第四十四話 階層型意思決定(Dao)と聖数『60』のガバナンス
電脳都市ウルクは、ゼロトラスト・アーキテクチャと守護獣ムシュフシュにより、外敵やマルウェアの脅威を退け、真に安全な「魔法の経済圏」としての地位を不動のものにしていた。
魔法使いマーリン
「いやはや、見事なセキュリティじゃ……だが太郎よ、安全になればなったで、今度は内側から問題が湧き上がってきおったぞ。」
ジッグラト(データセンター)の監視モニターには、侵入検知のログの代わりに、住民たちによる終わりのない「論争」が映し出されていた。
魔法使いマーリン
「『飛行魔法の高度制限を撤廃しろ』、『いや、プライバシー侵害じゃ』、『治癒魔法の価格カルテルを容認するか』……多様なユーザーが勝手に魔法を創り、取引し始めた結果、コミュニティのルール作り(ガバナンス)が全く追いついておらん。毎日が朝まで生激論じゃ。」
佐藤太郎
「情報の同期とインセンティブの実装、そしてセキュリティ。これらが整ったプラットフォーム(都市)が最後に行き着く課題は、いつだって『意思決定の最適化』です。」
佐藤太郎は reeds ペンを手に取り、コンソール画面に新しいプロジェクトのソースコードを書き込み始めた。
佐藤太郎
「世界がオープンソース化した(=魔法のソースコードが誰でも書けるようになった)今、誰もが『神』になれる可能性があります。さりとて、彼らはまだ自由になったことすら知らない……中央集権的な神がいなくなった世界で、どうやって35億人の合意を形成するのか ……答えは簡単です。システムが自動で合意を形成する(コンセンサス・アルゴリズム)んです。」
魔法使いマーリン
「しすてむがごういを……?(またわからん言葉が出てきたのぅ....)」
佐藤太郎
「ええ、俺はこれから、ウルクのガバナンス(意思決定)を、特定のリーダーを持たない『分散型自律組織(DAO)』へと移行します……誰かが提案をし、住民たちが Did(真名)を担保に投票し、その結果が自動で世界に実装されるシステムです。」
佐藤太郎が reeds ペンで虚空に幾何学的な模様を描くと、黄金の光の輪が広がり、ジッグラトの壁面に、巨大な光のガバナンス・ボード(GUI)が投影された。
佐藤太郎
「実装コンテンツ:『階層型意思決定(Did・DAO)』と『聖数60のガバナンスプロトコル』……住民全員が Did(真名)を担保に投票し、その結果が、ブロックチェーン(世界の地脈ネットワーク)上に登録されます。」
佐藤太郎の投影したGUIには、住民たちによる無数の「提案」が並び、それらに対し、住民たちが「賛成(承認)」、「反対(否認)」を投票する様子が視覚化されていた。
魔法使いマーリン
「な、ななななっ……!? 全住民が投票して、世界を創るじゃと……!? そんな真似をすれば、意見がまとまらず、世界がフリーズするぞ!」
佐藤太郎
「意見がまとまらないのではない。意見の『普及率アクセシビリティ』を高めるんです。誰でもウルク(サーバー)のリソースを使って魔法を作り、それをスキル・マーケットプレイス(スキル・レポジトリ)で『真名(Did)』を担保に販売コントラクト出来る……これにより、ウルクは新世界における唯一無二の『魔法の経済圏プラットフォーム』となります。」
佐藤太郎は満足げに、葦のペンを下ろした。
佐藤太郎
「さあ、マーリンさん、情報の同期とインセンティブの実装は終わった……あとは、ユーザー(住民)がウルク(サーバー)にログイン(集結)してくるのを待つだけです。」
佐藤太郎の言葉と同時に、夕暮れの平野の彼方から、無数の Did(真名)の光の線が、磁石に吸い寄せられるように、聖塔ジッグラトへと向かって集まり始めた。世界中から多様な「ユーザー」が、自分自身の魔法(神)を創るために、ウルクへ向かっている。
佐藤太郎
「第四フェーズ完了。ユーザー登録とキラーアプリの実装は整った……次は、多様なユーザーが集まる事で発生する『バグ(悪意あるコード)』をデバッグする番ですね!」
史上最も賢い元ニートの管理者は、新世界の「魔法の経済圏」を前に、かつてない高揚感とともに微笑んだ。
DAOによる分散型意思決定を実装した佐藤太郎は世界中から多様な「ユーザー」がウルクへ集まり、自分たちの手で新世界のルールを創り始めます。




