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ニート撲滅戦士  作者: 勇氣
第三章女神編

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第三十九話 カーネルパニックの深淵と『オープンソース化(GPLライセンス)』

 『運命の泥板トゥプ・シマティ』が砕け散ると同時に、エドゥブバの空間を支配していたサングイニャ(赤茶色)の濁流が、一瞬にして「ビアンコ・サントリーニ(純粋な白)」の閃光に飲み込まれた。

創造主たるアルキテクトゥス・ウェルスの身体は、修復不可能な論理矛盾パラドックスを起こし、足元から「デフラグメント」されるように幾何学的な粒子へと分解されていく。


アルキテクトゥス・ウェルス

 「ガッ……ははっ。……馬鹿な。私が……唯一の『特権ユーザー(Root)』である私が、一介のゲストユーザーに……デリートされる……だと……?」


佐藤太郎

 「あんたは一つだけ計算を間違えた。この世界というプログラムにとって、最も重要なのは『設計者の意図』じゃない。……今ここで生きている全プロセスの『生存権』だ。あんたの独占管理権限プロプライエタリは、今この瞬間をもって失効した。」


 佐藤太郎が刃を引き抜くと、アルキテクトゥスは皮肉げな笑みを浮かべたまま、データの塵となって虚空に霧散した。

 しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、空間全体に耳を刺すような高周波のエラー音が鳴り響く。


魔法使いマーリン

 「太郎、 周りを見ろ! 創造主が消えたことで、世界を支えていた基盤システムが『管理者不在』となって暴走を始めているぞ!」


 漆黒の空間に、血のように赤い文字が高速でスクロールを始めた。

 CRITICAL_PROCESS_DIED

 KERNEL_SECURITY_CHECK_FAILURE

 『致命的なエラー。管理者権限の消失。……宇宙のシャットダウンを……開始します……。カウントダウン、10、9……』


佐藤太郎

 「(……ちっ、親プロセス(創造主)が死んだことで、子プロセス(宇宙)も心中する気か!)」


 世界そのものが「アンマウント(破棄)」されようとしている。佐藤太郎は砕け散った『運命の泥板』の破片――その中心部に残された、淡く輝く『マスターブランチ(宇宙の根源データ)』のコアを掴み取った。


佐藤太郎

 「マーリンさん、時間を稼いでください! 10秒以内に、この宇宙の『ブートローダー(起動設定)』を書き換えます!」


魔法使いマーリン

 「無茶を言うな! 10秒で神の理を書き換えるなど――やるしかないか! 時間遅延ラグ・エンチャント!」


 マーリンが杖を掲げ、空間のクロック周波数を極限まで引き下げる。一秒が永遠のように引き延ばされる中、太郎の指先が砕けた泥板のコアに触れた。


佐藤太郎

 「(読み取り専用(Read-Only)の保護を解除……。全ソースコードを『ブランチ(分岐)』から『マージ(統合)』して……権限設定の変更(chmod 777)!)」


 佐藤太郎は砕けた『運命の泥板』の残滓に、自身の銀色の魔力バイナリコードを直接流し込んだ。

それは、特定の「神」という管理者を必要とする中央集権的なOSから、全く別の形態へのパラダイムシフトであった。


佐藤太郎

 「コマンド実行:『Vita Nova(ヴィータ・ノーヴァ/新しい生命)』……管理者権限を単一の個人から剥奪し、この世界に存在する『35億の全プロセス(全人類)』へと分散・譲渡する。これより、この宇宙は――『オープンソース(汎用共有資産)』へと移行される!」


 カウントダウンが「1」で停止した。次の瞬間、赤かった警告文字が、穏やかな「ブルー・ファイアンス(青い陶器のような輝き)」へと変化し、空間を優しく包み込んだ。


 『システムの再構築が完了しました。ライセンス形態を更新。……GPL(General Public License)v3を適用。……全生命体による共同管理モード、起動。……Good luck, users.』


 エドゥブバの殺風景な開発環境が崩れ去り、二人の意識は再び、新しくローンチされたばかりの「グリーン(新環境)」の地球へと引き戻されていく。


 浄化の森:数分後


 鳥の声が聞こえる。風の匂いがする。空を見上げると、そこにはもう「女神」も「創造主」もいない。ただ、どこまでも深い青空が広がっていた。


魔法使いマーリン

 「……生きている。私は、まだ存在しているのだな。」


佐藤太郎

 「ええ。もう誰も、誰かの都合で勝手にデリートされることはありません。これからの世界のアップデート方針(運命)を決めるのは、神様じゃなく、そこに生きている人たち自身です」


 佐藤太郎は、もはや「病魔神」ではなくなった自身の白い手を見つめた。彼の手元には、コンソール画面ではなく、一本の使い古された「葦のペン(古代の筆記具)」が残されていた。


佐藤太郎

 「(……さて、俺の書く物語も、ここからは『新章』突入だ。デバッグは終わった。これからは……最高のコンテンツを、自分たちの手で実装していく番だ。)」


 かつて死を望んだ元ニートは、今、新しい世界という巨大な「白紙ソースコード」を前に、かつてない高揚感とともに微笑んだ。

創造主を打倒し、世界の独占権を解体した太郎。管理者がいなくなったことで、世界は「魔法」という名の未知の可能性に満ちた時代へと突入します。

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