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第38話 米国での決意

いよいよ本格的に舞台がアメリカとなります。

アメリカは個人的に行ってみたい国です。

あと本場のハンバーガー食べたいです。

side千歳


「ここどこ……?」

起きて目を覚ますとそこには見慣れない光景が広がっていた。

もふもふな温かいベッドに高級な家具の数々、どこかの高級ホテルの一室を彷彿とさせる部屋だった。

そしてベッドの右隣には銀羅、左隣には何故か私の護衛のくノ一のれいちゃん。

あれ?確か私は天音と映画の舞台挨拶に行って、マスターの控え室でマスターとブリュンヒルデとも再会してそれから……。

『これから二人には一緒にアメリカに来てもらう』

そうだ、マスターがそう言った直後にブリュンヒルデに確かルーン魔術っていう特殊な魔法で眠らされたんだ。

あれ?でも銀羅はともかくどうしてれいちゃんがいるんだろう?

それにこの部屋は……。

「はっ!?もしかしてここは!?銀羅!れいちゃん!ウェイクアップよ!」

『んっ……久々に母上の夢を見たぞ……あ、千歳。おはよう』

「ふにゃ……?ふわわっ!?お、おはようございます!千歳様!!」

銀羅はいい夢を見ていたのかまったりとした表情で瞼を尻尾で器用に擦りながら起き、れいちゃんは最初はとぼけていたがすぐに起き上がって私の前で跪いた。

『んー?ここどこだ?』

「どこでしょう……?それに、千歳様と私のこの格好は……」

私とれいちゃんは私服姿ではなく、ワンピース型の寝間着であるネグリジェを着ていた。

二つとも同じデザインで可愛いフリルやレースが付いていてとても可愛かった。

だけど今はそれどころじゃない。

窓の所に行き、カーテンを開くと見覚えのある光景が広がっていた。

「ここの光景……どう見てもあそこよね……」

窓を開いて外の空気を中に入れ、銀羅とれいちゃんが外を見ると目を大きく見開いた。

『な、なんだこの屋敷は!?広すぎる庭にプールまであるぞ!!?』

「日本にこんな場所があったでしょうか……?」

二人の目には広大で手入れが行き届いた綺麗な庭に大きなプール、そして窓から覗き込んだ豪勢な屋敷。

こんな場所はただでさえ他の国よりも国土が狭い日本ではほとんど作ることは出来ない。

そして、この場所は私の大切な思い出の場所でもある。

「ここ……アメリカなんだよね……」

私の第二の故郷であるアメリカ、しかもセレブ達が住まう高級住宅街の一角だ。

『ア、アメリカ!?アメリカってあの自由の国と言われているあれか!?』

「まさか、あの女達に誘拐されて……」

コンコン。

「目が覚めたか、愛しき乙女達よ」

部屋の扉をノックして中に入ってきたのは私の親愛なる師匠でありお姉ちゃん的な存在のフェイト・ハワードだった。

普段は凛々しく男性に近いファッションをしていたが、今のマスターはワンピース姿をしていてとても女性らしくて可愛かった。

「マスター……」

「貴様っ!!千歳様、お下がりください!!」

れいちゃんは私と銀羅の前に立ち、マスターに敵意を剥き出しにして両手で忍術を繰り出すための印の構えをしていた。

「待ちなさいって。別に危害を加えようとしたわけじゃ……」

「黙れ!!木遁・連樹縛!!」

れいちゃんは掌からロープ状の木を伸ばしてマスターの体に巻き付いて動きを封じた。

「うおっ!?昨日の火の次は木か!流石は本物のニンジャ!」

「千歳様!今のうちに脱出を!」

「いや、だからね……」

私を守ろうと必死すぎて話を聞いてくれないれいちゃんにどうしようと頭を悩ませると、マスターの背後に光が現れて巻きついた木のロープが一瞬で切り裂かれた。

『全く……フェイト、油断しすぎよ』

「助かったわ、ブリュンヒルデ」

マスターの契約聖獣のブリュンヒルデが溜息を吐きながら槍で木を切り裂いてマスターを解放した。

「くっ!貴様はあの時の槍使い!だが今度は負けない!忍法・衣変化の術!!」

れいちゃんが体を回転させると、身に付けていたネグリジェが一瞬で黒の忍装束に変化した。

「ワァオ!?ママのネグリジェがニンジャの服にチェンジした!?やはり私の目に狂いはなかった!あの子は本物のニンジャだ!!」

何やらマスターがれいちゃんの忍術に目を輝かせてテンションマックスにしていた。

『仕方ない……まずはあの子をもう一度気絶させて……』

ブリュンヒルデは室内では振り回しにくい槍を消して拳を構えて臨戦態勢を取った。

このままだと忍者VS戦乙女のある意味ドリームバトルが勃発してしまう。

そうならないためにまずはれいちゃんを止めることが先決だ。

しかし、れいちゃんの私の護衛としての忠誠心が高く、たまに周りの声が聞こえなくなるのが大きな欠点だ。

「……れいちゃん……」

「千歳様、私が時間を稼いでいる間に早く銀羅殿と一緒に……」







「……天影忍者、神影麗奈。今すぐに私の前で跪きなさい」







だから私は千歳ではなく……『天堂家の人間』として『麗奈』に命令を下す。

「っ!?は、はい!!」

麗奈はビクッと体を大きく震わせると顔を真っ青にしてすぐに私の前で跪いて深く頭を下げた。

未だにビクビクと体が少し震えていたが、ようやく話を聞いてくれる態度になり、私はすぐに新しい命令を下す。

「今すぐ彼女達への戦闘態勢を解きなさい。特に金髪の女性は私の師匠、フェイト・ハワードです」

「ち、千歳様のお師匠様……!?」

「そうよ。どうしてこんなことになったのかは分からないけど、まずはマスター達の話を聞いてからこれからのことを考える。だから私の指示があるまで動いてはなりません」

「はっ……仰せのままに……」

麗奈は更に頭を深く深く下げて私の命令を受け取るのだった。

『なるほど、これが今の日本の支柱たる天の一族。天堂家の姫の姿か……』

「チトセ……少し見ない間に逞しくなったな……」

『本当に強くなりましたね……姉として誇らしいです』

はっと気付くと三人が集まってひそひそ話をして私の姿に感動していた。

今更ながら千歳ではなく、天堂家の娘である『天堂千歳』としての姿を見せてしまい、少し恥ずかしくなった。

こんな姿を天音には見せられないなと思いながら話を切り替えるためにマスターに視線を向ける。

「コホン……さてマスター。話が色々脱線していたけど、そろそろ私達をここに連れてきた理由を聞かせてくれますか?」

「ああ、もちろんだ。でもまずはお前達の着替えからだな。ほら、着替えは沢山用意してあるから好きなのを着るんだ」

そう言ってマスターは部屋に置いてある衣装棚から大量の服を取り出してベッドに並べていく。

「気に入ったのを着るといい。全てお前達にプレゼントだ」

「わぁ!これって新作ですか?ありがとうマスター!れいちゃん、あなたも着替えようね」

「えっ?ち、千歳様!私は別にこのままで……うわぁあああっ!?」

戸惑っているれいちゃんを引っ張り、マスターと一緒に大量の服から私とれいちゃんに似合うものを選んでいった。



side天音


夜明けの部屋で俺とせっちゃんと白蓮は約二週間の時間をとにかく修行に費やして過ごし、現実世界である黄昏の部屋に戻ると璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんが迎えてくれた。

二人は既にアメリカに行く手はずを整えてくれて、俺とせっちゃんのパスポートとアメリカ行きの飛行機のチケットを渡してくれた。

そして、学園長に頼んで千歳達を連れ帰るまで休学扱いにしてもらい、恭弥達に見送られながら俺とせっちゃん、璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんの四人は星桜学園を後にして東都空港に向かった。

東都空港は俺とせっちゃんと白蓮にとっては大きな敗北を受けた場所でもある。

あの時はブリュンヒルデとワイバーンに阻まれて千歳達を連れ去られたが、今度は俺達の番だ。

俺達の手で千歳を取り戻し……アメリカに蔓延る闇を斬り、全ての決着をつける。

そう覚悟を決め、出発の時間まで空港の展望デッキで飛び交う飛行機を眺めながら白蓮とせっちゃんと話をする。

「白蓮……向こうでまた戦いが始まる。覚悟は良いな?」

『うん。僕達の大切な銀羅と千歳を必ず取り戻そう』

白蓮は今まで見せたことない勇ましい男の表情を浮かべていた。

日本の慣用句に『男子三日会わざれば刮目して見よ』と言うのがあるが、白蓮は夜明けの部屋で必死に修行して少し見ない間に逞しくなっているようだった。

「お館様。拙者は……」

「せっちゃんは麗奈を助けることのみに集中しろ」

「えっ……?」

「せっちゃんにとって麗奈は最も大切な人なんだろ?」

せっちゃんと麗奈は同じ忍の里で育った幼馴染で互いを強く想っている。

まるで俺と千歳のように……。

「だから、天影忍者、月影刹那に命ずる。俺の護衛の任を解き、麗奈を救う事に全力を尽くせ!」

「お館様……はっ!」

せっちゃんは俺の前で跪き、今だけは配下の家臣ではなく、共に戦う仲間として。

「天音、そろそろ時間だ」

「搭乗するから行きましょう」

そこに空港の喫茶店で時間を潰していた璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんが呼びに来てくれた。

「うん。白蓮、せっちゃん。行こう!」

『うんっ!』

「はっ!」

いよいよアメリカに渡る時が来た。

まさか初めての海外に行く理由が大切な人の救出と国を揺るがす事件の解決になるとは思いも寄らなかったが、俺の人生はかなりのトラブル続きだ、今更嘆く事はない。

そして、俺達は祖国の日本を飛び出し、世界一の超大国……アメリカ合衆国に旅立った。



side千歳


着替えが終わり、客室を出るとリビングでアメリカの定番朝食のトーストにスクランブルエッグにハッシュドポテトにベーコンなどを食べてお腹を満腹にした。

そして、マスターは愛用の高級車を運転して私達を連れてきたのはまだ病弱だった頃に何度もお世話になったアメリカ有数の大病院である『ニューヨーク・メディカル・センター』だった。

幼い頃から何度も来ていたので懐かしさを感じると同時に何故マスターがここに連れてきたのか少し混乱していると、この病院で特別な人しか入れない病室に向かうとそこには病院には見られない人達が沢山いた。

「千歳様。彼らは……」

「うん、アメリカ軍の軍人さんだよ……」

ある病室の前には迷彩服にマシンガンを持つアメリカの平和を守るアメリカ軍の軍人達だった。

「お嬢様!そちらの方々は……?」

「私の大切な弟子とその契約聖獣、そして護衛だ」

「お嬢様のお弟子様!?失礼しました、どうぞ」

軍人さん達が病室の前から退き、その病室に入院している人の名前の札を見た瞬間、私は目を疑った。

「そんな……」

「チトセ。ショックだろうけど、我慢してね」

マスターが病室の扉を開くとそこには様々な医療機材が並び、幾つものの管に体が繋がれて口には人工呼吸器を付けた一人の老人が横たわっていた。

私はその人の事をよく知っている。

何故なら私にとってもう一人のマスターで体が弱かった私に人並みの体を作れるように指導してくれて、様々な銃器や火器の使い方を教えてくれた人だからだ。

「おじ様……」

その人はマスターのお父様のジェームズ・ハワードさん、私がおじ様と慕っている大切な人だ。

そしてもう一人……。

「ああっ……可愛いチトセ。来てくれたのね」

おじ様の側にいて見守っていたのはマスターによく似たスーツ姿をした綺麗な金髪の女性、マスターのお母様のエミリー・ハワードさん。

私がおば様と慕っているもう一人の大切な人だ。

おば様は私を強く抱きしめて頭をナデナデしながら額にキスをする。

「会いたかったわ、私の可愛い天使。来てくれて本当にありがとう」

「おば様、私も会えて嬉しいです。それよりも、おじ様に何があったんですか?」

「……ジェームズは一週間前、突然その体に呪いを受けて倒れてしまったの」

「呪い!?」

マスターがおじ様の病衣を少しはだけさせると、そこには不気味な虫のような紋様が胸に刻まれていた。

それは天音の体に刻まれている霊煌紋とは全く別物のおじ様の命を蝕む呪いの刻印だった。

「どうしておじ様が……」

「分からないわ。でも、このアメリカで恐ろしい事が起きているの」

「恐ろしい事……?」

マスターはおじ様から離れて持ってきたバッグから資料を取り出して私に見せる。

その資料を捲りながら見るとそこにはアメリカに居た時にテレビや新聞でよく見かけたアメリカの政治家や大企業の社長……いわゆるアメリカ経済を支える重要人物達の体にもおじ様と同じ呪いが掛けられていた。

「アメリカにいる魔祓いに頼んでみたが、効果が無く、刻一刻と命が削られている……そして、呪いの元凶をアメリカ政府の総力を挙げて調べているんだ」

魔祓い。

別名エクソシストとも呼ばれる悪魔などに取り憑かれた人間を救う、ある意味天音の同業者達がやってもその呪いが解けないなんて……。

「ジェームズは自分の死期を悟り、死ぬことを恐れてはいなかった。だけど、最後に私達の娘である貴女に会いたいと願ったの……」

「そこで私が日本の舞台挨拶の時に連れてきたと言うわけだ……ごめんね、何の説明もしなくて」

「おば様……マスター……」

れいちゃんは巻き込まれただけかもしれないけど、大切なお父さんの最後の願いを叶える為にここまでの事を……。

おじ様は私にとっても大切なもう一人のお父さんみたいな存在だ。

マスターのした事は誘拐で、私個人としては許せるけど『天堂家の娘』を誘拐したとなれば下手をすれば国際問題に発展するかもしれない。

しかし、それすらも厭わないマスター達の想いに私も覚悟を決めた。

「分かった。私、おじ様の側にいる。最後を迎えるその時まで……」

「本当か?ありがとう、チトセ!」

「ありがとう。チトセ……」

マスターとおば様は涙目ながらも笑みを浮かべて私を抱き寄せて感謝の気持ちを伝える。

そんな中銀羅は重い口を開いて私に尋ねた。

『チトセ……良いのか?このままアメリカに留まって……』

「うん。だって、今の私があるのはマスターとおじ様とおば様のお陰だからね」

『しばらくの間、天音に会えなくなるのだぞ?』

「分かってる……天音に会えないのは寂しいけど、ちゃんと連絡するし、分かってくれるよ」

家族を大切にしている天音なら今の私の気持ちを分かってくれるはず。

連絡がかなり遅れるけど今夜中にでも日本にいる天音に連絡してどれぐらい時間が分からないけど、しばらくの間またアメリカで過ごす意思を伝える。

「千歳様。私に出来ることがあるなら何なりとお申し付け下さいませ」

「ありがとう、れいちゃん」

れいちゃんは私の護衛として共にアメリカに留まってくれる。

すると、ベッドからゴソゴソと動く音が聞こえて私達は一斉に目線をベッドに向けた。

そして、先程まで眠っていたおじ様は震える右手で口を覆っている人工呼吸器を外した。

「おお……来てくれたのか、チトセ……」

「おじ様……!!」

私はおじ様に駆け寄り、その震える右手を優しく握り締めて再会を喜んだ。





次回はアメリカ編の新キャラが多く登場すると思います。

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