて『破壊』するのよ。伊達に蓮宮十三代目を名乗ってないからね」
花音姉ちゃんは胸を張ってまるで自分の事のように自慢した。
「そういう事だ。マイク、まずは昨日話したフェイト・ハワードとジェームズ・ハワードの屋敷を調べてくれ。そこに天音の恋人がいるからな」
「オッケー、もう調べてあるよ。フェイト・ハワードの屋敷は発表されてないけど、ニューヨーク郊外のセレブ達が住む高級住宅街に大きな屋敷を構えている。ほら、これがその地図だ」
既にプリントアウトをした地図を璃音兄ちゃんに渡す。
「車は?」
「用意してある。取っておきのをね!」
マイケルさんは何故か満面の笑みを浮かべて別の部屋に案内する。
そこはパソコン室とは違ったオイルなどの匂いが漂う大きな倉庫みたいな場所で電気を点けるとそこにあったのは驚きの物だった。
「え?これってただの車じゃないよね……?」
「こんなの見た事ないでござる……」
それは一般的な四輪車とは違う中型トラック程の大きさに頑丈な装甲が施された見た事ない形の車だった。
「ふふふ、いい感じに驚きのリアクションをしてくれたね。トラックを大改造した万能装甲車、その名も『アーマー・ドラゴン』!好きに使いたまえ!」
つまりこれってトラックをマイケルさんが改造した装甲車って事なのか?
マイケルさんは装甲車を触りながら説明をしていく。
「ジェットエンジンを搭載しているからこの重さでも最高時速は150キロを走れる。装甲は戦車並みの超合金で守られ、武装は追尾型ミサイルにガトリング砲!中には盗聴やハッキングも出来る最新コンピュータとアンテナを設置!」
こ、この装甲車にはとんでもない大改造が施されていた!?
流石は七星剣の技術開発のメンバー、技術力が凄すぎる。
「フッ。流石はマイク。男のロマンをくすぐる最高の仕事をしてくれるな!」
「それほどでもないさ。運転は任せたよ」
「ああ!」
装甲車のとんでもない改造に大満足の璃音兄ちゃんだった。
そう言えば璃音兄ちゃんは昔からロボットアニメやこう言う大改造した物が大好きだったね。
そして、ガシッと固い握手を交わす二人を見て花音姉ちゃんは呆れ顔をしていた。
「マイクは本当に相変わらずとんでもないものを作り出すわね……」
「相変わらずって、今までもこんなのを沢山作ったんだ……」
「忍の里に長く住んでいた拙者には驚きの世界でござるな……」
マイケルさんの開発に驚きの連続を覚えると璃音兄ちゃんがこれからの事を話し始めた。
「よし、これで準備完了だ。突入の決行は今夜12時だ。それまでに寝て時差ボケを直して戦闘準備を整えるぞ!」
日本とアメリカは大きな時差があるので身体の生活リズムが崩れて体調に大きな影響を与える。
時差ボケを直すには寝たりご飯を食べたり太陽の光を浴びたりして今いるこのアメリカの時間の生活リズムを合わせる。
「一応近所のスーパーで買った食料は冷蔵庫。寝るならソファーとかがあるから好きに使ってくれ」
「ありがとう、マイク。じゃあ私は寝させてもらうわ……ふわぁっ……」
花音姉ちゃんは大きな欠伸をしてソファーがある上の部屋に向かった。
「俺は七星剣の本部に連絡して何か新しい情報が無いか聞いてくる。天音と刹那は好きに過ごしてくれ」
「リオン、パソコンルームに来たまえ。すぐに本部と繋ぐ」
「ああ、頼んだ」
璃音兄ちゃんとマイケルさんはさっきのパソコンルームに向かい、倉庫には俺とせっちゃんだけとなった。
「せっちゃん眠い?」
「いえ。大丈夫でござる」
「よし、それならちょっと外に出てアメリカの風景を見てみる?」
「承知したでござ……あれ?」
「どうしたの?」
「白蓮殿が……見当たらないでござる」
「えっ?」
話に集中し過ぎて気付かなかったがいつの間にか白蓮の姿が消えていた。
「あの鳳凰ちゃんはどこ行った!?」
「と、とにかく探しましょう!」
人間界の色々なものが好きな好奇心旺盛の白蓮は俺でも見た事無い物が溢れているこの家の中を見て回っているのだろう。
マイケルさんの迷惑になる前に急いで探して大人しくさせないと!
契約者と契約聖獣は見えない絆で繋がれているので、目を閉じて神経を集中させれば契約聖獣の場所をある程度の把握出来る。
急いでその場所まで向かうと地下の一番奥の部屋で既に扉が開いていた。
「こら、白蓮!」
『あ、天音!』
「あ、じゃない!勝手にどこかに行くなよ!」
『見て見て、ここに不思議な物があるよ』
「全く、勝手に人の物を物色するな……って、えっ!!?」
「何でござるか……?」
白蓮が不思議な物と称するそれを見た瞬間、俺とせっちゃんは息が止まるかのように驚いて目を疑った。
「何だこれは……!?」
それは2メートル近くある大きさの金属で出来た爬虫類を思わせる物だった。
その姿はこの世界に生きる人間なら誰もが知っている有名な聖獣だった。
「ドラゴンのロボット……!?」
世界中で強大な力を持つ存在として知られ、聖獣の中でも最高クラスの力を持つドラゴン。
そのドラゴンの姿を模したそのロボットはメタリックレッドに彩られていてとってもかっこ良かった。
何故こんなロボットがここにあるのかと不思議に思っていると青い目が強い光を放った。
キュイーン!
突然ロボットが動き出して熱を発しながら小気味の良い機械が動くときの独特な音を鳴らしながら俺たちを見る。
「なっ!?」
「お館様!お下がり下さい!」
『……誰だ、お前達は?』
そして、電子音に混じって不思議な低い声が響いている。
「俺は天音……こっちは相棒の白蓮」
「拙者は刹那と申すでござる……」
『マイクの客人か……』
ロボットの言葉に俺たちは頷く。
それにしても、このロボットは不思議な事だらけだ。
ロボットは言うまでもなく金属などの部品から構成されている。
しかし、このロボットからは『あるもの』が感じられる。
「あの、あなたは生きている……?」
『分かるのか?』
「あなたからは魂が感じられるから……」
魂は本来なら生物が持つものに宿る物だが、このロボットからは強い魂の力を感じ取れる。
『魂か……なるほどな。確かに俺は生きている。だが、体は生身と機械で作られているけどな』
「生身と機械……?」
どういう事なのかとロボットに尋ねようとしたその時。
「そこからは俺が説明しよう」
扉が開くとそこにはマイケルさんが立っていた。
「マイケルさん!あの、これは……」
「まあ良いさ。君たちにも明かさなければならない時が来ると思っていたからね。紹介しよう、僕の契約聖獣の……」
『グレイヴス……フレイムドラゴンにして機身聖獣だ』
「機身聖獣……!?」
それは肉体の一部を機械で改造した聖獣の総称だ。
人間と同じく事故や病気などの理由で失った体を補うために機械で作られた義手や義足など体を繋ぐ事はよくあるが、このグレイヴスは全身が機械で覆われていた。
「まだ僕が君達と同じ歳の頃、ハイスクールで聖獣を召喚した。しかし、召喚したグレイヴスは聖霊界の病気に掛かっていた」
『体が腐食し、少しずつ体が崩れていく病だった。俺はこのまま死ぬのかと思っていた時にマイクに召喚された』
聖霊界には人間界には無い未知の病が多くある。
グレイヴスのように体が腐食して崩壊する病や全く異なる姿の生き物になる病など……極稀に聖獣が聖霊界の病を抱えたまま召喚される事がある。
「僕の両親は生前ロボット工学を研究していたんだ。その中で医療目的とした肉体の一部を機械化させるサイボーグ技術もあった。僕はすぐにアメリカの医療機関と両親が働いていた企業に掛け合い、聖獣のサイボーグ化の発案書を提出したんだ。そして、色々な伝を使ってすぐにグレイヴスの治療と崩れた体を補うサイボーグ化に取り掛かった」
まだ契約していなかった命を失いかけた聖獣を助けるために全力で行動に移したマイケルさんの強い思いに感動した。
『不思議な運命を感じた……死の運命を受け入れようとした矢先にマイクと出会った。まさか体に機械が組み込まれるとは思いもよらなかったが、俺はこうして生きている』
『痛くなかったの……?』
グレイヴスの肩に乗った白蓮はちょんちょんと嘴で叩きながらそう聞き出した。
体を機械化するなんて全く想像出来ない事に同じ聖獣として白蓮は聞いてみたかったのだろう。
『サイボーグの体になった事か?確かに失われた肉体と機械の体を繋いでいる時やしばらく動かしている時に大きな痛みはあった。だが、痛みは生きている証だ。今は痛みが無く、問題なくこの体を動かせる』
『そうなんだ……』
白蓮はグレイヴスから俺の元に戻り、肩に乗るとマイケルさんはグレイヴスの頭を撫でる。
「今はこの通りグレイヴスの全身を機械化にしてしまったが、何とか病気を治す事に成功したんだ。心臓や内蔵とかの重要機関は何とか無事だったのが唯一の救いだ。僕はこのサイボーグ技術を使って体の一部を失った、動かす事ができない人や聖獣のために使っていきたい。だけど、このサイボーグ技術を悪用する奴らが存在する」
サイボーグ技術を悪用する……その瞬間、俺の宿敵だった瑪瑙の姿が思い浮かんだ。
瑪瑙は両腕を俺が切り落とした後、義手を付けていた。
「まさか、聖霊狩り……!?」
「それも含まれているが、機械化するにあたり、聖獣を無理やり改造して言う事を聞かせ、生き物ではなく兵器にする外道と言うべき科学者も存在する」
「兵器だと……!?」
「まさかそんな奴らが……!?」
友であり、相棒であり、家族である聖獣を兵器にする奴らが実在すると知り、俺たちは強い怒りを覚えた。
聖霊狩りも勿論許せないが、そういう事をする外道の科学者達も許せない。
「僕は聖獣を兵器にする科学者達を根絶やしにするために七星剣に入ったんだ」
それがマイケルさんの七星剣に入った理由か……悪の道に走った同業者を根絶やしにするためか。
俺も神子としてもし仮に神に仕え、人の為に働くべき同業者が悪の道に走っていたら絶対に許さないだろう。
「さて……話はこれくらいにして、君たちは休みたまえ。僕はもしもの時のためにグレイヴスをメンテナンスしているよ」
「はい。じゃあ俺達は失礼します」
「失礼するでござる」
『ばいばい、じゃーね』
俺たちは二人に会釈し、グレイヴスの部屋を後にして地下室を出た。
七星剣に所属する人達はそれぞれ目的は異なるが自分の持つ正義と言う名の信念を元に戦っている。
かつて曾祖母様もそうしたように……。
俺も蓮宮十三代目当主として、極東の守護者として、人と聖獣を守る。
そして、己の大切なものを守る。
そう心に誓いながら夜までの長い時間を過ごしていった。
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やっと出せました、サイボーグ聖獣。
ここでは病で体が朽ちてそれを機械で補ったドラゴンです。
このアメリカ編でそこそこ活躍すると思うのでお楽しみに。




